「十三人の刺客」

今日は十三人の刺客を観ましたよ。

【あらすじ】※シネマトゥデイより引用

幕府の権力をわが物にするため、罪なき民衆に不条理な殺りくを繰り返す暴君・松平斉韶(稲垣吾郎)を暗殺するため、島田新左衛門(役所広司)の下に13人の刺客が集結する。斉韶のもとには新左衛門のかつての同門・鬼頭半兵衛(市村正親)ら総勢300人超の武士が鉄壁の布陣を敷いていたが、新左衛門には秘策があった。

十三人の刺客」予告編

海外版タイトルは「Thirteen Assassins」って言うのね。そのまま、且つカッコ良い!

で、以下感想。



最高!
ものすごく手間隙のかかった、至極真っ当な「時代劇」でした。暗闇の演出が出来てる。最近の時代劇で不満だった点は照明が明るすぎる所。それがこの映画ではあまり感じない。寧ろ暗闇で見えないという事を利用した面もあって正しい!と思いました。
役者陣に関しては申し分なし!イイ顔した男達が画面狭しと暴れ回るエネルギーときたら!まるで平田弘史先生の劇画をまんま実写化ようなくらい頑張ってました。もちろん若い人は若い人なりに上手いんだけど、しっかりと顔だけで「時代劇」が出来る人たちが、それぞれ重要な役を演じてる所がなんとも外してなくて上手いです。平幹二朗とか松本幸四郎とか画面にいるだけで良いんだよねえ。つか、この映画に出てくる男達は全て良いです!みんなも言ってるけどやっぱり松方弘樹の殺陣が美しいんですよ。速過ぎて刀さばきが見えない。にもかかわらず斬り終わるとピタっと決まる。ベテランの味が良く出ててこれだけでも見る価値あり。個人的には松方弘樹の江戸っ子口調も良いよ。斬り過ぎて狂っちゃった六角精児の演技もお気に入り。あと、福本清三まで出てるのは思わずニヤリとしたり。
女性陣の事をあんまり書かなかったけど、極端に男映画だからそんなに出てないんだけど、ポイントは押さえてて「出てたっけ?」とはならない。いまどき「お歯黒」をリアルに再現する正しさったら無いよ。メイクもいわゆる「現代風」メイクにしてないんだよね。だから観たらちょっとギョッとするけど、それはそれであり!
ホント「オールスターキャスト」とは良く言ったもんですよ。有名人がいっぱい出てるっていう点もあるけど、「みんな、なんかの映画で観た事あるような役柄で出てる映画」ともとれました。古田新太さんて時代劇でいつも「槍使い」じゃね?とか岸部一徳さんていつも「商人」やってね?とかね。

ということでおすすめです!
この映画「テレビ朝日」が製作に携わってるという点もポイント高し。テレビ局製作の映画でもちゃんとしてたよ!「フレフレ少女」でお馴染みのあのテレビ局がだよ!



で、こっからは思いっきりネタばれの感想。一番言いたかった点。



もしこの映画に「ダルマ女」のシーンがなかったら「まあまあ面白かったです。」っていう感想になってたかもしれないっす。

吾郎ちゃん演じる暴君に両手両足を切られた女性が、役所広司に口に筆を加えて一筆伝える。目から涙、鼻から鼻血、口からよだれを垂らしながら必死に「みなごろし」の一言。


これをみた役所広司...思わずニヤリとして「面白い!」っていうんだよね。


このシーン、今年観た映画の中でトップクラスに大好きです!あまりに凄惨な話で被害にあった女性が必死になってるのを見て「ニヤリ」ですよ。普通の映画だったらここで「ワナワナと怒りに震える」とかいう演出をしがち。そのベタな演出をしてないんだもの。

ボクはこのシーン、二通りにとりました。
「あまりに凄惨な話で、悲しいとか腹立たしいとかいう感情が訳わかんなくなって思わず笑っちゃった。」
「『武士』とはいえ、今まで普通に生きてきた自分に、初めて『成すべき事』というものが見つかった喜び」

この時点からの役所広司が、もう最後まで楽しそうな事!
もちろん「こいつを生かしておくと世の中がダメになる」という正義感もあると思うけど、それじゃあ当たり前過ぎてつまらない。「自分のアイデンティティを見つけた男が、それを成就するまでの闘い」としてみるともう全面的に応援せざるを得ないよ。
ラストの台詞「武士なんて大変だ」みたいなニュアンスの事は、もう言葉通りの意味なんて一つもないもんね。「やりきったぞ!ざまあみろ!」くらいの了見を感じました。
だから「ダークナイト」っぽいなあと思ったりもしましたよ。ジョーカーとバットマン稲垣吾郎役所広司、2人の狂人の対決。アイデンティティのぶつけ合い。それがこの40分強のアクションシーンと相まって見事に昇華されてました。

正義とか悪とかいう話より、なにかをやりきった男の話っていう方が好きなんですよ。
この映画、そう見えたから大満足。贅沢な時間を過ごさせて頂きました。

【おまけ】
実際に販売している両手使いの剣。なんでも斬るぞ!親父さんのしてやったり顔も併せてどうぞ!