「トロン:レガシー」

今年一発目の映画はおとそ気分で豪勢にIMAXの3Dで「トロン:レガシー」を観てきましたよ。普段極力1,800円を払わないように色々と工夫して観てるんだけど、IMAXに関しては前売り券買っても2,200円。映画に2,000円以上も払うのがこれからの基準になってくようでヤな話ですねえ。

【あらすじ】※シネマトゥデイより引用

デジタル業界のカリスマ、ケヴィン・フリン(ジェフ・ブリッジス)が謎の失踪(しっそう)を遂げてから20年たったある日、27歳に成長した息子サム(ギャレット・ヘドランド)に父ケヴィンからのメッセージが届く。サムは、父ケヴィンの消息を追って父のオフィスに足を踏み入れるが、そこには衝撃的な真実が待ち受けていた。

以下、感想です。








気持ちいい!満足!話は相変わらずつまんないよ!


ストーリーは本当に「よくある話」です。ベタです。幼稚です。偉大な父とそれを超えようとする息子の話。特に目新しい話は無いですよ。なんでまた「トロン」にそういう話を盛り込んで来たんだろう?というか、他にもプロットはあっただろうになんでこれが選ばれたんだろう...?前作主人公であり、重要人物である「父」のケヴィンには息子が2人います。一人は今作の主人公サム。もう一人?は今回の敵役、CPUの「クルー」。この二人の「息子」の対決か、もしくはいかにして「父」を超えようとするか?が、もっとはっきりすればもっと面白くなったのになあ、と思ったり。


脚本もなかなかの低クオリティ。冒頭、主人公サムがパラシュートでエンコム社のビルから飛び降りてタクシーの上に着地するんだけど、びっくりしたタクシーの運ちゃんが一言「おい、タダ乗りかよ!」っていう所謂ハリウッド映画によくある「粋なギャグ」的な台詞に、聴いててこっちが恥ずかしくなったよ!ゲーセンのトロンゲームの裏が実は隠し扉だった!とかもう...ベタドラマか!あと、存在しない世界を描く「SF」って世界観を観客全員に説明する必要があるから、この説明を上手くやってる映画はだいたい傑作なんだけど、この映画はねえ...ドンくさいんだよね。台詞でウダウダと説明するシーンは結構退屈でキツイものあり。


ただね。










そんな事どうだっていいんだよっ!



「トロン」の魅力ってそういうとこじゃないんです!
そもそも「トロン」って話自体がそんなに面白くないんですよ!
(個人の感想です)


こーゆうのとか

こーゆうのとか

こーゆうのを観て、ただただよだれを垂らすかおしっこを漏らすっていう所が最大の魅力です!
これとか

これなんか問答無用に素晴らしいじゃないですか!なんの文句があるんですか!


子供の頃に観た「トロン」ってすごく覚えてて今でも大好きなんだけど、はっきりと覚えてる部分ってライトサイクル等のガジェットのカッコ良さと、出てくる登場人物の顔色の悪さしかないんですよ。今回「トロン:レガシー」を観る前に一応観なおしたんですけどね。相変わらず顔色は青白かったですよ。それは冗談として、話は結構トンデモな感じでした。コンピューターの擬人化ってなかなかぶっ飛んでる。windows95どころかマウスすらないような時代のコンピュータですからね。世界をただコンピュータに変えただけでやってる事は「不思議の国のアリス」とか「オズの魔法使」と変わってません。トロン以降でも「ラビリンス」とかね。大義でいえば「バック・トゥ・ザ・フューチャー」もそうだね。あとCGがすごいって言ったってね、今観たらあれ普通にアニメよ。ストーリーはつまんないけど世界観が新しかったから、単なる凡作として終わらずにカルトクラシックの一品として好事家に楽しまれてたんだと思います。


で、今回の「トロン:レガシー」。


続編ならではのファンサービスが詰まっててすげえ面白い!
冒頭、サムがエンコム社に忍び込むシーン。でかい扉の暗号を解読して入るんだけど、前作で親父さんがエンコム社に忍び込んだ時の通ったルートとまさに同じ!このシーンで既に信用できました。「前作と同じ場所でロケをする」っていうのは想像以上に難しい話ですよ。ましてやこれは20年以上も前の話の続編。フリンのゲームセンターとか本当によく残ってたわ。ボクはかつて10年ほど映画やテレビドラマでロケ地を探す「制作部」という役回りで働いていたんで良く分かるんですが、日本では街の風景は20年で1サイクルするほど変わるスピードが早いので無理です。ロケ地を前作に合わせる努力を怠ってないのは偉い!


「映像美!」とか言われるけど、あんまりそうは思わないんだよね。 3Dめがねのせいでむしろ悪くなってると思うし。映像が綺麗というか、そのオリジナリティ溢れるデザインが素晴らしいんだと思います。「トロン」で観たかったのはああいう事。未来を扱う他の映画とかとはやっぱりはっきりと一線を画してます。「フルタッチパネルのキーボード、しかも赤と黒の配色」なんてあの映画が産んだガジェットの傑作ですよ。今回もちゃんと生き残ってましたよ。ゲームの世界に飛び込む瞬間のシーンも前作よりもはるかに良くなってました。この作品で間違いなくキモになる部分の一つではあるけれど逃げてませんでしたよ。わかってはいるけどドキドキしましたしね。問題は無い事はないけどね。あとで書きます。


ちゃんと前作よりも良い物を見せようという努力が見えて好感が持てましたよ。ゲームはそれぞれがバージョンアップしてました。お馴染みのディスクパネル戦はもちろん、ライトサイクル戦は前作の「直角カーブ」ではなくなり「緩やかなカーブ」が可能に。しかも平面ではなく上下2面のバトルに難易度もアップ(詳しくは本編をご覧ください)。まあ本音を言えばあの「直角カーブ」が「トロン」の魅力でもあるんだけどね。コンピュータも進化してますから。良いじゃない!しかもラストなんてのは、ライトサイクルの概念を更に違う「あるもの」に使ったゲームになってるからね。あれ乗りたいなあ...。って思わせた時点で映画の勝ちです。


一番良かったところは「映像」よりも「音」です。そこがこの映画の一番のポイントでした。これから観る人は「音」に注意して観て頂きたい!
見せ場である最初の「ゲーム」、「ディスクパネル戦」のシーン。今回は擬人化したプログラムたちが観客席から大歓声を上げています。そこに乗りこむ主人公サム。プログラムたちの大歓声が観てるボクの足元から地響きを上げて全身を包みこんできたんですよ!鳥肌立ちましたよ!そこからはもうただただ快感。大迫力の音がこの映画をより面白くしてました。それだけじゃないんですよ。ダフト・パンクがDJしてくれてんですよ。それ聞きながら大立ち回りってもう素晴らしすぎるよ!「3D必須」というよりも「爆音必須」で観るべき映画です!


でね、今回の続編で一番問題なのは、話のつまらなさなんかよりも「3D」という現在の最新技術の導入が上手くいってない事だと思うんですよ。
最初に「この映画は3D映画ですが途中2Dにもなりますよ。でもメガネは掛けたままでね。」みたいな字幕が出るんですよ。まあ、「なにやってんだ!」って当然思いますわな。で、上映開始。スクリーンからぼわーんと飛び出すオープニング。でもすぐに2Dに戻る。この映画の最初って現実世界から始まるんですよ。次に3Dになるのはコンピュータの世界に入ってから。これね、恐らく「オズの魔法使」みたいな事をしたかったんだろうけど明らかに失敗してんだよね。
オズの魔法使」は戦前のハリウッド映画。カンザスに住む女の子ドロシーが嵐で家ごと飛んでいって魔法の国に着いていた、っていう流れ。嵐に飛ばされる前のカンザスでは画面は白黒。嵐に飛ばされて家から出る為に扉を開けてみるとそこはフルカラーで一面魔法の国!っていう、当時の映画技術を逆手に取った絶妙な演出。こういう事したかったんでしょ。でも「トロン:レガシー」ってオープニングタイトルで既に3Dを観客に見せちゃってるんだよね。だからサムがゲームの世界に飛び込んだ瞬間から3Dを見せてもあんまり効果が無いんですよ。
で、ゲームの世界から3Dになってんだけど、ゲームの世界がそもそも遠近感を感じさせるような空間じゃないから飛び出してくるのは画じゃなくて字幕ばかり。あと「シャンデリア立体的だな〜」くらい。一ヶ所だけ「お!3D!」と思わせる演出があったけど全体的にはすべってます。街をバイクで車を縫いながら爆走するサムの主観のシーンは、一番3D栄えする画なのに現実世界だから2Dだしね。
最新技術を見せるっていう「トロン」の本質を、監督の演出があんまり捉えられてなかったってのがちょっと残念でした。


ただ、あらゆる問題点を補えるほどボクは楽しめましたよ!もう単純ですよ。見た目がカッコ良いから良いんです!綾瀬はるかが出てるから+80点!」と同じローカルルール採用ですよ。「プラモ狂四郎」的な、子供の頃に観てたら大人になるまでずっと憧れさせてくれるであろう、相変わらずぶっとんだ世界観だったしね。3Dじゃなくて「音を全身で浴びに行く」という事に関しては超オススメです!




【おまけ】
「アイアンマンのウォーマシン作っちゃった奴」に続いてやっぱりいたよ、ライトサイクル作っちゃった奴!




「トロン」の世界観とマーベル社のヒーローたちのコラボ。すなわち最強である。
Marvel Comics' TRON-ified Covers!



作品内でジェフ・ブリッジスがもっていた多角形のオブジェ。なにげにボクも持ってんですよ!(自慢)



最後はボクが好きなブログ、tada-woさんの「ワインレッドの日和」より
【俺はいつだって、電子世界へ行けるぜよ(脳内で)】をご覧ください。オチが必見です!



【本文に漏れた感想】※ネタばれ含む

  • 一番最初の「トロン風ディズニーロゴ」でもう充分こっちは感動してんです。
  • 親父さんのケヴィンって「ヒャッハー!」のキャラだったような気がする。腋汗ガンガンでゲームするくらいの。とってつけたように「禅」の概念が出てきたけど、あのまともじゃない世界で正気を保つには必要なのか。前作のケヴィン初登場シーンで日本のはっぴを着ていたから、伏線を回収したという事で納得しました。
  • ラストカットは「風景を見せる」か「彼女の顔を見せる」かで意味合いが変わってくると思ったが、そうかそっちをとったか...と思いました。
  • 登場人物たちの見栄の切り方が歌舞伎や軽演劇のそれに近いよ!
  • 出てくる女の子が本当に魅力的。目が大きいから松本零士というより手塚治虫のマンガに出てくるようなキャラっぽい。
  • アランが前作の野暮ったい眼鏡じゃ無くなってました。


  • トロンは前作のデザインからバージョンアップした瞬間の画が欲しかった。個人的趣味。
  • クルーのCG顔(若い頃のジェフ・ブリッジス)って良かったと思うよ。ホントに存在してない感じが。
  • エンコム社って「映画の世界で3大あんまり入りたくない会社」だなあ、とぼんやり。残りはロボコップ」のオムニ社「ダイハード」のナカトミコーポレーション
  • もはや「トロン:レガシー」の感想ですらないですが、同じテンションでシュワちゃんの「バトルランナー」も観たくなりました。