「最後の忠臣蔵」

昨日1月10日を持って川崎のチネチッタにある「チネグランデ」という映画館が閉館してしまいました。ボクが幼稚園〜小学校に入ったくらいの時のここら辺は「銀映会」という映画館ばっかりある街で、チネグランデはその当時からあり、たしか「川崎グランド1」っていう名前だった気がします(うろ覚え)。大学をさぼりまくって映画を観てた時とかはこの劇場にもお世話になりました。と、いう事で「映画を観に行く」というか「映画館に行く」というテーマで行ってきましたよ。
で、今日はそこで観た「最後の忠臣蔵」のお話。


【あらすじ】
普段は引用して予告編をyoutubeから引っ張って来るんだけどね。今回は自分で説明してみますよ。


皆さんお馴染みの「忠臣蔵」のお話。赤穂浪士四十七人が、尾張藩吉良上野介を主君の敵として雪の降りしきる夜に討ち入りをするというお話。

これまた滞りなく吉良上野介は殺されて討ち入りは成功し、四十七人は討ち入りの罰として切腹する事になるんだけど、一人だけ切腹せずに逃げちゃった奴がいる。
寺坂吉右衛門という男。この人は実在の人物。逃げちゃったのも本当。なんで逃げたかは謎。そこに原作の池宮彰一郎が物語を作ったんだな。
寺坂吉右衛門大石内蔵助から「討ち入りの真実を赤穂の遺族たちに伝え、彼らの生活を助けよ」という命を受け、死んでいった四十六人の遺族に真実を伝える旅を続ける。最後の家族に行きつくまで16年の旅。そして、ようやくひと段落した所で見覚えのある顔を偶然見かける。寺坂吉右衛門の親友で討ち入りの前日に忽然と姿を消した瀬尾孫左衛門、その男だ。あれほど忠義を尽くしてきた男がなぜ直前になって逃げたんだ...?

って言うお話。
予告もあらすじも結構ばらしちゃってんだよね。これくらいの情報で観た方が楽しめると思いますよ。
以下、感想。







まあ、端的に言って文句の付けどころが無い出来でしたよ。
CG無し、ギャグ無し、難病なし、チャンバラ一回の凛とした空気の良作。
北の国から」の杉田成道監督ですからね。当然上手いですよ。


佐藤浩市役所広司がストーリーをぐいぐいと引っ張っていき、ここに伊武雅刀山本耕史や安田成美の上手い俳優が脇を固め、飛び道具にヨシ笈田と桜庭ななみっていうキャスティング。盤石ですね。特に桜庭ななみのあの無邪気で揺れ動く心を持った女の子の役が特に良かったね。中盤は明らかに彼女が話を盛り上げてたからね。着物をけなげに縫うシーンもグッとくるものがありました。忠臣蔵がどっか行っちゃったのかと思ったもの。男と女の人物配置に間違いがありません。


冒頭、というか、ちょくちょく「人形浄瑠璃」が出てくるんだけど、穿って観れば「操られる運命の人形たち」という風に観えなくもないと思いました。武士はマジで大変です。あんまり描かれてはいなかったけど、佐藤浩市演じる寺坂吉右衛門の旅って相当侮蔑されてきた16年だと思うよ。だって世間じゃ逃げたって評判よ。死んでいった者たちはヒーロー、残った者は腰抜け呼ばわりですよ。タイタニック」にもそんな描写あったね。逃げちゃった船長ね。まあ、それはともかく。
世間から白い目で見られながらの16年。そんな寺坂吉右衛門が同じように「あの討ち入りの夜」を生き抜けた瀬尾孫左衛門とどう対峙するか?このシーンはかなり見ものです。まあとりあえず一回はチャンバラしますわな。でもそのチャンバラは「相手をただ殺す為だけのチャンバラ」ではなくて「必死に生きようとする為のチャンバラ」なのですよ!しかもそのチャンバラ、お互いが必死な分かなりカッコ悪いです。しかしこのカッコ悪さはかなり良いですよ!そしてその後の2人の展開、逃げた謎が解けた時のお互いの表情、素晴らしすぎます。その前に張ってある伏線が見事に効いていました。ここまでの本寸法の時代劇が正月から観る事ができるとは今年も良い事がありそうだと本気で思えるほどです。


一個だけどうでも良いツッコミ入れると、伊武雅刀演じる進藤長保という赤穂藩世話人が、驚異的な推理力で逃げた瀬尾孫左衛門の謎を的確に当てていきます!シベ超のマイク水野みたいに現場行かないで部屋の中だけで全問正解したからね。
さすがデスラー

ガミラス星人の特殊能力的ななにかか、
もしくは空から日本を見てみよう」のくもじい

みたいに空から全部見てたんじゃねえか?と。それはまあ、ご愛嬌ってことで。


この映画、かなりオススメです。「最近の日本映画はさあ...」みたいな物言いは嫌いなんですが、これ観て最近の日本映画はもっと頑張らないといけないなとつくづく思いました。なにしろこの映画の冒頭に出てくるマークは「波しぶき」でも「冨士山」でも「七色に光るプリズム」でも無く、「ワーナーブラザーズの盾」なんだもの。日本のメジャー映画会社はこれ観て全力出さないと!テレビ局とアニメに任してる場合じゃないよ!ひっそりと公開されてるのでひっそり観てください。「スゲエの観た!」っていう気分にさせてくれる映画ですよ!








ここから本当に個人的意見。

この映画は素晴らしいです。
でも自分は「武士道」ってあんまり好きじゃないんだなって事がわかりました。

この映画「だらしない奴」が一人も出てこないんですよ。

ボクはどっちかっていうと「忠臣蔵」で命を惜しんで逃げちゃった奴とか、四十七人以外の他の普通の赤穂藩士たちの方に感情移入してしまいます。
「お腹が減るから飯を食う」とか、「命が惜しいから逃げる」とか、「わかっちゃいるけどやめられない」とかそういった人間のストイックじゃない部分に物凄く魅力を感じるんですよ。

だからこの映画の美学があんまり受け入れられないなあ...という気分になったのも事実。でもこれ映画の感想じゃないしね。自分の了見の話。





【おまけ】
すいません、油断してて「おまけ」の事を全く考えてませんでした。
ここは本文と1ミリも関係ない「レッドサン」のトレーラーを載せてお茶を濁す事にします。うん、画質が綺麗だったしね。