「ヘルタースケルター」

先週この映画が公開された夜からtwitter上でも賛否両論の感想が流れてきまして。感覚的には否が多かったようなので実際どんなもんなんだろうと気になり観に行きましたよ。

【あらすじ】※シネマトゥデイより引用

トップモデルとして芸能界の頂点に君臨し、人々の羨望(せんぼう)と嫉妬(しっと)を一身に集めるりりこ(沢尻エリカ)。だが、その人並み外れた美ぼうとスタイルは全身整形によってもたらされたものだった。そんな秘密を抱えながら弱肉強食を地でいくショウビズの世界をパワフルに渡り歩く彼女だったが、芸能界だけでなく、世間をひっくり返すような事件を引き起こし……。

【予告編】


以下、感想です。
また壮大にネタバレします。あと、この先あんまり良い事書いてません。
この映画がお好きな方には申し訳ないです。








残念ながらあんまり楽しめなかったっすね...。

なんか変な緊張感がありましたね。台詞がなんであんなにガチガチだったんでしょう?傑作であるオリジナルの実写映画化という重圧があったのかどうかわかりませんが、観ていて終始ハラハラしてしまいました。主演の沢尻エリカさん、熱演してるとは思いますが全体を通して硬かったっす。確かに大胆なオールヌードを披露して頂けるんですがね、冒頭だけなんですよ。物語上脱いでないといけないシーンは他にもいっぱいあるんですけどね。いつも通りエロ表現にお茶を濁した日本映画と何ら変わりありません。センセーショナルな宣伝しておいて中身がしょぼいあたり絶妙に「エクスプロイテーション映画」なんですが、見世物にしたってもうちょい親切じゃねえの?と思ったり。


と、このようにいつものペースで作品の不出来の部分を指摘しだしたらキリが無く、今作のように冗長になってしまうので後でまとめて書けるだけ書きます。特に気になった点を2点だけ。


ひとつめ。構図が悪い。転じて「ホント映画を舐めてんだろあんた。」
今作は「大スターが堕ちていく」という話でありましたが「堕ちていく」という表現がクドいんですよね。後半のある事件からクライマックスの記者会見までに「堕ちていく」って表現を2、3回やる。あと「堕ちていく」という表現は他のシーンにもあるけど、どれもワンパターンなんですよ。頭かきむしって「ぎゃー!」なんつってね。そりゃ上映時間も長くなりますよ。りりこが画的になかなか堕ちてくれなかったから(堕ちていくように見えなかったから)こうなっちゃったんだと思いますけどね。


ここで話題は一気に逸れますが、映画「アーティスト」の話をちょろっと書きます。具体的な感想書いてませんがあの作品は面白くて好きなんですよ。きめ細やかな気配りが利いていたと思います。「アーティスト」も今作同様「大スターが時代の波に呑まれて堕ちぶれていく」という話ですが、「堕ちていく」という表現を言葉で説明せず画の中にちゃんと表していました。主人公と、主人公に憧れて映画界に入った女性の「ステータス」が変わり始める映画会社の階段のシーン。主人公は階段の下から、女性は階段の上から他愛もない会話をします。以降、エンディングまで主人公に「階段や段差を降りる画」はいろいろあれど「階段を上る」という画は無いんですよ。彼はどんどん階段を降りていくんですよ。彼の人生が堕ちていくように。こういう表現が出来るから映画って面白いと思ってまして。


話を戻します。
この作品って彼女たちを「構図で表現する」みたいな事に対しては無頓着なんですよ。これってこの話に関して言えば重要な事だと思うんですけどね。ただ撮りゃ良いってもんじゃないでしょう。いっその事、りりこがスターとして君臨している時は「りりこは全てを見下ろした目線の構図」に、ライバルこずえが出てきてからはりりこは「全てを見上げるような目線の構図」に徹底すれば観客にも本能的に伝わる部分も多いのに。例えば、りり子のライバルこずえが登場してビルの屋上で泣くシーンは階段上から下にいるスタッフに対して泣き叫ぶ。ただ泣いてるだけで今後の彼女の立場を予見するような表現は無い。水族館のシーンなんかりりこ、エスカレーター上っちゃってるし。この件はライバルのこずえの描き方にも言える事で、花やしきでのこずえは羽田を見下してないとダメでしょう。逆にラストはりりこはこずえを見下ろしてないとダメでしょう。
立ち位置のちょっとした工夫だけでも観客に多くを伝える事が出来るから映画って面白いのに、ホント「ただ映像化した」だけ。映画撮ってるのに映画的手法にはこだわりが無いので、それこそ「写真集で良くね?」という台詞を吐かせてしまうのです。さすが一流カメラマンだけあって「1枚画の説得力」はありますが、映画には「画」の他に「時間」とか「台詞」とか「話の展開」とかありますからね。写真には無いこういう部分を表現する画の作り方は全くダメだと思いました。
その証拠にこの映画を観終わった後に監督の「ヘルタースケルター写真集」を拝見しましたけどストレスを感じませんでしたもの。写真=「画」とボク=「観客」の間に何もないから。ただ「映画」には「画」と「観客」の間に前述の「時間」とか「台詞」とか「話の展開」みたいな色々なモノが介入してくる。そこら辺が最後まで昇華されなかった事が残念でなりません。これが2作目という事でしょうがないとは思うけど、才能ある映画監督なら一作目からもう本能的に出来てる事。


もう一点。美意識の問題。
どういう計算があってやってるのかワカリマセンが、市井を生きる人達、一般人達の描き方がずさん過ぎませんかね。「りりこが巷で大人気!」を表現する画が「街の女子高生たちがキャーキャー言う」だけなんですよ。しかも若干古い。90年代の女子高生。今日び夕方の渋谷でも観ないレベルのファッションセンス。いくら「ヘルタースケルター」が90年代を描いていたとはいえ、ねえ...。
しかしながらコレばっかりはどうしようもなかったんだと思うんですよ。この辺りを突き詰めて考えていくと、この映画全てが破綻しちゃっただろうなあと思います。


ヘルタースケルター」ほど自分の内面を曝け出さないと撮れない映画も無いもんで。
でも監督のご職業の立場上、自分の内面を曝け出すという事はリスキー過ぎますよね。


原作「ヘルタースケルター」は、虚構で彩られた禍々しい世界に堕ちてしまう女の子を描いた作品で、この世界を作る人達やそれを楽しむ一般人達もまた一瞬を楽しむ刹那的な人間達であるという事までちゃんと描ききっていました。

蜷川実花監督ご自身もこの世界を作る仕事をしてらっしゃるじゃないですか。

ファッション界を代表する一流カメラマンが、同じ世界で堕ちていく女の子を描くって随分タチの悪いジョークですな。蜷川監督を支持しているような一般人達をああいう風に描いた(または「ああいう風にしか描けなかった」)ってのはやはり結構ギリギリな選択だったと思いますよ。「ヘルタースケルター」は、作り込めば作り込むほど監督の生きている世界を否定しかねないという、監督をピンポイントで苦しめるアンビバレンツに満ちた作品なのです。

果たして監督はちゃんとご自身の内面を曝け出すのを無意識に避けてしまったように感じました。あくまで見た目の「美」に対してのこだわり。この作品が「この虚構で彩られた禍々しい世界まさにそのもの」となってしまったのがなんとも皮肉ですね。



と、いろいろ書きましたが別に取り立てて腹も立てるような映画でも無かったですよ。演技の上手い方々が良いポジションでキャスティングされており、それぞれ魅力的ではありました。桃井かおりは原作以上に狂ってましたし。大森南朋は良くない意味で狂ってましたけどね。監督の好きな「ヘルタースケルター」はこれ!って映画でしかないから、感想としても「ふ〜ん。」っていう。
一点だけ良かったと思うのは「この作品を撮りたい!」という監督の了見。当然「不完全だ」って事は承知の上でしょうし、色々出来るようになった上で「満を持して!」と思ってる人には撮れない作品だと思います。そもそも「りりこは本名・年齢・経歴など全てが不明」とか、ネットが行き届いている2012年に於いて設定に無理が多い作品ですし。なにより「今、この作品を撮りたい!」という了見がない人に新しい事なんて出来ないですよ。映画の中身はアレですが監督のこの了見だけは好きですよ。だからこそ色々と言われると思いますが、全てを受け止めるその覚悟はあるとボクは思っています。「誠実さ」と「甘え」、2つを同時に感じ取れる興味深い作品でありました。





本文に書ききれなかった感想

  • りりこの持つ「狂気」みたいなものも足りなかったような。りりこに必要なのは「寄り目」じゃなくて「鼻水」だよね。
  • エロい映像に慣れ過ぎちゃってるせいか、随分変なセックスしてたね。
  • 赤目四十八瀧心中未遂」を観ちゃってるので寺島しのぶの方がエロかったです。
  • 上手い人ばっかり出てるのにヘタクソに見えるってすげえと思います。
  • 蜷川実花が本気出して描く「美を超えたグロさ」を観たかったのにそこまでやってくれなかったので残念。
  • 大森南朋マジでヤバかったね!今作一番の犠牲者と言っても過言ではない。全く違う次元の芝居を強制されてた感。
  • 面白いメディアミックスしてるなあ、と。パルコのCMはホントはああいう事だったのね。それは上手い。
  • 蓋開けてみたら意外とダサいぞ...!って意味でも監督はかなり危険な仕事したと思いますよ。90年代女子高生とかmacがカッコ良いと思ってる感じとか実際ダサかったし。
  • 名優、マメ山田さんがりり子の幻覚のシーンで登場する、けどラストのバーでも出てきて...ってマメが実在しちゃってるじゃねえか!
  • 監督のお友達はいっぱい紹介された気になりました。
  • 実在のファッション誌を使ってるくらいなら、りり子のスキャンダルがバレた時も東スポとかゲンダイとか使うのが筋。
  • こんなド素人がカメラのポジション云々なんて偉そうに書いたけど、これは、まあ素人が映画撮るのと同じ事と言う事で。

「先生を流産させる会」

今年の春先頃でしたかねえ。この映画に対して何の思い入れも無い方々に見つかって、どーせ観る気もないような方々にいたずらにバッシングされるという憂き目にあった(とはいえ、結果的にその事が動員に繋がったようなので大成功!な)「先生を流産させる会」。いよいよ公開が終わるとの事で滑り込みで観てきました。今回はこの感想です。


【あらすじ】※シネマトゥデイより引用

郊外の中学校で教師を務めるサワコ(宮田亜紀)が妊娠し、彼女が担任を受け持つクラスの生徒たちは活気づく。そんな中、ミヅキ(小林香織)はサワコがセックスをしていることに異常な嫌悪を示す。やがて彼女は、自分が率いるグループで「先生を流産させる会」を結成、サワコの給食に理科室から盗んだ薬品を混入して流産を促そうとする。味の異変を察知して給食を吐き出したサワコは、ミヅキの仕業だと知って彼女と仲間を激しく戒める。だが、それを受けてミヅキは反省するどころか、より嫌がらせをエスカレートさせていき……。


【予告編】


以下、感想です。
この作品もまたネタバレしてます。
これから楽しもうって方は恐れ入りますがまた後ほどご覧くださいまし。






なんて言うかコメントに困る映画でしたわい。


オープニング、スゴくカッコ良いです。音楽とぴったり合っていて、まさにこれから不穏な事が起こる気配をビンビンに感じ取れます。オープニングがカッコ良かったらだいたいの作品は面白い(ハズ)ですよ。登場人物の顔もイイ顔が揃ってました。こういう優秀な人材どこから見つけてきたんだろう?サワコ先生のちょっと恐そうな感じとか、流産させる会の「そのまんま女子中学生」感、良い味出してました。また、ロケ地とか映画的な意味で「絶景」なんですよね。田舎特有の「なんとなく絶望」感がこの作品にもありました。流産させる会のアジトとなるラブホテルの廃墟とかいちいち素晴らしいんですよ。1枚の画に力があったように思えます。あと、全体を通して画がカチッとしてましたねえ。色味とか照明とか画角とか、若い監督とは思えないくらい丁寧で圧巻でした。


ただどうしても「期待し過ぎたかな?」という言葉が自然と出てしまう自分もいる訳で。


ぶっちゃけ「実際に起こった事件」以外の創作部分が予想以上に浅くてズッコケてしまいました。
「子どもが悪巧みして先生に劇薬を飲ます」ところが一番邪悪で、それ以降失速してしまったように感じたんですよ。


この作品に対する云われなきバッシングのネタの一つに「実際は男子が起こしたこの事件を女子が起こした事にする」という改変問題がありましたが、この話って性別云々を超えて随分と「子ども」を安く見積もり過ぎじゃないですかねえ。全体的にどこかしら子どもをバカにしているフシがある。子どもって我々大人が考えている以上に邪悪な事考える生き物だと思うんですよ。いくら子どもでも本気で流産させようとしてたら周到に準備して実行する気がするんですが、監督自身「なんだかんだ言って子どもは結局のところ無垢である。」とでも思ってらっしゃるんでしょうか、割と堂々とクラスメートみんなが観てる前で実行するんですよね。あれじゃタダのバカですよね。中学生時分なんて男子よりも女子の方が明らかにませてて頭も良いはずなんですが、あの程度だと男子がやってんのと何の変わりも無いんじゃないかと思ってしまいました。


流産させる会のリーダー格の女子、前半「性」を嫌悪していてなかなか良い台詞も飛び出すんですが、後半からクライマックスにかけて空っぽになってしまっているのも気になりました。「性」とか割とどうでも良くなってる感じ。ただ先生を流産させる為だけのキャラクターとなってしまっていてなんかガッカリです。ラストカットの表情とか観る限り何にも考えてないもんね。結果、先生が流産するという酷い事件が起こっていながら、中学生たちに何の変化も起こってないんですよ。あの子またやるよ絶対。あのラストカットから100歩譲って「色々と考えているのは先生一人だけで子どもたちには何にも届いていない...」っていうオチと好意的に捉えましたけど、そういう事言いたい訳でもないみたいだし。うーむ...。


先生も先生で、中盤で犯人グループに目星をつけて「映画的に」尤もらしい台詞を言うんですけどね、「自分の子を殺そうとするやつは殺す!」なんつってね。
じゃ、殺せよ。
先生も変にマトモな教育者なんですよ。結構取り返しのつかない酷い事をされてる筈なのに前半の啖呵は何だったんだか。で、最終的に至極真っ当な台詞をはっきりと主犯格のリーダーに言って終わるんですよね。誰もが思ってる当たり前の事を台詞ではっきりと言っちゃうのマジでダサイんで勘弁して欲しいですわ。


真の教育映画だという意見もありますが、なるほど確かに教育映画でありますよ。
挑戦的な事やっているようで中身は学校の道徳でも見せられるような、非常にわかりやすくて説教臭い大人目線の映画でした。
大人目線の映画の割にモンペのお母さんのキャラとか、薬品の取り扱いの描き方(文系の人が理系のネタ取り扱うとコントみたいになりますね。)とか、他にもいろいろ余計な事思い出してきちゃって、ま、なんつーかなんだか幼稚な映画だったなあ...と、映画の感想の中でもとりわけ酷いコメントがぼんやりと浮かんでしまう始末。


とはいえ、この映画を作った内藤瑛亮監督とこのチーム、美しい映像を作り出すセンスが圧倒的に素晴らしいです。20代でここまでしなやかで力強い映像が作れるとは。恐らく今後熱狂的なファンも増えていくんじゃないでしょうか。(だからこそこういう感想書くのが怖いんですが。)「先生を流産させる会」は内藤監督の名前を世に知らしめる非常に有効な作品になったと思います。ボクはこの映画にハマらなかったけど、次回作がものスゴく楽しみな監督の一人としてしっかりと覚えました。





【おまけ】
というか、個人的エピソード。
小六の時、隣のクラスの先生は妊娠していて、学年一悪かったいじめっ子グループの一人がその先生の膨らんだお腹を調子乗って殴ったんですよ。そしたらその話聴いた学年全体の子たちがそいつらに対して「あまりに酷い!」つって一気に反旗を翻してねえ。いじめっ子グループはみるみるうちに失脚しちゃって。社会に於ける地位なんて割と簡単に崩れるもんだなと子どもながらに学んだもんです。ちなみに先生は無事でしたよ。




※本文から漏れた感想

  • 男の先生の軽薄な感じ、良かったです。間違いなくロリコンな感じ。
  • 冒頭のウサギ、なんでCGなんだろう?...謎。
  • 主犯格の子、女子なのに髪の毛ぼさぼさとか、あーいうのが真っ先にいじめられる気がする。そういうところも「子どもの世界」を嘗めてる感じがするんだよなあ。
  • ホントに先生を流産させようとしてた実在の生徒にもダサく見えるんじゃないかなあ...と思った次第。

「苦役列車」

「ヒミズ」の時同様、この作品もラストに触れざるを得ないので若干ネタバレしてます。観てから読む事をお薦めします。



この夏の映画興行戦争、第一弾として「海猿」「ヘルタースケルター」「苦役列車」と公開されましたが、この中で「苦役列車」を初日に新宿バルト9で観てきましたよ。流石初日、満員。

【あらすじ】※シネマトゥデイより引用

1980年代後半。19歳の北町貫多(森山未來)は日雇い労働で得た金を酒に使い果たし、家賃も払えない生活を送っていた。他人を避けながら孤独に暮らす貫多だったが、職場で専門学校生の日下部正二(高良健吾)と親しくなる。そんなある日、古本屋で働く桜井康子(前田敦子)に一目ぼれした貫多は、日下部に取り持ってもらい彼女と友達になるのだが……。

【予告編】

以下、感想。








クソ面白かったです!


普段映画に対して点数って付けませんが、90〜5,000点くらいつけてもいい感じ。クセの強い作品なので恐らく一般的な評価が低いかもしれません。しかしながら、この映画を観た人にもし「つまらない」とか「汚い」とか「あのクソ野郎!」なんて感想を言わせちゃってたら、さらに8,000点プラスにしてもいい。それくらい存分に楽しんでしまいました。


冒頭の雰囲気からしてもう良いのですよ。80年代初期のセントラル・アーツ作品を思わせるようなフォント。文字と画で一気にバブル前夜に連れて行かれます。バルト9から一気に新宿東映へタイムスリップ。「サニー 永遠の仲間たち」も80年代の再現力がすげえと思ったんですが、この作品もほぼ完璧に好景気で浮かれ始める直前の日本の風景を再現してましたね。飲んでるジュースがSASUKENCAAなんですよ(しかもちゃんとプルトップで開けるタイプの缶)。また、80年代の雰囲気は登場人物のツラにも良く出ていて、例えばストリップ嬢であったり、サブカルニューアカ(!)気取った女子大生であったり、メイクに現代の雰囲気を一切出していません。久々に観ましたよ、あの当時のげじ眉。これはここ最近の映画が如何にこういう細部に手を抜いていたかが逆説的にわかってしまう部分ですけどね。


俳優陣はまさに適材適所。主役を演じる森山未來は、恐らく考えうる全ての汚らしい演技をやりきってましたね。NGとか無いんですかね、この方は。「汚く笑う」とか「卑屈かつ見下して人を見る」みたいな演技が絶妙なんですよ。あーこいつは近寄らない方が良いな!というオーラが良く出ていました。対して、親友となる日下部を演じた高良健吾も良い対比になっていました。あいつもしゃあないな〜!女に寄って趣味が変わってしまう「若さ」とかよくわかりますよ。
なにより白眉なのは前田敦子でしょう!去年「もしドラ」を観ちゃって心の底から「頑張って欲しいなあ...」と思ったもんですが、やはり監督が変わると存在感もはっきり変わるもんなんですね。彼女に対してボクが前々から持っていた「違和感」がこの作品に於いては無い。本が好きな大学一年生の、都会暮らし一年目の女子のあの無防備さとか見事ですよ。あとしっかり濡れ場もありましたよ。間接的な表現ですが明らかに濡れ場。トップアイドルだからお茶を濁すかと思ったんですけどね。予想以上に体当たりの演技をしていて素晴らしかったです。


俳優でいえば、男性陣の圧倒的な存在感が忘れられません。共通していえる事は「イイ顔」揃い。まさかマキタスポーツの演技でホロリとさせられるとは思いませんでした。あの説得力って恐らくマキタさん自身の歩んできた道と若干ダブるような感じもあるからなのかもしれません。フィクションとノンフィクションが一瞬交差する瞬間に感動。また、いまおかしんじ監督作品の名バイプレイヤー佐藤宏が話に割り込むおっさん、カンパニー松尾監督のAVでおなじみの柳光石 a.k.a.花岡じったが実に凶暴なキャラで作品に不穏な空気を流しているあたり、個人的に非常に嬉しく思いました。柳光石演じる寺田が持っている威圧的な体格が良いんですよ。腕っぷしだけでここまできた感じとか。あと、この映画であれば、林由美香さんがどこかに出ていてもハマっただろうなあ...とも思いました。


「既に完成されたたった一人の世界」で生きている主人公北町貫多が、他人という全く違った世界にバチバチとぶつかりながら飛び込んで行く姿、また、他の世界にぶつかった結果生み出す自分の将来将来に向かって一歩踏み出す姿は、ボクのような同じクズには非常に身につまされました。


で、恐らくこのあたりが西村賢太さんの原作の世界観と大きく違う部分だと思うんですよ。原作の方は物語の出だしからラストまで現状は結局何も変わらない。なにしろ「苦役列車」に乗っちゃってる訳ですから。しかしながら映画でそれやっちゃうと成立しないんですよね。映画の場合はオープニングとラストでははっきりと状況が変わっていないといけない。死ぬでも生きるでも殺すでも助けるでも何でも良いんですが、物語を牽引する者は何か一つでもアクションを起こさないといけない。このあたりが「純文学」と「映画」の差異だと思うんですよね。「苦役列車」を原作通り映像化したら恐ろしくつまらないモノになってたと思いますよ。「で?」っていう。逆に映画の脚本を小説化しても面白くないはず。「ベタだな!」で終わり。
この作品は原作の良いところを臨界まで残しつつ、驚くほど大胆にアレンジして一つに纏められた奇跡的な映画だと思います。


映画の出来もさることながら、ボク自身の思い入れがちょっと強くなった作品かもしれません。「モテキ」とか「監督失格」とか、大手の映画会社とインディーの映画作家との「融合」は、もう既に始まっているなとは思ったけど完全にメジャーとインディーの底は抜けましたね。
三角マークという日本の映画のトップクラスのブランドの下、新進気鋭の若手No.1俳優から日本を代表するトップアイドル、いぶし銀のお笑い芸人、ピンク映画の俳優からAV男優まで、あらゆる才能が一つの映画に結集しているという、この事実に嬉しさを隠せません。この映画もまた邦画の「ちょっと良い未来」を予見させる映画。まるで夢を見ているようでした。




【おまけ】

既存の音楽の使い方も素晴らしかったです。たしか森進一にとっての苦境からの再出発「ONCE AGAIN」的な曲だったはず。




※本文から漏れた感想

  • AVメーカーのHMJMイメージリングス故・しまだゆきやす氏の名前が入っているのもちょっと感動的でありました。
  • 奇しくも「サニー 永遠の仲間たち」と全く同時期の話なんだよね。
  • 貫多のあの「人を道具として見てる感じ」ヤバいね。ああいう人いるね。
  • 80年代のボウリング場とかよく見つけるなあ。
  • 原作では暈されてた個人名が映画だと出てくる。その点、映画の方がちゃんと踏み込んでた。
  • 80年代を完璧に再現してたけど、一点だけ。トラックのナンバープレートは明らかに現代のモノだったね。アレが残念だけど、これは重箱の隅をつつく行為。
  • モテキ」を綺麗に裏返したような感じがしたんですよ。主人公が性欲に忠実とか、部屋の感じとか、泥だらけになりながらキス→頭突きとかモロに。わざとかと思いました。
  • シネパトスとかユーロスペースとかK'sシネマとか。味のある映画館の平日のレイトショーで、おっさん数人の中でひっそりと観て「良い作品だなあ...」とひとしきり感動して帰りに一杯やる「極私的映画」なのに、これを土曜日の真っ昼間に新宿バルト9で、満員の中で観たってのが気持ち良かったですよ。観終わって客席眺めちゃいましたもの。やっぱ「きょとん?」ってしてたカップルとかいてね。率直な気持ちを申せば端的に一言。「ざまあみろ!」って思いました。

「テルマエ・ロマエ」

7月に入り超大作が続々と公開されてますが、今回は2012年の上半期で一番ヒットした作品「テルマエ・ロマエ」の感想です。


【あらすじ】※シネマトゥデイより引用

古代ローマ、アイデアが行き詰まり失業した浴場設計技師のルシウス(阿部寛)は、友人に誘われた公衆浴場でタイムスリップしてしまう。たどり着いた場所は、何と日本の銭湯。そこには「平たい顔族=日本人」がいて、彼は漫画家志望の真実(上戸彩)と出会う。ルシウスは日本の風呂の文化に感銘を受け、そこで浮かんだアイデア古代ローマに持ち帰り一躍有名になっていくが……。


【予告編】



以下、サクッと感想です。




みんな大嫌いでお馴染み「テレビ局が作る映画」で、相変わらず浮かれたCMを垂れ流してた作品なんで、実際のところどうなんだろう?と思ってたんですけどね。これが思いのほか面白かったんですよ。話はわかりやすく、ギャグはスマートに。基本的にはじじいの博覧会みたいな画なんですが、そこはそれ、さすが東宝作品と申しましょうか、清潔感のある風呂に入った感じです。汚い風呂とか生理的に入りたくないですもんね。そもそも日本人が古代ローマ人の役を演じるってのが落としどころが難しい設定なのにも関わらず、演じている俳優陣の魅力で充分成立していました。やっぱり阿部寛ですよ!阿部ちゃんならやってくれる!阿部ちゃんの裸演技を楽しむのにも充分な作品です。


また、オリジナルには無いキャラクター山越真実を演じていた上戸彩が素晴らしいんですよ。ボク自身の無知ゆえの問題なんですが、彼女の出ている作品って観た覚えが無いんですよ。恐らく「初めまして」くらいの感じだったんですが、この映画の温度に丁度良いキャラクターを演じていて新鮮でした。。あと何より絶妙にエロい。直接的な表現なんて一つもないんですが、ちょっとしたカットに色気があって非常に印象深かったですわい。
もちろん不満な部分もありますよ。竹内力のムダ遣いとか。こんなにぶっ飛んだ話で上手い事やればより面白いキャラクターとして充分機能する部分がありそうなもんなのに全く無い。竹内力を使っておきながら「近所の(おもろそうな)おっさん」の域を超えてないってのが非常に残念です。


まあ、喜劇は弛緩の連続なので、ある程度雑になりやすいとは思います。しかしながら全体を通してバカバカしい話でありつつ、役者陣も気合いが入ってたり、セットが豪華だったりして手を抜いている感じがしない辺り、好感が持てました。主人公のローマ人、というか阿部ちゃんが己の虚栄心の為ではなく、あくまでローマ帝国という公の為に頑張るという話が良かったのかもしれません。個人の力が人の為に役立つ。ど真ん中の話でありますが、悔しいかなやはり感動してしまいますわ。客を魅了し、和ませ、日常の苦痛から解放するという機能が風呂と喜劇に共通している。舞台俳優もVシネ俳優もアイドル俳優も関係なく風呂に入る。企画段階から既にもう成功する要素が揃ってたかもしれませんね。


なによりお涙頂戴の感動もの映画が量産された昨今、「莫大な予算で喜劇を作る」という冒険心が素晴らしいですよ。家族で観に行って帰りに美味しいご飯が頂けるような、観客の最大公約数が楽しめる軽妙洒脱な喜劇。これを「ヌルい!」と思う方もいらっしゃるかもしれませんが、ここは「良い湯加減!」と表現したいところ。それにメジャーな会社が作った喜劇に今年一番客が入ったなんて喜ばしいニュースじゃないですか。日本映画界はまた次の時代に入ったのかも。「テルマエ・ロマエ」はそんな新しい未来を予感させる重要な作品でした。





【おまけ】
ボクがガキの頃にはやたら風呂関係のCMがあって、しかもどれも印象深いのです。歌とか画のインパクトとか。


なんか今だったらいろいろとアウトな気がする...。

「Beyond the ONEDAY〜Story of 2PM&2AM〜」

ボクが映画のジャンルの中で「ドキュメンタリー」が好きな理由として、まずボク自身が「すけべ」であるという事(!)の他に「知らない世界を垣間観る事が出来る」という事もあるんですよ。中東の内戦や放射能問題、児童養護施設AKB48、病んじゃっている人や童貞を拗らせちゃってる人などなど。今回は韓国の男性アイドル「2PM」と「2AM」を取り扱ったドキュメンタリーの感想です。「知らない世界」という事に関しては前述のようなテーマを取り上げた作品と全く一緒。なにより今年は「DOCUMENTARY of AKB48」なんていう日本の女性のアイドルを扱ったドキュメンタリーがありましたからね。じゃあ韓国の男性のアイドルを取り扱ったドキュメンタリーはどうだろう?と観てきましたよ。


【あらすじ】※シネマトゥデイより引用

K-POPの中でもトップクラスの人気と実力を兼ね備えた、6人からなるパフォーマンス・グループ「2PM」と4人組のボーカル・ユニット「2AM」。 2011年、その二つのグループが手を組み、10人でのライブツアー「JYP NATION in Japan 2011」を日本で行った。ステージで見せるプロとしての顔、オフを無邪気に楽しむ素顔など、彼らの多彩な魅力を映し出す。

【予告編】


以下、感想です。
いかんせん「2PM」「2AM」を観るのは初めてであり、K-Popをちゃんと聴くのも初めてなのでこれから書く文はファンの方々やK-Popに詳しい方々に言わせると「何をいまさら!」感があるかも知れません。まあ、初体験レポみたいなもんなんで「わはは!無知な者が書いておるわい!」と軽く流して頂ければ幸いです。








結論から先に書いちゃうと結構楽しめてしまったんですよね。
なかなか面白かったです!これはハマるわ!


数多くの女性がファンになる理由もわかります。歌やダンスのクオリティが日本のアイドルのそれと全く別物なんですよ。徹底的に観客を楽しめる「エンターテイナー」としてプロ集団。日本のアイドルの構造と明らかに違うんですね。まず「歌が上手い」というのが韓国のアイドル文化のベーシックにあるようです。日本みたいに、下手ながらも舞台上で頑張ってる姿を見せて「アイドルとファンが一緒になって大きく育っていくのを歓びとする」みたいな、「拙さも含めて良い」という文化とは一線を画していました。メンバーの一人が足を負傷してしまうんですが、誰を責める訳でもなく、負傷したのはあくまで自分の責任として弱みを見せない。プロですよね、マジで。


冒頭は「2PM」と「2AM」が「oneday」として一つのユニットとなるライブの映像なんですが、これがまたダンスも良し、歌も良しで、飽きずに観れました。ジャンルで言ったらエレクトロサウンドなんですね。良いライブするんだなあ...と思っていた矢先の次のシーン、打ち上げ。2つのグループのプロデューサーJ.Y.Park氏の乾杯の挨拶がまさかのダメ出しっていう...。き、厳しい!相手の蹴りで腸が破けて負けた選手に対して「だからオマエは弱いんだ!」と叱咤するタイのキックボクサーのトレーナー(この描写が具体的なのは、そういうドキュメンタリーを過去に見たので)のようでした。


プロデューサーJ.Y.park氏やメンバーのインタビューで、この2つのグループが如何にして生まれたかというのがわかります。その話がなかなかエグいです。「熱血男児」というテレビ番組から生まれたそうで当時のその番組の映像も流れるんですが、教官がなぜか迷彩服でモロに軍隊仕込み。アイドルを生み出すというかソルジャーを生み出すような感じの番組なんですよ。すげえよ!まんま「フルメタルジャケット」の世界だよ!アイドル番組なのに!「1日10時間を6日くらいやらないとダメだ!」には度肝を抜かれました。「サニー 永遠の仲間たち」で、細部まで作られた80年代の世界観を観た時も思ったんですが、韓国の人が本気でなんか作ろうとする時のエネルギーはスゴいです。


メンバーの皆さんもさすが選ばれし者と申しましょうか、なんつうか完全無欠ですね。高身長。顔が良い。歯並びが良い。スタイルが良い。ボクの中の韓国男子はソン・ガンホであり、チェ・ミンシクであり、あとパク・チャヌク監督作品によく出てくる(よく殺される)人なんですよ。こんなにカッコ良い人もいるんですねえ。男性ですが「艶やか」という言葉が似合います。
さらに歌が上手い。ダンスが上手い。曲が作れる。ギター/ピアノが得意。ボクの中の韓国歌手は「釜山港へ帰れ」のチョー・ヨンピルであり「ポンチャック」のイ・パクサであり、「オジャパメン」なんですよ。まったく、麻雀だったら数えで役満ですね。
ここまで完璧で、なおかつ難しい日本語をある程度覚えてから来るっていうそのガッツに頭が下がります。しかもその拙い日本語が絶妙に可愛らしさに変換されてしまうんですよね。いやあ恐ろしい!つくづくこれはどっぷりとハマる方々が多そう。ファンもメンバーも「冥府魔道に入る」という点ではAKB48と同じですね。


この人たちに出来ない事なんて無いんじゃないだろうか?と思っていたところに、ちょうど「コンプレックスは何ですか?」っていうシーンが入るんですよ。この辺りの構成は上手いと思いました。あとメンバーの紹介方法も良く工夫されていましたよ。メンバーを一人ずつ紹介するAKB48の最初のドキュメンタリー)みたいな退屈な事はしてませんでしたねえ。アヴァンタイトルとかかなりフェティッシュでしたしね。ボクはファンでもないので今回はしょうがないんですが、冒頭の彼らの登場シーンはファンだったらテンションがガン上がりしてたと思いますよ。そもそも空撮が入るドキュメンタリーなんてね、ケレン味たっぷりですよ。ドキュメンタリーとしてはかなり異質ですが、ファンサービスとしては素晴らしいですよ。


あえて多少差し挟ませて頂くとすれば、前半のカメラワークとナレーションが良くなかったです。カメラがとにかくブレブレで前半のライブが特に酷いです。しゃべってるメンバーを慌てて寄りで追うから結構キツいんですよ。カット割りの細かさも相まってぶっちゃけ酔いました。インタビューとか他のシーンとかは良いのにライブのバックステージだけ極端に悪いのはよくわからんです。メンバーと同じように緊張してたんすかねえ...。随所にナレーションが入るのですが、はっきり言って要らない部分もありましたよ。バックステージでのメンバーのケガの部分とか。メンバーが心配してるってんだったら、説明よりもメンバーの心配そうな顔を観せてくれりゃあね。観てる内容を台詞で説明しちゃうのは野暮ですよ。仮にナレーションが全部無くても充分伝わってましたよ。そのあたりが残念なところ。ま、些細な事ですけどね。


で、ここからが「ドキュメンタリーすけべ」の感想で。


なるほどこれはスゴいし売れる理由もわかるわ。それで「実際のところどうなのよ?」っていう話ですよ。


ファンにはお馴染みの事でしょうし、映画の内容のネタバレにもなるので書きませんが「2PM」「2AM」、そして「oneday」の名前って非常に良く出来てるんですよね。そして名前から来るグループそれぞれのコンセプトも。メンバーの皆さんは、それぞれ並々ならぬ努力でファンの前に立っている。名前の由来から、歌、ダンス、ヴィジュアルに至る全てに於いて細部にまで徹底的に作り込まれた「完璧な世界」なんですよ。エンターテイナーのプロフェッショナル故、一縷の隙もありません。舞台裏とはいえ常に「カメラに撮られている」という事をはっきりと意識している。ドキュメンタリーすけべとして「で、実際のところどうなのよ?」とは思ったけど、時間が進むに連れて「この人達って本当に裏表が無い人たちなのかも...」と思えてきたのです。ストイックで純粋。観終わって最終的に思ったのは「これで良いんだよ!」という事です。


日本に住んでいるのでボク自身どうしても泥臭いというか浪花節丸出しのアイドルの価値観に毒されてますが、本来「夢」と「希望」を与える方々の「裏」を必要以上に見る事なんて無粋なんですよね。この映画は描いているアイドル同様にスクリーンの隅々まで徹底的にコントロールされた作品。しかしそれは「全てはファンの為にある」という意味で非常に誠実。だからメンバーが水族館やたこ焼き屋や帽子屋に行くシーンなんてドキュメンタリーの範疇を超えてあからさまに「演出」なんだけど、この映画に於いてこの手法は正解!と思いましたよ。
※追記 
ここでの「演出」という記述は、水族館やたこ焼き屋や帽子屋で彼らが「演技している」って意味では無いですよ!他に誰もいないという「作られたシチュエーション」での自然な彼らっていう意味の「演出」です。念のため。


クライマックス。ファンの皆さんが2PMの為に歌を歌うシーンなど感動的ですし、内容に関しては一切不快感がありません。久々に観た正統派のアイドル映画として大満足。「2PM」「2AM」の完璧なステージってアイドルというよりも、世界標準のミュージシャンのそれだと思います。「アイドル」という言葉に収まってない感じ。アジアを横断する良質のエンターテイメントを知る事が出来て幸いでした。映画を観た帰りにTSUTAYAに寄った!という事を、この映画に対するシンプルなリアクションとして記してオシマイとします。




【おまけ】
この曲良かったっすよ。




※本文から漏れた感想

  • 例えばperfumeとかAKB48とかももクロとか。女性アイドルならファンの男女比もある程度出るんですけど、さすが男性アイドル。観客がほぼ女性!
  • ライブのバックステージのスマートさよ!やっぱりAKB48のドキュメンタリーのライブのバックステージのシーン、酷いと思うよ。
  • 「この映画で唯一ドキュメンタリックだったカットは一番最初。メンバーの一人が爆睡しているところだけ。」一緒に観た彼女(同じくK-POP初めて)とそういう事で落ち着きました。
  • 名前までは流石に覚えきれませんでしたが2AMのリーダーははっきり認識しました。あいつ良いよ!本能のまま動いてる!
  • Pのインタビューが最高!クライマックスの感動的なシーンでオシマイかと思ったら、また出てきてその絶妙な画に爆笑!

「巨神兵東京に現わる」

先日、この夏のビックイベント「特撮博物館」の内覧会に行く事が出来ました。
これがまあ、ここ数年の展覧会の中でもトップクラスのクオリティ&クオンティティだったんですよ。
ゴジラガメラウルトラマンエヴァンゲリオンで表現してナウシカにまとめてもらう感じ。
「日本のスタンダード」となっているビッグネームが揃っているだけでもうクラクラ!さらに他にもかつて日本を守って頂いたスーパーヒーローの方々も夥しい量展示してあって、とにかく観に行って欲しいのですが、今回はそこで上映されている短編映画「巨神兵東京に現わる」の感想を書きます。なんとスタジオジブリ最新作です。






ムチャクチャ面白い!




「企画:庵野秀明 巨神兵宮崎駿 監督:樋口真嗣」というテロップだけで充分すぎるほどの「ドリームチーム」感と申しましょうか、「アヴェンジャーズ」感と申しましょうか、冒頭のスタジオジブリロゴと併せてワクワクしてしまうんですが、そこからの9分間はただただ「地獄絵図」。天空に現れる「巨神兵≒恐怖の塊」は「これではもう全てを諦めざるを得ないな...」というほどの圧倒的な説得力を持っておりました。今まで「腐ってやがる。早過ぎたんだ...。」状態でしか観た事の無い巨神兵の「完成体」は実に神々しいのです。


そして東京中の建物一切合切をなぎ倒す「破壊シーン」の数々は、さながら悪夢。ボクはこの「破壊シーン」を観て、あの「震災」の時に見た恐ろしい画の数々の時と同じように恐怖の声を漏らしてしまいました。震災以降に観たディザスター映画で、あの時の悲惨な映像に肉薄している映画はこれだけだと断言しても構いません。今回はCG無しというのも驚きです。ボク自身CGを否定する訳ではありませんが、この作品の特撮はCG隆盛の現在の映画に対する充分なアンチテーゼになっていると思います。もちろんその通りに作ってるんですけどね。


東京が文字通り「火の海」になるという恐ろしい風景を余すところ無く見せつけられます。しかしこれが不思議なもんで観終わった後、感動して涙が出てしまったんですよ。日本のトップクラスのクリエイターたちが生んだこの作品は、徹底的に「破壊」を描きながら併せて高らかに「再生」を宣言しているのです。
先人が生み出してきた数々の「特撮」のスキルを継承しつつ、今、持ちうる能力の臨界まで引き出して「特撮の現在」を描き、未来に繋ぐ。観終わった後に残るのは「恐怖」ではなく「希望」でした。
今の日本でも、CG隆盛の時代でも「特撮」は死んでいない。
これほどまでに熱のこもった作品を観る事が出来た幸せで滂沱の涙です。


とりあえず今年の個人的ベスト3(暫定)に入る作品となるでしょう。
特撮博物館」は10月8日まで開催されているという事で、イベントもこの作品も間違いなくオススメです。

お子さんがいらっしゃる方々は是非ともご家族で行って欲しい。
お子さんの今後の人生を大きく決定付ける可能性もある。未来の映画界を背負う人もここから出てくるかもしれない。
それくらいエネルギーの詰まったイベントです。



【おまけ】