「2011年に観た映画の在庫一掃的な感想・下」

ブラック・スワン

良い映画でした!ホント「レスラー」と表裏一体。「レスラー」は舞台(リング)の外にいる観客の為に殉じる話とすれば「ブラック・スワン」は舞台の中にいる自分との対決。エンターテイメントと芸術。ジャンルで言えばたしかにサイコスリラーだけど、ナタリー・ポートマン演じるニナってすげえ幸せな奴だと思うよ。舞台に立つ者として最高の演技が出来た。表現する者にとってあんなに気持ち良い事って無いでしょう。立川談志師匠も落語に取り憑かれて自分の部屋で呻いてたっていう話を聴きますし。観終わって「ホントに良かったなあ。」って一番最初に思いました。好きな作品です。あと鏡の部屋だらけなのにカメラが写ってないとか単純なところに感心してしまいました。お母さんの狂気っぷりはありゃもうコントだね。




さや侍

まあ、ぶっちゃけ酷い映画なんですけど、松本人志監督作品の中では随分見やすくなったと思います。野見さんのキャラクターがイイのでそれを映画にしてみたいっていう気持ちはよくわかります。でもいかんせん「刑の執行30日」は長過ぎた。7日で良くね?30日もあるから話が単調で進まないんですよ。30日近く野見さんが滑り続けるのを観るっていうのはけっこう苦痛。その割りに画にこだわりが無いんだよね。ギャグに対して極めてTV的な解説入れちゃってるし。じゃあ映画じゃなくても良いんじゃないと思ってしまいました。ただ、野見さんのクライマックスの画が良かったのと、この映画がDVDで発売されるという事で王様のブランチで紹介されてた時に野見さんの一発目のギャグをみた姪っ子(3歳)が大爆笑してたという2点に於いて満足しております。




Super8

Super8」に関してはこの予告編とエンドロールが良かったという事に尽きます。いや中身もそれなりに良かったんですけどね。ワンカットでこの場所で何があったかってわかるオープニングってのは面白かったです。始まる画としてかなりワクワクする。で、登場人物たちのファッションとか髪型がきちんと古いので昔の映画を観ている錯覚になりました。自分の街が戦争状態になるシーンはグッと盛り上がりましたね。良かったところはこれくらいで良かったところと同じくらい悪いところがあるってのがこの映画の魅力かなあ、と。まずいまさらあのデザインの宇宙人はないだろうよ。せっかく良い話なんだからもうちょいこだわって欲しかった。その宇宙人と交流するシーンもなんだかなあ...。グダグダした感じで終わった印象があります。なによりこの映画は人の生き死にの描き方のバランスがスゴい悪い。冒頭でお母さんが死んだって事がすげえ重要に描かれてるのにそれ以外の人たちは結構ないがしろに死ぬ。その辺りがすげえ不満。あとどうでも良いところだとデブキャラはメシを喰っててこそのデブキャラだ。



「アジョシ」

あまり韓国映画を観る事がないんだけど、観たら絶対面白いんだよね。で、この映画もやっぱり面白かったですよ。ウォンビンがとにかくカッコいいんですけどね。そのカッコ良さが既に世捨て人っぽい風情を醸し出してました。まあ、なによりもアクションですよ。人間の急所を確実に狙っていくっていう殺人術のオンパレード。やっぱり人の殺し方を知ってる国の人が作るアクションは違いますよ。クライマックスはちょっとやり過ぎかなあ...と思うところもありました(目のくだりとか)が、概ね満足!敵役であるマンソク兄弟のキャラが素晴らしい。今年を代表する悪役(のツラ)でした。あと、映画と関係ないところでは、隣に座ったウォンビン目当ての見知らぬばあちゃんが卒倒しないかどうかが心配でした。




コクリコ坂から

たしか「アジョシ」を観に行った時にこの予告を観てすげえ面白そう!と思ったんですよ。「好きになった人が自分のお兄さん!?」とか「ついに宮崎アニメで全学連的な内容を描くのか!」とかね。結果、まあまあっていう...。良い話ではあるんですけどね。基本的に周りの大人が優しすぎて、主人公たちが壁にぶち当たらないってのがどうもねえ...。あんまり盛り上がらないんですよ。引きの画がすげえ雑だったってのもちょっと衝撃を受けましたし。スタジオジブリってこんな画を出したっけ?っていう気になったのを憶えてます。相変わらずご飯はおいしそうに描いてますけどね。主人公2人がコクリコ坂の下の肉屋まで自転車で下っていくシーンはスゴく良かったです。これがあったのでまあまあです。あと公開が終盤に差し迫ってきた頃にTVのCMで結構核心を突くような事言うのがすげえ不満でした。




「スーパー!」

すげえ面白い!まるで「ゆきゆきて神軍」を観たような感覚。主人公の彼もまた神軍平等兵でありました。最初はコメディかと思ってたんですけどね、だんだん陰惨な話になっていく。そりゃそうだ、実際に悪を倒すっていう所業はそういう事だ。夢から現実になっていく過程が上手いです。オープニングアニメが全てを物語ってるってのも面白い。敵役のケビン・ベーコンがすげえ良いんですよ。狼の死刑宣告」では逆の事やってたんですけどねえ。ラストの手紙のくだりはホントに見事だと思いました。あいつ幸せだよなあ。自分の世界で。




「ミッション8ミニッツ」

SFワンアイデアものでよくここまでやりました、という感じ。なんか途中でスーパーマリオブラザーズ」のマリオってこんな感じに思ってるんだろうなあ...と思いましたよ。テンポ良く進むのが良いですよ。でもあんまり入り込めなかったのは、映画の魔法がかかり切らなかったからでしょう。電車から出たのにこの世界は存在するんだね、とか、余計な事を考えてしまいました。あと確実に一人だけ損してる奴がいるよね、これ。あいつって結局どうなるんだろう...などと考えてしまうのでどうもいけませんよ。余談ですが、この作品のサブテキストとして松江哲明監督が出した「ダークシティ」はスゴく面白かった。あと古澤健監督が出したモンティ・パイソンのスケッチ「デジャブ」とかね。そういやそんな話でしたね。




エネルギー切れました。後の2本はちょろっとだけ。
「フェイク・クライム」
落語にあるような話で面白かった。決して派手じゃないんだけど良く出来てる、且つ「荒唐無稽」。
「カウボーイvsエイリアン」
ぶっちゃけタイトルで既に出オチなんだよね...。だからタイトル以上の面白さは無かったよ...。



2日続けて書いてみてわかったのはダラダラ書いた方が良いという事ですな。これじゃあ単なる悪口にも見える。ダメだなあ...と思った映画でも良いシーンはありますからね。今後はこういう書き方をしないよう、丁寧に書きますよ。






【おまけ】
さや侍」より
すかんち「恋のマジックポーション

さや侍」はともかく、すかんちは問答無用にカッコ良い。