「HOUSE」

町山さんのトラウマ映画館が丁度読み終わったところで、銀座シネパトスの特集上映に気になる情報が。

【アイドル映画特集「HOUSE」上映:大林宣彦監督、大場久美子トークショーあり】

あーこれは良いタイミングだから観に行かねばならんのだろうなあ思いまして、重い腰上げて行ってきました。なにせこの「HOUSE」という映画は個人的トラウマ映画で7歳の時に観て以来、一度も観なおしてないんですよ。とにかく怖かった。あまりにもトラウマすぎて話のネタにも使った事が無いです。思いだすのも嫌になるくらいのシロモノ。今回はこの映画の感想を書くという苦行をやってみたいと思います。



【あらすじ】goo映画より引用

中学生のオシャレは、今日も仲間のファンタ、ガリクンフー、マック、スウィート、メロディーたちと間近になった夏休みのことをワイワイ話している現代っ子。オシャレが学校から帰ると、イタリアから父が帰国していた。父は彼女に、自分の再婚の相手だと言って涼子を紹介する。新しい母など考えてもいないオシャレにとっては、これはショックだった。自分の部屋にもどって、ふと思い出したオバチャマのところに手紙を出し、夏休みに仲間と行くことにする。いよいよ夏休み。オシャレは仲間とオバチャマの羽臼邸へ向かって出発。東郷先生もいっしょに行くはずだったが、あとから来ることになり、七人で出かけた。オバチャマは、七人を歓げいしてくれ、都会育ちの七人は田舎の雰囲気に大喜び。しかし、それもつかの間で、このオバチャマというのが実は戦争で死んだ恋人のことを思いつつ、数年前に死亡しており、今は、その生霊で、羽臼邸そのものがオバチャマの身体であったのだ。そして、奇怪なできごとが七人の少女たちを襲った。まず最初に冷やしておいた西瓜を取りに入ったマックが井戸の中につかっており、このほかにも、ピアノや、ふろ桶や、時計や、電燈などに次々に少女たちが襲われる事件がおき、そのたびに一人一人この家からきえていったのであった。オバチャマは、若い娘を食べた時だけ若がえり、自分が着るはずだった花嫁衣裳が着られるのであった。最後は、オシャレになりすまし、後から来た涼子までも恐ってしまうのであった。


ボクの両親ってのは非常に対極的で、父は「映画」や「テレビドラマ」といったものに一切興味のない人でした。テレビで映画を観て「これ生放送?」って平気で言っちゃうくらい「ドラマ」という概念に疎い人。一方、母は曲者で「子どもならこういうのが好きだろう!」といった決めつけでファンタジー系の映画をやたらボクに観せるような人でした。おかげで「バンデットQ」なんて映画も子どもの頃に観る事ができたので感謝はしているんですが、同じくらいトラウマ映画も生まれてしまった訳で...。この「HOUSE」も母に半ば強制的に見せられた作品なのでした。

尾崎紀世彦のケツにバケツがハマる。
イカを食べてるばあさんの口から目玉がギョロリ。
若い男が赤い紙によって戦争に行く。(セピア色の画面に赤紙だけくっきりと赤い色が付いている)
夕暮れ時に井戸で水汲んでたら中から首が。
ピアノが女の子を食い散らかす。
素っ裸の女の子が溶けていく。
和室の照明器具が女の子を飲み込む。
和室が血の海で溢れ、女の子が畳に乗って助けを求める。
死んだはずの女の子が森の中を散歩してるエンディング(カメラ目線)

思えばこの映画って人生で7歳の時の一回しか観た事無いのに上にあげたシーンはハッキリと覚えてるんですよ。つまりはこの部分がモロにトラウマ。今回観直してみてようやくストーリーが全部繋がりました。単に家が中学生を食べる話だけでもなかったのね。会場ではこの映画のファンであろう皆さんが爆笑してましたけど、ボクだけお化け屋敷に入った時のようなビビりリアクションをしてましたよ。やっぱり苦手でしたね...。


まず純粋に「怖い!」っていう部分。ボクの人生で「人体破壊」という描写を初めて観たのがこの「HOUSE」でした。手足が血まみれのバラバラになるっていう事も考えた事が無かったんで、ものすごくショッキングでしたよ。しかも学校にあるようなグランドピアノが思いっきり食べ散らかしてるんだもの、怖えよ。そこらへんに普通にあるモノが女の子たちをかなり乱暴に襲うっていう設定が恐ろしかった。「おばけなんてないさ」なんて歌ってたくらいのガキにハードルがいきなり高い。みんな無残に殺されていくしね。それまで考えた事も無い「死」という出来事をしっかりと植えつけられた感じがしました。


この映画の世界観の美しさ、可愛らしさってのは一貫してます。怖いはずの「死」を感じさせるシーンですらみとれるほど。絵と実写の境が曖昧に見えてくる。綺麗な世界の中で起こる陰惨な出来事。いや、だからこの世界観こそキモいんだって!しかもこういった世界の中で出てくるお姉さんたちのテンションがなぜかバラエティみたいな明るいノリだしね。明るいテンションでザクザク殺されていくというギャップが当時まったく理解できなくて恐怖を覚えました。色彩とかデザインがおかしい、いや、この映画を作った人って頭がおかしいのでは?と思ったさ、マジで。


で、今回こうやって振り返って考えてみると、この映画でなにより怖がってた部分ってひょっとしたら「性的な部分」だったのかも、と思ったんですよ。
「ちょっと上くらいのお姉さんたちが何者かによって無理やり裸にされてる」
という部分が一番トラウマになってる気がします。風呂でも無いのに女の子が脱いでいる&脱がされている。なんで?っていう。まあ、今観なおしてみてもあれって脱ぐ理由無いから今持って「なんで?」については答えが出てないんだけどね。


見た事のない世界をまざまざと見せられた、しかもこういう世界があるって事を教えてくれた映画としてボクのトラウマ映画第一級作品である「HOUSE」。高熱を出してうなされている時に必ず見る悪夢の原作として未だに心の傷が癒えてません。ボクの個人的感情を抜かせば間違いなくオススメ作品ですよ。出てくる女の子たちはみんな可愛いし、ギャグ満載で笑える映画です。怖いのとバカバカしいのと美しいのがどれも針を振り切っている為、明らかにバランスを欠いているんだけど、映画から溢れてくるエネルギーが凄い。トラウマが無くても一生忘れられなくなる傑作だと思います。唯一無二の世界観は一度体験しておくべき。もちろんオススメですよ!

映画を頻繁に観ている現在で初見だったらどうだっただろうなあ。「『HOUSE』を7歳の時に観てトラウマになった」という経験が、果たして良かったのか悪かったのかってのははっきりわかりません。ただボクは25年の封印をこないだ開けたので、むこう25年は観なくても大丈夫だ。





【おまけ】
「今夜は最高!」より、大林宣彦監督セルフパロディ