「ダイ・ハード/ラスト・デイ」

今年に入って観た洋画がブルース・ウィリスが出てる作品っていう非常に偏った年初となっていますが、今回の感想はダイ・ハードの最新作です。一作目から既に25年の月日が経ってるのね。

【あらすじ】※シネマトゥデイより引用

久しく会っていなかった息子ジャック(ジェイ・コートニー)がロシアでトラブルを起こした上に、ある裁判の証人となったと知らされた刑事ジョン・マクレーンブルース・ウィリス)。身柄を引き取りに現地を訪れた彼だが、そこでテロ事件に巻き込まれてしまう。相変わらずの運の悪さを呪いながらも、混乱状態に陥った状況下でジャックと再会するマクレーン。しかし、なぜか親子一緒に次期ロシア大統領候補の大物政治家、大富豪、軍人らが複雑に絡む陰謀の渦中へと引きずり込まれるハメになり……。

【予告編】


以下、感想です。









クソ面白かったです!


まず、大・大・大前提として、面白い訳が無いんですよ。いくら「ダイ・ハード」だからっつっても「5」ですよ「5」!「昔の傑作の続編を繰り返し作っときゃ、ある程度客が入るんじゃね?」レベルの志の低さですよ。宣伝にしたって、どんなに面白い映画だとしても公開する前の認知度を上げる初動はキツい訳で、それに比べりゃ「傑作の続編」となりゃ初動の手間もかからんのです。「毎度お馴染み、あの刑事が帰ってきました!」ってなもんで。あと「5」となれば作品に関して観客に気を使わなくても良いですしね。いちいち説明しなくても「この人はこういう人!」っていう事を作り手が「観客が当然の如くわかってる」前提で話を進めますから。0を1にするのは大変だけど1を2にするのは楽、と物事を進める上でこんなたとえ話を聞きますが、たぶんそういう事なんでしょう。


最初、随分とガチャガチャとした印象でしたが、マクレーンがいよいよ本腰を入れ出す辺りからもうバカ展開!モスクワ市街をムチャクチャなカーアクション(a.k.a.意地の張り合い)で縦横無尽に暴れまくります。去年観た「007 スカイフォール」のアヴァンタイトルもスゴかったですが、今作はある意味それを上回っていたような印象です。うちの甥っ子(5歳)がおもちゃの車と車をぶつけて遊んでるのをたまに観ますが、まさに「それ」。車ってあんな簡単に宙を舞うんだね!
一方、そんなカーアクションと引けを取らないガンアクション。映画館の音響が良かったのも相まって銃声が重いんですよ。胸元にズシンズシンと響く銃声はたまにありますが、今作は銃声の重さが観てる座席の足元にまで響いてきました。こういう体験をしちゃうとやっぱり映画って映画館で観た方が良いねえ...と思うばかりで。


作品自体は全体的にシリーズを楽しんでいる方々には伝わるであろう小ネタが満載で、ワタシ自身、終始ニヤニヤとしてしまいました。一番好きなシーンは、親子共々悪い奴に捉えられた際、マクレーンの息子が万が一の為にしておいた、とある準備。と「その息子がしていた準備」を見て思わず笑い出すジョン・マクレーン。そうだよね!そりゃ笑っちゃうって!
マクレーンの息子を演じていた俳優さんもブルース・ウィリスというアクの強いスターの横に並びながら、それに退けを取らない素晴らしい演技だったと思います。「1」の時はあんなにちっちゃかった子がねえ...とイチイチ感慨深いです。まあ、「1」の時の子役と今回の息子役は当然別人ですけどね。


ダイ・ハード」って、新作が公開される度に毎度観に行ってますが、今作にしてようやく「逆に面白いわ!」と思えるようになった気がするんですよ。その場にいるのに、もはや「妖精」の感覚すらある。今作の骨格と申しましょうか、ストーリーラインは息子がメインでとにかくシリアスに、真面目に進むんだけど、側にいる親父がとにかく邪魔!そのギャップがもうギャグ。今回のジョン・マクレーンってかつてのシリーズ作品と比べて、一番何事にも動じないんですよね。親父の思いは「息子と一緒にアメリカに帰る」って事しかない。いや、息子は今仕事中だから!
こんなジョン・マクレーンの姿を観ると、ひょっとしたら彼自身、「オレってひょっとしたらもう何やっても死なないんじゃないだろうか...?」という事に気付いちゃってるフシがあるんですよねえ。彼のいる世界が「映画の中」ということにまだ気付いていないにしても。
何が起こっても、多少ボヤくにせよ、淡々とこなす。
5作目にしてジョン・マクレーンに「この、オレばっかりヒドい目に遭う世界で生きてやる!」と、腹を括ってるような覚悟が見えました。そりゃあねえ、人間成長するもんね。あんなに毎回毎回とんでもない事に巻き込まれ、しかも全部乗り切ってんだもの、何事にも動じなくなりますわ。


ただ今作は「1」をこよなく愛する方々にとってはクソつまらない凡庸な作品だったと嘆く方も多いと思います。
とかくこのシリーズ、特に「1」は息もつかせぬアクションの連べ打ちと、伏線が張り巡らされた緻密な脚本が素晴らしかった。でも今作に於いて、その緻密な脚本ってのは無いですよ。ぶっちゃけ酷い。特に放射能問題。あまりにも幼稚すぎる。物事を理解もせずに描くと作り手のバカっぷりを丸出しにしてしまうのでホント止めておいた方が良いですね。後半なんてただドカンボコンと爆発してるだけですから。火薬の量に於いてのみカタルシスを生むみたいな作りですから、人間模様を描いてどうのこうのなんて作品を期待されてたら腹も立つでしょうなあ。


しかし、ワタシ自身そういうの、もう通り抜けちゃった感があるんですよ。ダイ・ハード」シリーズってのは「3」から「4.0」にかけて、ゆっくりと死んじゃった作品だと思ってますから。


思えば子供の頃、病気で学校を休んだ時に母が録画して観せてくれたテレビ朝日日曜洋画劇場の放送分が一番最初に観た「ダイ・ハード」でした。これが問答無用で面白い!野沢那智さんの名吹替も心地良く「あぁ、ジョン・マクレーンってべらんめえ口調で喋るから生粋の江戸っ子なんだな。」と思った次第。このインパクトがスゴくて、事ある毎に観直す映画となりました。
それが「2」までは良かったんですよ(今思えば「2」は監督のレニー・ハーリンらしい爆破&爆破の大味な映画でしたけど)。それが「3」で個人的に「ぎょっ!」とする展開に。更に「4.0」で、その「ぎょっ!」とした違和感が決定的に不快感&断絶に変わってしまいました。

「3」と「4.0」って奥さんのホリーが出でないんですよね...。

しかも「3」では別居中、「4.0」に至ってはもう離婚しました、って事になってやんの。
ガッカリだよ!「1」と「2」の、あの粋なエンディングを返してくれよ!!

ジョン・マクレーンがカミさんであるホリーと別れるっていう設定が、それがキャスティング上の問題で出なくなったとしても本当に残念でならんのです。特に「1」のラストがあまりにもハッピーエンドであっただけに。


ワタシにとって「ダイ・ハード」は、妻であるホリーがいないと成立しない作品だと思ってるんですよ。ホリーが出てない時点でもう何回やっても同じ。「3」と「4.0」で完全に「ダイ・ハード」熱が醒めちゃってたので、今作はもう惰性というか、なんも考えずに観る事が出来ました。だからこそ楽しめたのかもしれません。観る事が出来たっていうか「花火大会」に参加したっていうか。「2」とか「3」でコレやられたら腹も立つけどコレ「5」だし。「おっさんが家族を守る為に戦う。」という「ダイ・ハード」の根底に流れるテーマだけは辛うじて残っているので良し!とした感じです。ただバカな映画を観たい!って時だってあるでしょう。ちょうどそんな気分の時にピッタリな作品でした。酒でも呑みながらぼんやり観るにはマジでオススメな映画ですよ!


【おまけ】
手作りの「ダイ・ハード


淀川さんの「ダイ・ハード」解説