「ザ・マペッツ」

「超面白い!」っていう噂を聞くか聞かないかのタイミングで、一気に上映館数が減ってしまった不遇の作品「ザ・マペッツ」の感想を書きますよ。「ジム・ヘンソン」ワークスの中では「ラビリンス 魔王の迷宮」とか「フラグルロック」は観てたんですが、「セサミストリート」とか、この映画のオリジナルである「ザ・マペットショー」は観てないんですよ。今やってたら毎週観てたかも知れませんねえ。ちなみに「ザ・マペットショー」って日本ではいつ頃放送してたのか?と調べてみたら、1981年の4月〜6月の1クールで日曜の18時半からだったそうな。あー、そりゃあ観てないわあ。国民的アニメの真裏だもの...。


【あらすじ】※シネマトゥデイより引用

人間のゲイリー(ジェイソン・シーゲル)と友人であるマペットのウォルターは、マペット・ショーの大ファン。ある日、ゲイリーと結婚が決まっているメアリー(エイミー・アダムス)たちのロサンゼルス旅行に同行させてもらったウォルターは、あこがれのマペット・スタジオに行くことに。しかし興奮もつかの間、マペット・ショーの殿堂はすっかり寂れており、かつての面影はなかった。さらに石油王による恐ろしい陰謀が発覚し、ウォルターたちは何とかしようと、現在は引退した“ザ・マペッツ”の人気者でカエルのカーミットを探そうとする。

【予告編】


以下、感想です。



すげえ面白い!狂ってる!!!



オープニング10分からもう良いんですよ。「言っとくけどこの映画ってマジこーゆー世界だから!」って宣言された感じです。一気にマペッツの世界に惹き込まれます。物語の前半を引っ張るウォルター君のキャラが観客に有無を言わせぬほど愛らしいのです。畳み掛けるように繰り出すギャグの数々は、誠実と言うか美学と言うか、まあ、なんだ、とにかくバカバカしいです。キャラクターたちも観客同様、この映画を楽しんじゃってる様子がヒシヒシと感じられて妙なグルーヴ感がありますよ。


ストーリーはごく単純で、他の皆さんもご指摘のように、まんま「まむしの兄弟シリーズ」ブルース・ブラザース」でしたね。他にもなんか最近「仲間の為に立ち上がる」っていうような映画を観た気がするんですけどなんだったか忘れてしまいました。「仲間の為に立ち上がる」というテーマは今年の一つの傾向かもしれませんね。テンポも非常に良く(というかそのテンポの良さも一つの「ギャグ」として昇華している辺りが素晴らしいんですが)、観ている時間はずっと楽しいというど真ん中の娯楽映画でした。恐らく「わかる人にはわかる」というファン向けのギャグも数多く散りばめられており、これはもう門外漢として悔しい限り。とはいえ、よくわかってなくてもわかるギャグも同じくらいの分量が入っているので問題ありません。つか、ウォルター君の存在そのものがすでに大きなギャグなので充分ですよ!


主人公(というか話を進めるキャラクター)が途中からウォルター君からかえるのカーミットに変わってしまいますが、それもまた止むなし!という感じです。やはりカーミットは紛うこと無き大スターですよ。彼のワンショットだけで大スクリーンの画が持つというくらい。なにより彼の泣きの背中は圧倒的な説得力を持っています。そして更に強力な個性を持った「女優」ミス・ピギーとのやりとりは、実在の俳優がやりとりする凡百のラブコメディをも凌いでいるかもしれません。軽妙洒脱でありながらスラップスティック。この「ベストカップル」がかつて居たという事を知らなかったのは、ただただ自分の不勉強さを恥じるばかりです。


「あのシーンのあのギャグ良かった!」とか細かく書いちゃうと、それ自体ネタバレになってしまうので止めときますが(ホントは書きたいんですが!)、この映画が心地良いのは「圧倒的バカバカしさの先にある健全な世界」を楽しむ事ができるからです。誰かを貶めて笑うみたいな不快感が無い。※ジャック・ブラックにあの服装を強制したのは、ある意味でコレにあたるかもしれませんがね!
殺伐とした世の中で、彼らのやっている事がそのまま「世の中をちょっとだけ良くする」事になるヒントになるかもしれない。そんな事を感じずにはおれません。
また、「オリジナルに対する愛」を、観ているボクにも感じたから良かったのかもしれません。去年「電人ザボーガー」を観終わった時にも感じたような気持ち。とにかくマペッツが好きなんだよ!っていう気持ちを持った人たちがちゃんと作ったんだなあという気迫が感じられました。そういうのは観ていてもわかるし、たとえこっちに思い入れが無くても気持ちイイもんですよ。
そして大団円のラスト、俯瞰のモブシーンは、心の底から「良い映画を観た!」と存分に満足させてくれるのですよマナマナ。


惜しむらくは、ホントなんでこんな短い期間で終わっちゃったんだろうなあ〜って事ですよ。もはや映画の出来に惜しいところは無いです。配給会社がこの映画の売り方に完全に手を焼いた感が残念でなりません。純粋な「子供向け」でもないし、ましてや大人向けにも見えないし、どうしたもんかなあ...と困っちゃたんじゃないでしょうかねえ。とはいえ、やはり「日本語吹替」版はどっかで公開した方が良かったんじゃないでしょうかねえ。ボクが観た時に隣に家族連れが観に来ていて、小さな子供が字幕のひらがな部分だけ音読してたのを聞いてなんか可哀想だなあ...と思ってしまいました。まあ、上映後、その家族連れの座ってた席の下は一面ポップコーンに溢れてましたので「あのガキ...!」とも思ったんですけどね。


そろそろBlu-RayやDVDも出るでしょうから、ぜひ観て頂きたい作品です。
もちろんお子さんにも。大丈夫、メタフィクションのギャグはお子さんも好きなはずですよ!



【おまけ】
この曲のイントロが流れて「マジかよ!」と思ったんだけど、実に上手くやってましたよ!
OfficialのPVが貼れなかったんでこちらで。


ザ・マペットショーに「スターウォーズ」ご一行様がゲストに登場した回。
マペットたちにC3-POとかR2-D2がからむとか、もうマジカオス!



ジム・ヘンソンと言えばボクはやっぱりコレなんですよ。コレは毎週観てた。




※本編から漏れた感想

  • 日本語吹替やったら良いのに...と思いながら、カーミットのオリジナル声優はルパン三世山田康雄さんだったそうで、それはそれでオールドファンにはどうしようもない無念な話だなあ...と。