「タンタンの冒険/ユニコーン号の秘密」

時間が空いたのでサクッと観てきました。そういやスピルバーグって監督業ひさびさなのね。調べてみたらアレ以来だ。「インディ・ジョーンズ/クリスタル・スカルの王国」...。


【あらすじ】※シネマトゥデイより引用

ある日、タンタン(ジェイミー・ベル)は、ガラスケースに陳列されていた帆船の模型に魅了され購入する。ところがその直後から、彼は見知らぬ男たちに追いかけ回されるハメになる。何とその船は17世紀に海賊の襲撃によって消息を絶った伝説のユニコーン号で、模型のマストにはある暗号が記された巻物が隠されており……。


【予告編】

以下、(なるべくあっさりと)感想です。






なんかまともなエンターテイメント作品を観た気がします。久々に「生」とか「死」とか「セックス」の事を考える必要がほぼ無い映画だったので、何も考えずに結構楽しんでしまいました。ボクの好きな映画「インディ・ジョーンズ」シリーズですからね、4はともかく。だから充分面白かったと思いますよ。これで楽しめちゃうんですから、なんだかんだ言ってボクは「スピルバーグの映画」で育ってるんだなあと思っちゃいましたよ。


オープニングのカッコ良さで既に一つ満足しちゃってんですよね。「観客に有無を言わさねえ!」ってくらいに予防線張ったタンタンの登場シーンとか。「お前の観てるこいつがタンタンね!」ってくらい圧をかけてくる感じも嫌いじゃありません。あと、そこはかとなく乱暴なギャグとか、タンタンが閉じ込められる箱に行き先が書いてあるとか、観てて「ああ、スピルバーグらしい!」と思ってしまうのですよ。これは紛れも無くスピルバーグの新作なのだな、と。例えると「本家ディズニーランド」なんですよ。ピーター・ジャクソンとかJ.J.エイブラハムズとかが「スピルバーグのオマージュ」とか言って映画作りますが、アレはアレで全然良いんですが、どうしても「花やしき遊園地」なんですよね。だからよく「スピルバーグのオマージュの作品」を観る機会がありますが、【決して「ディズニーランド」にはならないんだよ。「花やしき」の面白さで行くしか無いんだよ】って気になってしまうのです。


タンタンの原作を読んだ事無いんでなんとも言えませんが(タンタンでもチンチンでもティンティンでもどうでも良いんですが)、キャラクターたちはそれぞれ良く出来てましたよ。タンタンの顔は見慣れます。レッド・アッカム演じるダニエル・クレイグも良い。つか、ダニエル・クレイグの悪役観るの随分久しぶりだなという気分。サイモン・ペッグニック・フロストのコンビはアニメになっても相変わらず。声でわかりましたよ。スピルバーグのギャグにあってるかも。といってもこれって2人とアホみたいに仲の良いエドガー・ライトの脚本でしたね。そりゃしっくりいくわ!
中でも重要人物のハドック船長が非常に良かったです。とにかくめんどくさい奴っていう。トラウマのせいでアル中ってスゴいキャラね。でもタンタンのキャラクターが真面目すぎるというか主役にも関わらずあまり特徴がないあっさりタイプのキャラクターなので、ハドック船長っていうめんどくさい人の相手と一緒に動かすと丁度良いんですよ。ボケとツッコミみたいな。まさか3Dのアニメーションで「船長のヒドいボケ(真剣にやった行動)をアンニュイな目で見つめるタンタンの顔」っていう、こっちが何とも言えない瞬間を見るとは思いませんでした。


今回はアニメーションって事だったんですが、ちょうど機が熟したタイミングで作られた作品だと思いましたよ。あとちょっと早くても、遅くてもダメだった気がします。これ以上前に作られちゃうと、火とか水とか「自然にあるもの」のCGが拙い画になってたでしょうし、遅かったら流石のスピルバーグもどうなってたかわからないし。嵐の中での大海戦とか山の上から海までの大アクションを1カットで撮ったりと、アニメじゃないと出来ない表現が随所に光っていて面白かったです。ああ、あと犬とかハヤブサにもムチャさせられるし。
なにより、冒険映画には「んなアホな!」という荒唐無稽な部分が必要だと思うんだけど、最近のお客さんは頭が良くなったんだか、バカバカしさを楽しむ余裕が無いんだか、そういうふざけた部分をお好みにならない方も多い気がするんですよ。今の時代で「墜落しそうな飛行機からゴムボートに乗って脱出!(インディ・ジョーンズ/魔宮の伝説」より)みたいな事を本気でやったら怒るお客さんいるんじゃないかなあ。そんなお客さんに「だって映画だよ!?なにマジになってるの!?」って言いづらい感じはあると思います。で、アニメにはまだそういった荒唐無稽なアクションを描いても許される気がする。そんなところから考えてもアニメになって良かったんじゃないかなあ、と。


とはいえ、まあ当然不満もありますよ。。
前述の通り、すげえ楽しんでるんですよ。でもなんか足りない。この映画の評価がそんなに高くないのもわかります。ボクがこの映画で足りないなあと思ったのは「音楽」なんですよ。テーマソング。誰もが口ずさめるようなアンセムが欲しかったです。今でも「E.T.」とか「インディ・ジョーンズ」とか、鼻歌で歌えるんですよね。実はこれって重要で、子供がタンタンごっこする時に曲がかからないと盛り上がらないんですよ。映画も勿論一緒で、アクションのここ一番って時に「これぞ!タンタン」みたいなテーマ曲がかかったらもっとテンションが上がったんですけどね。


この作品がそんなにあたってないってのはすげえ残念だなあ。純粋に面白いっすよ。原作がまだまだ残ってるし、0を1にする、何も無い状態から映画を作るっていう最大の難関は突破したんで今後続編が作られると思います。みんなで育てていくような映画。タンタンにはそんな末長いおつきあいが出来そうな雰囲気がありましたよ。



【おまけ】
これ観て東宝の「大冒険」っていう映画を思い出した。これも荒唐無稽。怒っちゃやーよ!