「2011年に観た映画の在庫一掃的な感想・上」

このままでは年が越せんのです。ちょいと臥せっていたせいもあって、観た映画の半年分くらい感想を書いてません。かといっていつものようにダラダラダラダラと感想を書ける程の記憶も無く...。今回は憶えてる範囲で観た映画の感想を、なるべくシンプルに書いてみたいと思いますよ。




メアリー&マックス

可愛らしいキャラクターたちなんだけど、そこはかとなく残酷。嫌いじゃないです。クレイアニメは質感が大事。粘土で金属を表現してる部分はなかなかの見せ場だと思います。キッチンドランカーとか不眠症とか過食症とか、現代の病をさらっと描いていてスゴく良い。メルヘンな内容だけどその根底には抗えない現実がある。その辺りの表現を逃げずにさらっと描くっていうのがちゃんとしてると思いました。そして現実の先に「欠点も自分の一部だ」という答えまで用意していたので良かったです。不完全を許すという姿勢。




「プリンセストヨトミ」

大きくウソをつく時はディティールに気をつけないといけませんよ。なかなか面白い大風呂敷だったんだけど、坊やがヤクザの事務所の3階から飛び降りるシーンではっきりと魔法が解けました。何でもかんでもアリにすると良くないね。ネタバレしませんけどあれって大阪の女性たちってのはどういうスタンスだったんだろう...とか粗が気になってしまったのです。例えば「太陽を盗んだ男」で、どエラい高さまで上昇したヘリから菅原文太が飛び降りるっていうシーンがあって、あのシーンのおかげで映画全体の妖しい魅力が上がった気がするんだけど、この映画だとそんなケチなシーンのおかげで全体がしょぼくなった気がする。まあ、そこまでの魅力が発揮されるような作りではなかったって事でしょう。ウォッチメン的なトゥルーライズ的な話で、聴いてる分には面白いのね。この映画は中井貴一堤真一が一騎打ちするシーンと、この映画について「綾瀬はるか乳揺れ76回!」という記事を書いたアサヒ芸能のためにあるのです。




アンダルシア 女神の報復

前作「アマルフィ」のイメージ(a.k.a.偏見)のまま劇場で観て、ちゃんと楽しめたので恐らく相当良かったんだと思います。前が酷かったから今回がよく見えたって事かも。少なくとも「作り手の意地」ってのはスゴく感じたのでこの映画に対しての悪いイメージは無いのですよ。前作の酷評をバネに良いものが作られた感じ。空撮ワンカットがそこに表れてました。なにしろ前作はピンぼけしてたし。今回の空撮ワンカットはなかなかの見せ場となってます。なにより織田裕二演じる「黒田康作」というキャラがより親しみやすくなっているというのが最大の改善ポイントだったと思う。「それは『アマルフィ』の後にTVシリーズを通ってきてるからだと思う」と一緒に観に行ったKさんから聴いて腑に落ちました。コーヒーがいつも飲めないとか女に過度に弱かったりとか、「ほつれ」が魅力になってました。「ほつれ」ってのが全体にもあって、例えば「警視庁」って着信がある携帯とか、福山雅治の出オチっぷりとか、そういう前作からの「あれ?」って部分が今回は「味」になってると思いましたよ。あと黒木メイサがようやく生かされるような役で出ていたのにも好感。




もしドラ

今をときめくAKB48前田敦子さんが主演のアイドル映画ですよ。だからどんな内容であれ「前田敦子」が可愛ければ100点なんですけどね。この映画の前田敦子さんて全然可愛く撮れて無いんだよね。終始ゴンタ顔ってのはどういう事だ?いい表情を押さえてないってだけでもマイナスなのに、ストーリーの展開自体が前田敦子さんをヒールとさせているようで、ファンでもないけどなんだか可哀想に思えましたよ。良かったのはミーティングのシーンと野球のシーン。野球の応援は酷いけどね。あと病気の同級生と後輩の女の子は良かった。ほら、脇役の方が光ってるってのがもう可哀想だよ!ドラッガーってなんだっけ?そんな感じ。観てすぐだったらもっと書いてるけど、そこまで書く熱も下がっているのでこんな感じで。




孫文の義士団」

面白かったです。前半はどうしてもダレてしまいますがその分、後半1時間はどこを切り出しても名シーン。守るべきもの(=孫文)が常に移動しているっていうのもハラハラするポイントで上手い。歴史上に名を残した訳じゃない人たちが実は歴史上スゴい事をしていたっていう話は燃えますわな。欲を言えばドニー・イェンをもっと観たかった。「イップ・マン」シリーズを観た直後にこれ観たんで結構衝撃を受けました。でもまあ、カンフー映画が劇場で観られる事自体で今年は感謝してるんで充分でございます。感想として内容が薄いのは観た劇場で酷い目にあって、そっちのインパクトの方が印象深いから。




「こちら葛飾区亀有公園前 The Movie 〜勝どき橋を封鎖せよ!〜」

そこそこ良い人情噺を観ましたっていう感じです。こち亀を観た!っていう気分にはならなかったですよ。全体的なトーンは良いんだけど細かいところがどうしても引っ掛かるという非常に惜しい作品でした。香取くんはなんで終始フザケた声でしゃべってんだ?と思ったら役作りのようで。でも「声が普通に戻る」っていうギャグで笑ってしまったので良し。というか、役者さんはだいたい素晴らしいですよ。ラサール石井の安定感たるや!シーンは少ないけど安心できます。深キョンも良かったし、少年期の勘吉を演じてた子も上手かった。なにより中川を演じてたもこみちが良いよ!予想外にも原作に近いキャラとなってました。あとここ最近の谷原章介さんはどの映画観ても「なんかあったのか?」ってくらいいつも酷い目にあってるね。今のところ2011年度の「ベストオブ踏んだり蹴ったり賞」です。悪くは無いんだけどどうしても乗れなかったのは「こち亀」の人情噺ってたまにやるからいいのであって、あれがメインじゃねえよって事なんですよ。この映画、あんまりギャグは少なかったね。だからこち亀感が全然無くて普通に良い噺で終わっちゃったってのが残念でした。あと両さんって基本「ツッコミ」じゃね?香取くんの演る両さんってただの熱血バカに見えるんですよ。両さんてバカじゃねえから。これは演出が悪いと思う。でも東京湾で屋形船を爆発させたりとか、映画としてはすげえ頑張っていたので、もし次があったら観に行くかもくらいの良さはありましたよ。




忍たま乱太郎

すげえ良かったですよ。ボクは日曜の朝9時からやっていた東映不思議コメディシリーズ(ペットントンとかカミタマンとか)のドラマで育ちまして、それ以来浦沢義雄さんの書く脚本が好きなのですよ。ただ最近はアニメの脚本が多かったので「また実写でバカみたいな映像(たいやきと今川焼が覇権争いで戦争を始める話とか)やってくれないかなあ...。」と思ってたらあの三池監督で実写をやるじゃないですか!そりゃ前のめりで観ますよ!で、観た感想。相変わらずでした!やっぱり子供相手ですからね。うんことか鼻水とか真正面から描かないとダメですよね。この映画その辺りちゃんとしてますもの。大人が子供をガチで殴ったり、子供が大人を酷い目に遭わせたりするのもはっきり描いててボクは好感が持てました。あと他人のボケに対してつっこまないっていう強さよ。つっこまないってのはハートが強いって事だからね。この辺りはキム兄とか品川監督みたいな吉本系の映画には絶対無い要素だなあと思いました。まあ、クライマックスで近くに座ってた子供が小さな声で「がんばれがんばれ!」って応援してたので映画としては成功でしょう。浦沢脚本の三池監督作品は相性が良いと思うのでもっと観たい。あと最後の最後まで顔がわからなかった先生がまさかの谷原章介さんだった時には笑った。「こち亀」と同じ日に観たので。





【おまけ】
美少女仮面ポワトリン オープニング

浦沢義雄ワールド!「忍たま乱太郎」もこの世界の延長線上にありました。