「LOOPER/ルーパー」


新年開けてからずっと風邪が治りません!今年はちゃんと書くと言いながらすっかりこのザマでございます。
今年も何卒宜しくお願いいたします。


2013年、映画館で一番最初に観た映画は「LOOPER」...を観に行った際に強制的に観せられた「わたしをバルトに連れて行って」でした。

まず何から突っ込んで良いのやら。色々と不穏な要素を抱えている作品でしたね。この感想は置いといて「LOOPER」の感想を書きます。




【あらすじ】※シネマトゥデイより引用

未来からタイムマシンで送られてきた標的を消す、“ルーパー”と呼ばれる殺し屋のジョー(ジョセフ・ゴードン=レヴィット)。ある日、ジョーのもとへ送られてきたのは、何と30年後の自分(ブルース・ウィリス)だった。ジョーは、未来の自分の殺害をためらい逃がしてしまうが、その後未来の自分から、やって来た理由を明かされ……。

【予告編】

以下、ゴリゴリのネタバレ感想です。
つか、書きたいところはむしろそこなんで...。
未見の方はご覧頂いてから読む事を絶対オススメします。







去年自分が挙げたワースト映画の傾向でわかった事ですが、ワタシ、自分勝手な奴が主人公の話って大嫌いなんですよ。で、この作品も結局のところ、ほぼ全篇「てめえのエゴ」のみで進むストーリーですからねえ...。今ひとつ乗れず。あと「SF」ってのもそんなに好きな分野では無いのです。ドラえもん星新一くらいでギリ。SFに関しては中学生レベルの理解度しかありません。状況の把握とか辻褄とか色々と考え過ぎちゃうせいで、考えている時間の分だけ「止まっちゃう」というか、話についていけなくなってしまうからで。
要は、今作を観てる間はあんまり好きではありませんでしたって事です。しかしラスト、主人公の若いジョーが選んだ行動一つでこの映画に対するワタシの評価が綺麗に裏返りました。いや、なかなか面白かったですよ!


明らかに治安悪そう&貧乏人多そうな街が舞台のこの話。この街は良く出来てましたね。カッチリと「ザ・未来!」なんて細部まで作り込まないという事が、かえって「成長しきった未来の地方都市」という雰囲気を効果的に出していたと思います。ディストピアまでいかない、程良く「くたびれた街」。また、この街を脱出する方法がだいたい決まって「列車」ってのも良いですねえ!より「地方感」を感じさせてくれました。何となく山梨県〜長野県辺りの中央本線沿線の街を思い描いちゃいましたもの。


出演者の皆さんも素晴らしかったと思います。ジョセフ・ゴードン=レヴィットって人はなんでもできる器用な俳優さんですね。それに後半の重要キャラクターとなるシド。よくもまあ、あんな子を見つけてきましたわ。可愛いような...不細工なような...。彼がロボットだって訳じゃないけど、ちょうど不気味の谷」の縁にいるようなお顔立ちの子でした。あとイヤにポール・ダノ面してる奴がいると思ったらホントにポール・ダノでしたね。役柄も相変わらずポール・ダノ役。ルビー・スパークス」は未見なんですが、観たら彼のイメージも変わるもんなんですかね、ポール・ダノ


役者の評価の流れと併せて、懸念されていた「SF苦手」問題ですが、画期的な解決策を見せて頂きましたよ。前述した通り「SF」ってストーリーを理解するまでにワタシ自身が色々と考えちゃって、その間、話の流れが止まっちゃう。そんなワタシの悩みをはっきりと解決してくれるキャスティング、そう!ブルース・ウィリス!!
ブルース・ウィリス演じるおっさんのジョーが若いジョーと対峙するダイナーのシーン。(このシーン自体も主人公である本人同士がお互いをまるで鏡を見るようにシンメトリーになっている、という素晴らしいシーンですが)おっさんのジョーがうんざり顔でハッキリと「タイムトラベルの話はしたくない」って言っちゃってる!そればかりか若いジョー(っていうか、もはやワタシ)がしつこく聴いたら「いんだよ 細けえ事は!」と「マーダーライセンス牙&ブラックエンジェルズ」の松田を彷彿させる一喝!斬新!!
そりゃブルース・ウィリスからそんな事言われちゃったらもう、この辺りの話はどうでも良いですよ。SFファンの方々だったらたぶんもっと詳しくこの話がどういう事かわかるでしょうが、ワタシはこれ以上良いですわ。まるで客の粗捜しを黙らせる為にブルース・ウィリスがこの役に選ばれたんじゃないだろか?と勘ぐりたくなる程、絶妙なキャスティングでしたよ、少なくともワタシには。


なにより一番グッときたのが、これまた前述の「クライマックスに於ける若いジョーの選択」ですよ。

若いジョーもおっさんのジョーも基本的にはクズなんですよね。ここでいう「クズ」ってのいうのは「てめえの事しか考えていない奴=エゴイスト」っていう意味で。「死にたくないから(未来の)自分を殺す」っていう若いジョーもエゴイストであれば、「愛する女を救う為、子供を殺す」っていうおっさんのジョーも実はすごいエゴイスト。
ただ、若いジョーの方はサラとシドの親子と合う事でちょっとずつ気付き始めます。やったらやり返される、暴力の連鎖。終わりの無い円環構造。そして、若いジョーがぼんやりと気付き始めた事が、まさにクライマックスでハッキリと彼自身に見えちゃったんですよ。巨大な「人間の業のリング」が。


このリングを断ち切れば世界は変わる。

しかしその選択は「正しさ」か?「生存」か?という極限的な状況に置かれた者、即ち「ヒーロー」の倫理。


後はご覧になった通り、果たして若いジョーは「クズ」から「ヒーロー」となるのでした。
この部分が全くブレずにこの映画のこの一点に全て集約されている、というのが大変素晴らしい脚本だと思いました。ブサイクな映画なんて「クライマックス」と「ヒーローになる瞬間」と「オチ」が、ここまで綺麗に重ならないもんね。


今年一発目に観るにはちょうど良い面白い作品でございました。全体的にざらっとした質感の雰囲気も良かったです。有り体の言葉で言えばハードボイルドタッチと申しましょうか。恐らく映画ファンならば「このシーンはあの映画のアレ!」とか、わかるんでしょうがワタシにはわかりません。そんなの知らなくても充分に楽しめます。お時間が合えば是非!



【おまけ】
シンメトリー!鏡!と言えばこのコント。


「The PEN story」
60,000枚の写真で綴る「人の一生」のお話。


タイムスリップものとして。

「1910年から見た2000年の世界」


仮に30年くらいタイムスリップしたら東京、原宿はこんな感じ。
「1980年の東京の若者たち」


20年くらいでもこんな感じ。うわー...。
「Tokyo-1990 / 20年前の東京 (2010 Exhibition Video) 」



※本文から漏れた感想

  • テレキネティック(=TK)っていう超能力が、チンピラが使う分には居酒屋でおしぼり使ってチンコ作ったりするレベルの芸にまで堕ちぶれてるのがいい感じの未来感ですね。
  • 淡々と仕事をこなす日々のシーンがリズミカルで良い、かと思いきや若いジョーがバイクに乗ってるシーンがちょっとダサいとかけっこういびつな映画ではある。
  • いくらなんでもジョセフ・ゴードン=レヴィットからブルース・ウィリスに年月が経つシーンは無いだろ!モーフィング下手か!何個かコマが足りない感じだぞ!
  • 「うにょうにょした雲」について書く気力は無い...。