「その街のこども 劇場版」

どうしても観たい作品だったので、恵比寿の写真美術館まで行ってきました。あの劇場ってなんか独特な雰囲気があるねえ。

【あらすじ】※シネマトゥデイより引用

阪神・淡路大震災で子どものころに被災するも、現在は東京で暮らす勇治(森山未來)と美夏(佐藤江梨子)は、追悼の集いが行われる前日に神戸で偶然知り合う。震災が残した心の傷に向き合うため、今年こそ集いに参加する決意をした美夏に対して、勇治は出張の途中に何となく神戸に降り立っただけだと言い張るのだが……。


以下、感想です。






まあ、端的に言って今年のベストテン入りクラスの作品でしたよ。
かの地震があった1995年の頃のボクは、横浜の高校に通うボンクラで「神戸」という街にも全く馴染みが無く、ただただニュースから流れてくる地獄のような映像と増え続ける死者数の数に恐れおののいておりました。時は流れて仕事やプライベートでも神戸に行くようになり、「すっかり元気を取り戻した街」を普通に楽しんだりしてました。
で、先日twitterの友人を訪ねてみるという思いつきで大阪・神戸に行った時の話。車で神戸をいろいろと案内して頂いた際に、友人になにげなく地震の事を聴いてみたんですよ。そのとき聴いた印象的な言葉。
「人生が変わりましたね。」
淡々とあの日の話を話して頂いて、その話を聴くにつれ、普通に暮らしていた神戸の人たちにとってあの地震は本当にがらりと「人生が変わる出来事」であったんだなあとその時初めて痛感しました。まあ、ちょうど福原のソープ街を通過していた時にそんな重い話を聴いたんだけどね。

で、この映画ですよ。
すっかり元気を取り戻した2010年の神戸の話。あの地震があった当時こどもだった2人がひょんな事から出会って夜の神戸を歩く。その構成がかなりうまいです。2人にぴったりと寄り添うようなカメラアングルも素晴らしい。三脚ほぼ使ってないね。安定したアングルじゃないからずっと「ボク自身」があの2人と一緒に街を歩いているような感覚になります。ネタばれというかラストシーンの追悼集会はこの番組が当時放送された2010年の1月17日当日の朝だっていうじゃない!企画、構成、見せ方どれをとっても面白いです!


そしてこの映画の一番重要な部分。主人公を演じる2人が抜群に良いですよ。書いておいてなんですが正直「良い」っていう言葉が当てはまって無い気もします。まさにこの2人じゃないと全く成立しない映画だと思います。すっかり綺麗になった街を夜歩く。語られる内容は当時の思い出。実際にあの地震を体験している2人が話していると事実とお芝居の境界線がどんどん曖昧になっていきます。その境界線を飛び越えて伝わってくる思いというものに涙を流さずにはいられませんでしたよ。


多くの方が亡くなった出来事を安易な「悲劇」として描かずに「それでも行かなダメなんです。」と、「生きていく事」を作品の真ん中に置いて描く。その「覚悟」に深く感動しました。この映画に関しては本当に多くの人に観てもらいたい。そんな映画でございます。


今回の日記のテンションが若干低いのは、素晴らし過ぎて本当に打ちのめされてしまったのと、この映画に寄せられた犬童一心監督のコメントが見事すぎるから。


犬童一心監督のコメント ※公式HPより引用

二人は、一瞬バックミラーを見やるかのように過酷な記憶を見つめる。前へと進むために。
祝福する街。朝の光。感動した。


※本文に漏れた感想

  • 津田寛治の醒めた感じがスゴい良かったっす。達観しちゃってる感じ。あれが実際に地震を体験していない人たちの考えの大半なんじゃないだろうか。
  • ゆっちのお父さんのマンションの画は構図が素晴らしい。