「YOYOCHU SEXと代々木忠の世界」

AKB48ドキュメンタリー映画と時を同じくしてAV監督「代々木忠」さんのドキュメンタリーも公開されてます。こっちも観てきたので感想書きます。本来ならAKB48の映画と同じ日に観たかったんだけど、スケジュールの都合で合わず。


【あらすじ】※シネマトゥデイより引用

アダルトビデオの世界でその名を知らない者はいないカリスマ監督、“ヨヨチュウ”こと代々木忠。3歳で母親を亡くし、親せきの家を転々とさせられた彼は札付きの不良だった生活を改め、23歳のときに結婚。しかし、派手なけんかが原因で前科がついたことから離婚を決意し、極道の世界に足を踏み入れる。

予告編はコチラ

以下、感想です。






ただ「AVの監督を追っかけたドキュメンタリーでしょ?」と思うなかれ!観れば非常に得る物の多い素晴らしい作品でしたよ!
まずこの作品の中心人物である代々木忠監督の圧倒的な魅力たるや!とにかくカッコ良いんですよ。雰囲気にシビれまくり!いかにも数々の修羅場を乗り越えてきたであろうご尊顔に併せて良い声。全てにおいて信頼できる雰囲気をお持ちの方です。そしてこの代々木監督の半生を追う事が、そのままアダルトビデオの歴史というか日本の性風俗メディアの現代史となっています。ナレーションが田口トモロヲさんなもんだから、さながら本物の「プロジェクトX」のよう。しかし内容はより特濃。


ストリップから始まって、ピンク映画からアダルトビデオ、そしてDVDと、ハードは色々と形を変えてきているけど、ソフトである「エロ」って根本的には今も昔も変わらずにみんなが興味あるものなんですよ。みんな表だって言わないだけで。時代を追うごとにハードが変わっていったっていうのは、技術面で変わっていったっていう事もあるけど他にも色々と複雑な理由があって、この映画はその「理由」の部分にもちゃんと焦点が当たっているので物凄く勉強になります。


会社の経営が上手くいかなくなった為、やむを得ず「エロ」に方向転換した映画会社「日活」なんてのは有名な話。他にも、新製品にアダルトビデオつけて販売したら爆発的に売れたっていう企業の話が出てきて驚かされたり。VHSビデオデッキの黎明期ってそうやって普及したんだってよ。すげえなパナソニックの販売戦略!でも、今もパナソニックVIERAに「アバター」つけて売ってるのを見るとなんか妙に「なるほどブレが無い!」と納得してしまったり。


また、代々木監督の後を追うように裏本界から「怪物」村西とおるが「ダイヤモンド映像」を作り、その数年後にテレビ業界から「異端」高橋がなりが「ソフト・オン・デマンド」を立ち上げたりと、異業種のクリエイター達がアダルトビデオ業界へ参入してくるといった、群雄割拠するエロ業界の歴史も同時に描かれていて興味深いです。裏本界から参戦した村西とおる監督は「映像に対して素人」だった故に画期的な手法を編み出してしまったり、テレビ業界から来た高橋がなり監督は、テレビ出身ならではの「企画力」で他の作品とは一線を画すようなクオリティの作品を作ったりと、映画界からアダルトビデオを作り始めた代々木監督とはまた違った面からアダルトビデオ業界を作り上げてきたっていうのがわかって面白い。で、代々木監督は常にその場にいたっていう事もスゴいよ。


どんな職業でも必要とされている事であれば、必ず誰かの役に立っているんだから職業として成り立つ。
職業に貴賎なし。
でもタテマエでそう綺麗事を言ったところで「エロ」っていうのはどうしても「卑しいもの」という目線で見られてきました。代々木監督はそういった部分でも逃げずに戦ってきました。ピンク映画の「わいせつ裁判」話が面白かった。代々木監督が制作を担当したピンク映画がわいせつだと訴えられてしまった裁判。まずその映画がわいせつじゃない、っていうか「わいせつの基準」を国で決めようとする事自体がなんとも無茶な裁判な訳なんだけど、一応知識人たちや同業者たちはこれを「文化闘争」として盛り上げようとする。でも代々木監督自身が元々極道だったもんでどうにも意見がまとまらない。仲間内でも「代々木忠がヤクザのせいで...」みたいな言われよう。文化闘争内で貴賎の差。酷い話だよ。こんな当時を振り返って代々木監督がインタビューで言ったひとこと。これがむちゃくちゃカッコ良いんだよ!もったいなさ過ぎてここじゃ書けませんよ。是非劇場に行って確認してもらいたい!


この映画でなにより一番感動したところは「人間の面白さ」という事なんですよ。
ボクは「社会」っていうのはタテマエとか方便とかがあるからこそ、ちゃんと機能していると思ってるんだけど、じゃあこの「社会」との関係性を絶った時、人間っていう生き物はどうなるのか?っていう「好奇心」が代々木監督のモチベーションであり、また、監督の作るAVが長く支持されている理由なんだと思いました。エネルギッシュなのは「偽りに満ちている世界に対する怒り」からくるものなのかも。


ピンク映画からアダルトビデオに活動の場所に移した時に作られた「ザ・オナニー」という大ヒット作品は女優さんでは無く一般人の女性を起用しました。本物を使うというこだわり。ユーザーにとっては「すぐ隣にいるような女性がこんなにエロい事をやってる!」という、それまでの作品には無かったリアリティが良かったとの事。ただ、この手法って撮る側と撮られる側が絶対的な信頼関係が無いと全てが嘘っぽくなってしまいます。代々木監督はこの「信頼関係を築く」という事に驚異的な才能を持っている方でした。みんな大きな声では言わないけど、人と関わり合いを持つっていう事は実は結構煩わしい事。冷たい熱帯魚」みたいな事があるやも知れぬし。この「人とかかわり合いを持つ」という「煩わしさ」を、いとも簡単に飛び越えてくるから代々木監督は魅力的なんだろうな、と。

「ただ本心が知りたいだけ。」と「相手に心を明け渡す勇気」。

あまりにも人との本心のぶつけ合いが濃密過ぎて、代々木監督自身「うつ病」を患ってしまった時期があるんだけど、これみて「本当にスゲエ!」と思ったのと同時に、実は心の奥底で「怖い!」とも思ってしまったんですよ。
つまりは如何にボク自身が普段ウソばっかりついているかって話ですよ。いままでに誰かと出会って100%心を開いた事が果たしてあっただろうかと。
代々木監督のAVに出てくる女性たちは撮った時代に限らず全員が心底気持ちよさそうに見える。タテマエとか方便を完全に取り除かれた世界に行っちゃってるから。代々木監督が提唱したチャネリングセックスっていうものに関してボクは前から懐疑的だったけど、自分の心を100%人に預けてしまうという考え方ならありえるかも。情けない話だけど多分ボクにはその世界に行く勇気が無いよ。自分の心の弱さを痛感してしまったよ。ただ、それ以上にこの映画で描かれている通り、というか代々木監督の全フィルモグラフィーを通して見えてくるテーマの「人間って面白い」っていう事がわかって本当に為になりました。


「SEX」に「人間の原点を探す旅の道行」を発見した探究者「代々木忠」。
この映画はマジでオススメです!代々木忠を通して「人間の心の奥深さ」を覗いてみない?




【おまけ】
すげえ真面目に書きましたが、代々木監督率いる「アテナ映像」さんの作品群はマジでエロいのよ。
一応リンク貼っときますけど、タイトルに全くブレが無くて寧ろ清々しいよ。
ザ・面接 VOL.119 めっちゃ入ってる かんに〜ん! 今日は関西特別やとかね。(18歳以下クリック禁止!)
面接シリーズはボクが高校生の頃からあったよ!高校生なのにAVとかどうなのよとか野暮な話は無しよ。



※本文から漏れた感想

  • 代々木忠」って本名じゃないのね。
  • 音楽がちゃんとアテナ映像のAVっぽくて素晴らしい!と思ったらやっぱり音楽担当されている方がAVと一緒だった。独特な感じは是非劇場で!
  • 「アテナ映像」社内に並ぶかつての作品がVHSで並んでるのを見て思わずグッと来たよ!
  • アテナ映像オールスターズ(監督、男優さんたち等)が出てた。昔の平本一穂さん細かった!
  • 本音を言えば「V&Rプランニング」もちょろっと取り扱って欲しかった。
  • 本文では全然取り上げられなかったけど代々木監督のご家族も出てきます。円満な家庭なのもびっくり。いやもちろんムチャクチャ苦労されてるみたいだけどさ。受け止める方として尊敬に値します。
  • SEXをポジティブに考える事によって、心が救われる人ってたくさんいるんだね。「いく時は相手の目を見ろ!」とか「情が入ってないといかない。」などなど珠玉の名言ばかり。こういう事を教えてくれる人っていないもんね。みんなタテマエばかりだから。