「Beyond the ONEDAY〜Story of 2PM&2AM〜」

ボクが映画のジャンルの中で「ドキュメンタリー」が好きな理由として、まずボク自身が「すけべ」であるという事(!)の他に「知らない世界を垣間観る事が出来る」という事もあるんですよ。中東の内戦や放射能問題、児童養護施設AKB48、病んじゃっている人や童貞を拗らせちゃってる人などなど。今回は韓国の男性アイドル「2PM」と「2AM」を取り扱ったドキュメンタリーの感想です。「知らない世界」という事に関しては前述のようなテーマを取り上げた作品と全く一緒。なにより今年は「DOCUMENTARY of AKB48」なんていう日本の女性のアイドルを扱ったドキュメンタリーがありましたからね。じゃあ韓国の男性のアイドルを取り扱ったドキュメンタリーはどうだろう?と観てきましたよ。


【あらすじ】※シネマトゥデイより引用

K-POPの中でもトップクラスの人気と実力を兼ね備えた、6人からなるパフォーマンス・グループ「2PM」と4人組のボーカル・ユニット「2AM」。 2011年、その二つのグループが手を組み、10人でのライブツアー「JYP NATION in Japan 2011」を日本で行った。ステージで見せるプロとしての顔、オフを無邪気に楽しむ素顔など、彼らの多彩な魅力を映し出す。

【予告編】


以下、感想です。
いかんせん「2PM」「2AM」を観るのは初めてであり、K-Popをちゃんと聴くのも初めてなのでこれから書く文はファンの方々やK-Popに詳しい方々に言わせると「何をいまさら!」感があるかも知れません。まあ、初体験レポみたいなもんなんで「わはは!無知な者が書いておるわい!」と軽く流して頂ければ幸いです。








結論から先に書いちゃうと結構楽しめてしまったんですよね。
なかなか面白かったです!これはハマるわ!


数多くの女性がファンになる理由もわかります。歌やダンスのクオリティが日本のアイドルのそれと全く別物なんですよ。徹底的に観客を楽しめる「エンターテイナー」としてプロ集団。日本のアイドルの構造と明らかに違うんですね。まず「歌が上手い」というのが韓国のアイドル文化のベーシックにあるようです。日本みたいに、下手ながらも舞台上で頑張ってる姿を見せて「アイドルとファンが一緒になって大きく育っていくのを歓びとする」みたいな、「拙さも含めて良い」という文化とは一線を画していました。メンバーの一人が足を負傷してしまうんですが、誰を責める訳でもなく、負傷したのはあくまで自分の責任として弱みを見せない。プロですよね、マジで。


冒頭は「2PM」と「2AM」が「oneday」として一つのユニットとなるライブの映像なんですが、これがまたダンスも良し、歌も良しで、飽きずに観れました。ジャンルで言ったらエレクトロサウンドなんですね。良いライブするんだなあ...と思っていた矢先の次のシーン、打ち上げ。2つのグループのプロデューサーJ.Y.Park氏の乾杯の挨拶がまさかのダメ出しっていう...。き、厳しい!相手の蹴りで腸が破けて負けた選手に対して「だからオマエは弱いんだ!」と叱咤するタイのキックボクサーのトレーナー(この描写が具体的なのは、そういうドキュメンタリーを過去に見たので)のようでした。


プロデューサーJ.Y.park氏やメンバーのインタビューで、この2つのグループが如何にして生まれたかというのがわかります。その話がなかなかエグいです。「熱血男児」というテレビ番組から生まれたそうで当時のその番組の映像も流れるんですが、教官がなぜか迷彩服でモロに軍隊仕込み。アイドルを生み出すというかソルジャーを生み出すような感じの番組なんですよ。すげえよ!まんま「フルメタルジャケット」の世界だよ!アイドル番組なのに!「1日10時間を6日くらいやらないとダメだ!」には度肝を抜かれました。「サニー 永遠の仲間たち」で、細部まで作られた80年代の世界観を観た時も思ったんですが、韓国の人が本気でなんか作ろうとする時のエネルギーはスゴいです。


メンバーの皆さんもさすが選ばれし者と申しましょうか、なんつうか完全無欠ですね。高身長。顔が良い。歯並びが良い。スタイルが良い。ボクの中の韓国男子はソン・ガンホであり、チェ・ミンシクであり、あとパク・チャヌク監督作品によく出てくる(よく殺される)人なんですよ。こんなにカッコ良い人もいるんですねえ。男性ですが「艶やか」という言葉が似合います。
さらに歌が上手い。ダンスが上手い。曲が作れる。ギター/ピアノが得意。ボクの中の韓国歌手は「釜山港へ帰れ」のチョー・ヨンピルであり「ポンチャック」のイ・パクサであり、「オジャパメン」なんですよ。まったく、麻雀だったら数えで役満ですね。
ここまで完璧で、なおかつ難しい日本語をある程度覚えてから来るっていうそのガッツに頭が下がります。しかもその拙い日本語が絶妙に可愛らしさに変換されてしまうんですよね。いやあ恐ろしい!つくづくこれはどっぷりとハマる方々が多そう。ファンもメンバーも「冥府魔道に入る」という点ではAKB48と同じですね。


この人たちに出来ない事なんて無いんじゃないだろうか?と思っていたところに、ちょうど「コンプレックスは何ですか?」っていうシーンが入るんですよ。この辺りの構成は上手いと思いました。あとメンバーの紹介方法も良く工夫されていましたよ。メンバーを一人ずつ紹介するAKB48の最初のドキュメンタリー)みたいな退屈な事はしてませんでしたねえ。アヴァンタイトルとかかなりフェティッシュでしたしね。ボクはファンでもないので今回はしょうがないんですが、冒頭の彼らの登場シーンはファンだったらテンションがガン上がりしてたと思いますよ。そもそも空撮が入るドキュメンタリーなんてね、ケレン味たっぷりですよ。ドキュメンタリーとしてはかなり異質ですが、ファンサービスとしては素晴らしいですよ。


あえて多少差し挟ませて頂くとすれば、前半のカメラワークとナレーションが良くなかったです。カメラがとにかくブレブレで前半のライブが特に酷いです。しゃべってるメンバーを慌てて寄りで追うから結構キツいんですよ。カット割りの細かさも相まってぶっちゃけ酔いました。インタビューとか他のシーンとかは良いのにライブのバックステージだけ極端に悪いのはよくわからんです。メンバーと同じように緊張してたんすかねえ...。随所にナレーションが入るのですが、はっきり言って要らない部分もありましたよ。バックステージでのメンバーのケガの部分とか。メンバーが心配してるってんだったら、説明よりもメンバーの心配そうな顔を観せてくれりゃあね。観てる内容を台詞で説明しちゃうのは野暮ですよ。仮にナレーションが全部無くても充分伝わってましたよ。そのあたりが残念なところ。ま、些細な事ですけどね。


で、ここからが「ドキュメンタリーすけべ」の感想で。


なるほどこれはスゴいし売れる理由もわかるわ。それで「実際のところどうなのよ?」っていう話ですよ。


ファンにはお馴染みの事でしょうし、映画の内容のネタバレにもなるので書きませんが「2PM」「2AM」、そして「oneday」の名前って非常に良く出来てるんですよね。そして名前から来るグループそれぞれのコンセプトも。メンバーの皆さんは、それぞれ並々ならぬ努力でファンの前に立っている。名前の由来から、歌、ダンス、ヴィジュアルに至る全てに於いて細部にまで徹底的に作り込まれた「完璧な世界」なんですよ。エンターテイナーのプロフェッショナル故、一縷の隙もありません。舞台裏とはいえ常に「カメラに撮られている」という事をはっきりと意識している。ドキュメンタリーすけべとして「で、実際のところどうなのよ?」とは思ったけど、時間が進むに連れて「この人達って本当に裏表が無い人たちなのかも...」と思えてきたのです。ストイックで純粋。観終わって最終的に思ったのは「これで良いんだよ!」という事です。


日本に住んでいるのでボク自身どうしても泥臭いというか浪花節丸出しのアイドルの価値観に毒されてますが、本来「夢」と「希望」を与える方々の「裏」を必要以上に見る事なんて無粋なんですよね。この映画は描いているアイドル同様にスクリーンの隅々まで徹底的にコントロールされた作品。しかしそれは「全てはファンの為にある」という意味で非常に誠実。だからメンバーが水族館やたこ焼き屋や帽子屋に行くシーンなんてドキュメンタリーの範疇を超えてあからさまに「演出」なんだけど、この映画に於いてこの手法は正解!と思いましたよ。
※追記 
ここでの「演出」という記述は、水族館やたこ焼き屋や帽子屋で彼らが「演技している」って意味では無いですよ!他に誰もいないという「作られたシチュエーション」での自然な彼らっていう意味の「演出」です。念のため。


クライマックス。ファンの皆さんが2PMの為に歌を歌うシーンなど感動的ですし、内容に関しては一切不快感がありません。久々に観た正統派のアイドル映画として大満足。「2PM」「2AM」の完璧なステージってアイドルというよりも、世界標準のミュージシャンのそれだと思います。「アイドル」という言葉に収まってない感じ。アジアを横断する良質のエンターテイメントを知る事が出来て幸いでした。映画を観た帰りにTSUTAYAに寄った!という事を、この映画に対するシンプルなリアクションとして記してオシマイとします。




【おまけ】
この曲良かったっすよ。




※本文から漏れた感想

  • 例えばperfumeとかAKB48とかももクロとか。女性アイドルならファンの男女比もある程度出るんですけど、さすが男性アイドル。観客がほぼ女性!
  • ライブのバックステージのスマートさよ!やっぱりAKB48のドキュメンタリーのライブのバックステージのシーン、酷いと思うよ。
  • 「この映画で唯一ドキュメンタリックだったカットは一番最初。メンバーの一人が爆睡しているところだけ。」一緒に観た彼女(同じくK-POP初めて)とそういう事で落ち着きました。
  • 名前までは流石に覚えきれませんでしたが2AMのリーダーははっきり認識しました。あいつ良いよ!本能のまま動いてる!
  • Pのインタビューが最高!クライマックスの感動的なシーンでオシマイかと思ったら、また出てきてその絶妙な画に爆笑!