「ヘヴンズストーリー」

去年に公開されていながら、その4時間オーバーというハードルの高さからなかなかスケジュールが取れないまま終わってたこの映画をやっと観る事ができました。これ観たら半日潰れちゃうんだもの。「この為だけの日」ってのを作らないといけない、っていうかなり気合を入れる必要がある作品です。

【あらすじ】※シネマトゥデイより引用

8歳のサト(本多叶奈)が友達と海で遊んでいると、近所のおばさん(渡辺真起子)が慌てて車で彼女を迎えに来る。サトの両親と姉がトラブルに巻き込まれて殺害されたため、彼女はひとり暮らしの祖父(柄本明)に引き取られることになったのだ。同じころ、トモキ(長谷川朝晴)は見知らぬ少年(忍成修吾)に妻と幼い娘を殺され……。

はい、以下感想ですよ!




もし、映画を勉強する上で必要とされる資料としての「日本映画史」というものがあるとすれば、必ず「作品名」を加えておかないといけない作品だと思います。それほど重要かつ、今後の日本映画界には大事にしていかないといけない作品ですよ。
この作品は「光市母子殺害事件」を下敷きにしています。あまりにも救われないあの事件。とはいえ映画を作っている者たちとすれば、必ずいつかは取り上げざるを得ないであろう事件でもあったような気がします。社会を揺るがした事件はすべからく創造の種となる。そしてこの「ヘヴンズストーリー」は、あの事件から丁寧に「人間」を描いている傑作となっていました。


「自分の大事な人が突然居なくなる。」という事。
前回感想を書いた「その街のこども」みたいな天災の場合もありますが、「誰かに殺されて自分の大事な人が突然居なくなる。」という悲劇に直面した場合、人はどうなってしまうのか?
さらに殺した奴がのうのうと生きているという事実を知ってしまったら...。
「たまたまそこを歩いていたから殺した」っていう理由だったら...。

「なんで?」っていう疑問に対して「答えが無い」という恐怖。
人は何かの事象に対して必ず「理由」を求める生き物。特に大事な人を殺されて「理由なんか無いよ」っていうのはもはや無間地獄だね。


主要人物のトモキは妻子を理由無く殺される。サトも幼くして両親と姉を(サトにとっては)理由無く殺される。
トモキの事件は犯人が捕まるが、未成年という事で「無期懲役」という判決。記者会見で「(刑務所から)出てきたら自分の手で犯人を殺します!」と慟哭するトモキ。その慟哭をテレビで観るサト。サトの事件の犯人は犯行後に自殺してしまい、もうこの世に居ない。サトが殺すべき犯人はもうこの世にいない。サトが「同じ境遇にいるトモキの慟哭を聴いた時受ける衝撃」というのが結構ビックリ&見事に腑に落ちる演出で描かれていてこっちが衝撃を受けました。このクオリティで九章あるうちの第一章。なにせ4時間以上もある作品ですから。結構ダレるのではと思ったのですが、一章がもう短編映画として充分な程の内容です。


「殺す」「殺される」という事を4時間以上もかけて丁寧に描いていくと見えてくるもの。
「生きる」っていう事は「誰かと常に関わりあいを持つ」という事なのかもしれません。
人を苦しめるのも「誰か」なら、人を助けるのも「誰か」。人それぞれ違うから「誰か」と関わってしまう事で辛い事も増えるんだけど、決して絶望的にはならない。
観終わった後には観る前よりも人生に前向きになれるような作品だと思います。4時間以上の鑑賞というのは「1イベント」ですが、決して損する事の無い「今後の人生の教科書」となるであろう作品ですよ!



※この感想は「ヘヴンズストーリー」の感想のほんの一部です。正直まったく語りきれてません!1章しか取り上げられなかったよ...。



※本文に漏れた感想
予想外すぎるキャスティングにびっくり。予備知識全く入れてないから冬山に村上淳が殺しにきた相手に面食らいました。
村上淳初登場シーンの格好が一昔前の仮面ライダーみたい。
日本の春夏秋冬とまさに映画!といった絶景がいっぱい。日本にもこういうスゴい景色があるんだなあと驚かされました。とくに団地関係。