「ワラライフ!!」

普段仕事をしていると、なかなか映画を観に行く事もできんのですよ。(とはいえみている方だと思うけど。)でも頑張れば2本くらいは観れるんじゃね?という実験をしてみようとかっちりスケジュール立てて観てみました。今回はその一本目。「ワラライフ!!」。なんでコレにしたかっていうと、上映時間が短いので18時台のこの映画の上映に間に合えば、21時台の別の映画も間に合うからです!


【あらすじ】※シネマトゥデイより引用

東京で一人暮らしをする古川修一(村上純)は、恋人・綾城まり(香椎由宇)との結婚を控えて二人で暮らす部屋を探している。同時期に修一の両親も引っ越しを予定していたが、引っ越し前日まで彼はそのことをすっかり忘れていた。実家を訪ねると留守だったが、生まれ育った家を見ているうちに修一は、家族にまつわるさまざまなことを思い出す。


以下感想ですよ。




基本的にこのブログは褒めるテンションで書いているんだけど、今回ばかりは困りましたよ。今この映画を思い出してみても「良い部分」がなかなか見つからん。面白いとかつまらないとか、上手いとかヘタとか言う以前に、この映画のテーマそのものに同意できんのです。限りなく「お湯に近い味噌汁」に余計な手を加えて「お口に合いますでしょうか?」と出された気分。すいません、「お口に合いません」でした。


この映画、基本的に「良い人」とされる人たちが昔の「良かった頃」の思い出を漫然と羅列するっていう展開を繰り広げていきます。その「良かった頃」の思い出ってのが本当にどうでもよい話。お笑い的に言えば「小学生あるある」のネタを映画でやってるだけ。それがボク(33歳)と世代が合ってないせいかいまいちピンときません。というか、しずるの村上さんてボクよりも年下だから余計この時代設定のズレが引っかかります。自分より下の世代のキャスティングをしておいて、テレビゲーム一つ出てこないってのはどうなのよ?プレステ持ってる持ってないだけでも1エピソードできるじゃない!と、この辺りに「監督自身の『三丁目の夕日』が撮りたかっただけなんじゃねえの?」という感じがしました。あと「小学生あるある」って意外と普遍じゃないんだなあっていう余計な事も知りましたよ。


で、この映画が「三丁目の夕日」っぽくありながら決定的に劣っているのは、誰1人として苦境に立たないのです。一番話を動かさなきゃいけない主人公でさえ環境に甘やかされまくるっていう...。なにかピンチが起こる訳でもなく、ちょろっと困った事が起きたら必ず誰かが助けてくれて、しかも誰かに言われたとおりにしか動かない。主人公がまったく可愛げが無いってのが問題。この映画の主人公の男は終始「楽しかった昔の思い出」といった「過去」ばかり振り返ってるだけで、一歩たりとも自分から進んで「未来」に向かう事がありません。おかげでしずるの村上さんが全体的にすべってるような感じに見えて非常にいたたまれない気持ちになってしまいました。ありゃ可哀想だよ。芸人なのに魅力的に見えないような作りになってるってねえ...。そもそも若い男が「昔は良かったなあ」と、過去を振り返ってるだけの映画なんて見たいかね。主人公が「前」を向かない映画なんて最悪だよ!
併せてメインテーマとして描かれてはいないんだけど不快だった点は、映画の端々に垣間見る「自分の家族だけ良ければ他は別に良い」っていう感覚。吉川晃司と鈴木杏樹の両親が子供にする一連の行動って「家族愛」というか「社会性の無さ」が浮き彫りになってると思うよ。


映画ってものは周りのスタッフに一流が揃っていれば監督なんて実は誰でもできると思っていたんですよ、ボクの経験上。
でもやっぱり違うんだね。作品は形にはなるけど、質はそれなりのものしかならないという事。
単なるあるあるネタの羅列で話が進んで、結構飽き飽きしてくる中盤でようやく画に動きがあります。「さっきまで回想だったはずなのに!」的な監督のちょっとした仕掛け。細かくは書かないけどね。この「画にちょっとした動きが出てきた瞬間」に監督特有の「自分の料理」感があった気がします。「ここで隠し味に『昆布茶』を使います。」みたいなレベル。しかもその隠し味が全く効いてない!ってのもビックリしましたが、なによりこの作品の最終的な着地がそれまでのエピソードとほぼ関係が無いってことにも更にビックリしましたよ。脚本の名前に木村監督と一緒に並んでいた井土紀州さん程の腕を持つ方が監督していたら同じ脚本でも上手くいってたかもしれないね。
ちなみに「画にちょっとした動きが出てきた瞬間」てのが、同時に「映画がいよいよ気持ち悪くなる瞬間」でもあるんだけどね。


驚かされる事 火の如し。この作品で「変わらない日常を映画化するという難しさ」を知る事ができました。百戦錬磨の監督でも2時間引っ張るのって大変だと思います。こういう「実はかなり難しいテーマ」に果敢に挑戦した木村監督には素直に拍手を送りますよ。でもキム兄がやる必要があったんだろうか。なにかのノルマで無理やり作らされたんじゃねえの?キム兄って「日常に起こる些細な苛立ち」に対して「考えられへん!」と独自の目線で怒りをブチまけるのが最大の魅力だと思うんですよ。「怒り」をテーマにした作品を作ってくれた方が筋が通っててとっつきやすかった。テレビ観てるテンションで映画では「イイ人」感ってのは食い合わせが悪いよ。芸人ともあろう方が毒にも薬にもならないような作品を作られては困ります。次はいっそキム兄特有の「毒」をブチまける作品を作って世の中を笑い物にしてほしいなあ、と。
ボクはこの映画を観てちっとも後悔していないどころか非常に得る物が多かったのでオススメしときますよ。
特に今後感想を書く「冷たい熱帯魚」を観た方には是非!



【おまけ】

ボクはこれを観てグッとくるんだけど、ピンとこない人もいるでしょう。とにかくこういった「世代感のズレ」を感じる映画でしたよ。



※本文から漏れた感想

  • 部屋のインテリアが驚異的にダサい。ナンバープレートとか...。
  • 兄弟の存在感のなさハンパない。カキワリみたい。
  • youのマッドなお母さんっぷりは良かったけど一瞬だし...。
  • ヨシモトが絡む映画に於いての次長課長、河本さんの汎用性たるや!しかもどの映画も殆ど同じ役。本編に関係ないところで1シーンだけオモシロ担当。このシリーズになんかハマってきた。ヨシモトが絡む映画にはもう今後も毎回出てきて欲しい。
  • 香椎由宇さんと結婚したい人は参考になるので観といた方が良いんじゃないですかって映画でした。まあ、香椎由宇さん結婚してっけど。