「インシテミル」

思えば「バブルへGO!」とか「ボディ・ジャック」とか「アマルフィ」とか、タイトルだけで会話のネタになってしまう(というかボクがしてしまう)ような映画が数多くありましてな。ご多分にもれず「インシテミル」という単語も、その意味がわからない点や予告編から来るなにか香ばしい雰囲気が大変気に入りまして、最近のマイブームとなり会話の中で使ってたんですよ。ただ、観てないのにとやかく言うっていうのは野暮なんで昨日観てきました。


【あらすじ】※シネマトゥデイより引用

時給11万2,000円という怪しい求人広告を見て、暗鬼館へと集まった男女10人。仕事内容は24時間監視されながら7日間を過ごすこと。そして、個室にはそれぞれ異なる凶器が置かれ、何も起きずに7日間経過するか、生存者が2名になるまで暗鬼館に残らなければならない。しかし早速2日目に銃殺による死者が出てしまい、彼らは疑心暗鬼に陥っていく。

以下、感想です。流石にサスペンスの犯人をバラす程の肝っ玉の強さも無いので今回はネタばれなしで。







小説の表紙を見てみたらね。タイトル「インシテミル」の下に「THE INCITE MILL」って書いてあるんですよ。
インシテミル
「THE INCITE MILL」
INCITE=(怒りなどを)駆り立てる、煽動する、そそのかす、励ます
MILL=施設
端的に言って、この映画(というかこの作品)のこのタイトルが「上手いっ!」って思うか「うわぁ...。」って思うかで初っ端から評価が分かれると思います。


まず良いところから。もちろん良いところありますよ!やっぱり「リング」中田秀夫監督ですからね。観てるのもヤになるようなドキドキするシーンもありました。演出と音楽の使い方はサスペンスの本寸法。当然ちゃんとしてます。ある役者とある役者が格闘するシーンがあるんだけど、このシーンは秀逸。武器がアイスピックで、ある役者が本気で心臓狙って相手を殺そうとしてるように見える。これ「エクスペンダブルズ」と違ってカット割ってないから見ていてホントにおっかない。つか、危ない。アクションてカット割らない方が良い場合もあるよね。

これホリプロの創業50周年記念作品との事で、俳優陣は全てホリプロ。だから女優が他の映画と比べて贅沢。綾瀬はるか石原さとみという「観てるだけで幸せ」女優が2人も揃ってるだけで充分至福。ボクは綾瀬はるかが出てる映画は自動的にプラス80点」というローカルルールを採用しているので、もうこの時点でこの映画の点数は高いんです。併せて石原さとみですよ。麻雀で言ったらこれでドラ二枚分!更に平山あやの「とあるアップのワンカット」と、片平なぎさのキラリと光る演技が素晴らしい。平山あやは美味しいキャラクターでしたね。見せ場がちゃんとあるし。あとやっぱり片平なぎさね。サスペンスと言ったらこの人でしょう!テレビの二時間ドラマとかではあまりにお馴染みすぎて気付かなかったけど、スクリーンで見ると凄い。この人、どこまでホントの事言ってるかわからない!表情が豊かだから観てるこっちが翻弄される。平山あや片平なぎさ裏ドラ二枚乗りました。もう満貫確定じゃないですか!

はい、ホメ要素ここまで。
この映画の凄い所は、ドラが四枚もあるのに役が無いからあがれないんです。そんな映画。
つか、そんな事ってあるかね!?

簡単なところから言うと、登場人物の身の回りの世話、犯人の拘束、遺体の処理を行う「ガード」なるマシン(WALL-Eに出てきた「操縦舵」みたいなやつ)が出てくるんだけど、このマシンのデザインが脅威的にダサい!これだけ東映不思議系コメディみたいでサスペンス要素を削いでいる!ガンツ先生っぽい質感。カクカクと動く様。迫力が無い。たぶんデザインの図面ではカッコ良かったんだろうなあ、と思わせる残念な出来です。アレ出てくるとなんか笑っちゃいます。カッコ良いデザイン図を元に実際に作ってみたらヘンなの出来ちゃった!ってのは、実はこの作品そのものにも言えちゃう訳で...。

言いたい事というか、この映画の仕組みってこうですよ!っていう事はわかるんだけど、「これって準備稿のままで作っちゃったんじゃね?」ってくらい展開が良くないんだよね...。この映画ってとにかくストーリーを進める事が最重要課題みたいになってるもんだから、登場人物たちがまあ都合よく動く事!一つだけネタばれすると、登場人物が一人死にます。その後淡々と犯人は誰だ!?て捜すんだよね。人一人死んでんだからもっと慌てない?仮に密室で一人死んだら、もうどうにかして脱出しようとしないかね。チリの落盤事故も極限状況の中、団結してたしね。登場人物の心情より、物語の展開を強引に進めるからもう何がなんだか。「なんでそんな事するんだ!」って仮に聴いたら「台本に書いてあるから」っていう回答が一番正しいとしか思えん。

この作品の最大のキモである「ゲーム」の設定も隙が多いんですよ。別に「生き残った一人が勝ち!」とか「殺して良し。」とか「殺したら時給総取り」とか「誰かを救ったらボーナス」っていう訳でもないからね。「10人それぞれが武器を持っている」っていう「抑止力」が全然効いてない。他人を蹴落とすメリットが提示されてない。「じゃあみんなで腹割って話して全員生き残りゃいいじゃん!」って思ってしまいました。原作では「殺して良し。」ルールはあったみたいだけどね。つか、原作の「ルール」も穴があるみたいだけどね。ボクはミステリ小説からきしなんで、そこら辺は言及できないけどさ、素人のボクでこの感想ですもの。しんそこサスペンス・ミステリ小説が大好きって人がこれ見たら噴飯ものなんじゃないだろか。


「ナイト&デイ」とか「エクスペンダブルズ」は何が起こったって良いんですよ。ありゃ「理屈じゃない」ですから。こういうサスペンスものってのはその「理屈」を楽しむ映画。理屈がへりくつだったらそらツッコミも増えますわな。ただただ残念としか言いようがないよ。せっかくあんなに良い役者さん揃えてるのにね。




【おまけ】
改めて見直してみたらあながち間違いでもなかった。こんな感じのロボが襲ってくるぞ!

ロボコン ED