「テルマエ・ロマエ」

7月に入り超大作が続々と公開されてますが、今回は2012年の上半期で一番ヒットした作品「テルマエ・ロマエ」の感想です。


【あらすじ】※シネマトゥデイより引用

古代ローマ、アイデアが行き詰まり失業した浴場設計技師のルシウス(阿部寛)は、友人に誘われた公衆浴場でタイムスリップしてしまう。たどり着いた場所は、何と日本の銭湯。そこには「平たい顔族=日本人」がいて、彼は漫画家志望の真実(上戸彩)と出会う。ルシウスは日本の風呂の文化に感銘を受け、そこで浮かんだアイデア古代ローマに持ち帰り一躍有名になっていくが……。


【予告編】



以下、サクッと感想です。




みんな大嫌いでお馴染み「テレビ局が作る映画」で、相変わらず浮かれたCMを垂れ流してた作品なんで、実際のところどうなんだろう?と思ってたんですけどね。これが思いのほか面白かったんですよ。話はわかりやすく、ギャグはスマートに。基本的にはじじいの博覧会みたいな画なんですが、そこはそれ、さすが東宝作品と申しましょうか、清潔感のある風呂に入った感じです。汚い風呂とか生理的に入りたくないですもんね。そもそも日本人が古代ローマ人の役を演じるってのが落としどころが難しい設定なのにも関わらず、演じている俳優陣の魅力で充分成立していました。やっぱり阿部寛ですよ!阿部ちゃんならやってくれる!阿部ちゃんの裸演技を楽しむのにも充分な作品です。


また、オリジナルには無いキャラクター山越真実を演じていた上戸彩が素晴らしいんですよ。ボク自身の無知ゆえの問題なんですが、彼女の出ている作品って観た覚えが無いんですよ。恐らく「初めまして」くらいの感じだったんですが、この映画の温度に丁度良いキャラクターを演じていて新鮮でした。。あと何より絶妙にエロい。直接的な表現なんて一つもないんですが、ちょっとしたカットに色気があって非常に印象深かったですわい。
もちろん不満な部分もありますよ。竹内力のムダ遣いとか。こんなにぶっ飛んだ話で上手い事やればより面白いキャラクターとして充分機能する部分がありそうなもんなのに全く無い。竹内力を使っておきながら「近所の(おもろそうな)おっさん」の域を超えてないってのが非常に残念です。


まあ、喜劇は弛緩の連続なので、ある程度雑になりやすいとは思います。しかしながら全体を通してバカバカしい話でありつつ、役者陣も気合いが入ってたり、セットが豪華だったりして手を抜いている感じがしない辺り、好感が持てました。主人公のローマ人、というか阿部ちゃんが己の虚栄心の為ではなく、あくまでローマ帝国という公の為に頑張るという話が良かったのかもしれません。個人の力が人の為に役立つ。ど真ん中の話でありますが、悔しいかなやはり感動してしまいますわ。客を魅了し、和ませ、日常の苦痛から解放するという機能が風呂と喜劇に共通している。舞台俳優もVシネ俳優もアイドル俳優も関係なく風呂に入る。企画段階から既にもう成功する要素が揃ってたかもしれませんね。


なによりお涙頂戴の感動もの映画が量産された昨今、「莫大な予算で喜劇を作る」という冒険心が素晴らしいですよ。家族で観に行って帰りに美味しいご飯が頂けるような、観客の最大公約数が楽しめる軽妙洒脱な喜劇。これを「ヌルい!」と思う方もいらっしゃるかもしれませんが、ここは「良い湯加減!」と表現したいところ。それにメジャーな会社が作った喜劇に今年一番客が入ったなんて喜ばしいニュースじゃないですか。日本映画界はまた次の時代に入ったのかも。「テルマエ・ロマエ」はそんな新しい未来を予感させる重要な作品でした。





【おまけ】
ボクがガキの頃にはやたら風呂関係のCMがあって、しかもどれも印象深いのです。歌とか画のインパクトとか。


なんか今だったらいろいろとアウトな気がする...。