「ダークナイト ライジング」

日々twitterなぞやっていると、映画のネタバレとなるようなツイートを散見しますなあ。ボクはあまりネタバレを気にしないのですが(とは言え「アーティスト」の「あるギミック」を普通に呟いてる人を見かけてギョッとしたことありますが)、これは公開前から異様な熱気をTL上から感じていたのでなるべく早い段階で観といた方が良いだろうと思い、初日に観てまいりました。今回はこの「ダークナイト ライジング」の感想です。

【あらすじ】※シネマトゥデイより引用

ジョーカーがゴッサム・シティーを襲撃するものの、ダークナイトが死闘を繰り広げ彼を撃破してから8年後。再びゴッサム・シティの破壊をもくろむベイン(トム・ハーディ)が現われ……。

あらすじも普段と比べて明らかに短いのう...。

【予告編】


以下、壮絶にネタバレしながら感想です。





IMAX最高!
まあ、とりあえずコレに尽きますよ。この映画自体がそもそもIMAXで上映されるのを考慮して作られているからでしょうか、冒頭のド迫力シーンはケレン味たっぷりで素晴らしいです。いきなり登場するベインの「声」に惚れ惚れしつつ怒濤の如く展開されるアクションは、いよいよ「映画」が始まる...!という興奮をかき立ててくれます。
なにより全編に渡ってみんなカッコ良いですなあ!バットマンが登場した時、心の中で「待ってました!」と快哉を叫んでしまいましたし、彼が扱うマシンはどれも観客の脳みそを直撃するような機能美に溢れていました。ベインもキャットウーマンも素晴らしかったですよ。カッコ良さに関しては観客の誰にも有無を言わせない!くらいの気概を感じました。自分が子供の時これ観たら、この夏休みの間はずっとバットマンごっこしてるだろうなあ、と思ったり。
俳優陣も気合いが入っていたようで、クリスチャン・ベイルの演技はやっぱり良いんですよねえ。去年の「ファイター」で観て以来の作品だったもんで、あのクズお兄ちゃんもこんなに変わるんだなあ...と感慨深い気持ちで観てました。バットマン関係ないけど。たまにTumblrでこの画像が流れてきますけど、これ観る度ビックリしますよ。

バットマンを挟んで毎回変わり過ぎ!
中でも一番良かったのは、アルフレッドを演じるマイケル・ケインの好々爺っぷりですよ。アルフレッドが出る度泣けますよ。後半はもうアルフレッド目線で観ちゃいましたし。ぶっちゃけ、この映画の30%くらいはアルフレッドで持っていると思います。


IMAXでドカンと格別のカッコ良さ(&アルフレッド)を味わえたので、観終わって劇場出るともう満足感しか残らないんですよね。「やっぱり映画ってのは、これくらいやってくれないと!」なんつってね。「この夏観るならコレしか無いよ!」ってなくらい。しかしながらホントこの映画って不思議なもんで、このライジング最高!」っていう気持ちって12時間くらいしか持たないんですよ。色々と反芻しちゃいますから。映画の粗が段々とわかってきちゃう。というか、振り返ってみれば「粗」しか無いんじゃないか!?とも思えてきちゃうのです。


この感想は既に多くの方々の「ダークナイト ライジング」評や感想の後塵を拝していますし、何より「粗」を挙げ始めたら下手すりゃ「ヘルタースケルター」と同じくらい出てくる恐れもあるので、特に酷いと思った部分を2点だけ。


ベイン率いる「悪いやつら」が徒党を組んでゴッサムシティを孤島化するんですけど、孤島化すると必然的にゴッサムシティの「外」の世界(=アメリカ合衆国)が出てくるじゃないですか。バットマンの話で「外」の世界を描いて良かったんですかねえ...。ゴッサムシティの中だけで物語が展開されるからこそ「バットマン」て成立してたと思うんですよ。アメリカ軍が普通に出てきたら流石にアメリカ軍の方が強いでしょう。つか、こんなのどう考えたってアメリカ軍が楽に鎮圧できるレベルの小さい話ですよ。ただのチンピラの暴動じゃないですか。アメリカ軍なんて宇宙人と戦ったって勝ちますよ(映画の話です)。いくらなんでもバットマンの持ってるマシンくらいの兵器はアメリカ軍だって流石に持ってるでしょう!この辺りがどうしても頭の中で都合良く変換されなかった部分なんですよ。
話変わりますけど、映画の「ドラえもん」って宇宙から「鉄人兵団」が攻めてこようがアフリカに「犬の国」が発見されようが、絶対に「一般社会」が介入しないようプロットに工夫がされてるんですよね。箱庭の中の日常に非日常(ドラえもんひみつ道具)が乱入するから面白い。どんなにスゴい事が起こっても「一般社会」に一切影響を及ぼさない。バットマンゴッサムシティという「街」を守るヒーローだから光る。箱庭の中だからこそバットマンみたいな非日常な存在が活躍できる。でもその箱庭を出て「一般社会」を介入させると、じゃあそのバットマンの守りたかった「街」ってなんなのよ?つかバットマンってなんなんだよ?ってなると思うんですが...。


もう一点。やっぱりどうしても「核」の取り扱いの粗さは酷過ると言わざるを得ません。既に21世紀に入って10年以上も経っているというのに「核」に対して「でかい爆弾」以上の表現が出来ない監督なんてタダのバカだと思います。海の彼方に核爆弾ボカンと爆発させて終わりってねえ......そこから物語が始まるんだよバカヤロウ!!ゴッサムシティが無事なら他は良いのかい!なまじ前述の「外の世界」を描いちゃってるから余計に気になる。キノコ雲を「全てが無事片付いた象徴」として描けちゃう能天気っぷりを見せつけながら、片方で「正義とは?悪とは?」とか、悪い冗談にしか聴こえません。うすうす気付いてはいたけどノーラン、おまえもか!!!
クリストファー・ノーラン監督って「奇才」なんて言われてたりしますけど、ボクの中では普通の監督でして。広げる風呂敷はいつもデカいけど畳み方を知らない、みたいな。そこが魅力だと思ってますけどね。彼の作品ってケレン味だけがいつも素晴らしくて、ホントは哲学的な部分なんて突っつきゃボロがすぐ出るほど脆いのに、この脆さを一切認めない雰囲気がありますよね。なんかソコは絶対いじっちゃいけない雰囲気と言うか。この「拙さ」が「可愛げ」に変えられないのがいつも残念に思うところ。どうやら「マイケル・ベイ」とか「ポール・バーホーべン」みたいになれるような性格じゃなさそうなのは確かで、彼がこの先「スピルバーグ」になるか、「リュック・ベッソン」とか「M・ナイト・シャマラン」とか「ウォシャウスキー兄弟」とかになるか、は次回作にかかってそうな雰囲気だと感じましたよ。


バットマンの再実写化」という企画は、ノーラン監督を常に逆境に立たせていたと思います。ティム・バートンなんていうキチガイ天才が生み出したあの世界観を再構築しなければならない。前作「ダークナイト」は、逆境にたった監督の熱意を全て詰めた結果、世界中のバットマニアたちに快哉を叫ばせる名シーンを生みました。
「ジョーカーが全ての計画を成功させ、パトカーで脱出し、窓から犬のように首を出して風を楽しんでいる」という「勝利」のシーン。
果たして「ダークナイト」は映画史に残る傑作となりました。そして常に巨大な幻影と戦い続けなければならないノーラン監督が、最後に戦わざるを得なくなってしまったのが、皮肉な事に前作のあの名シーンだったと思うんですよ。前作が「正義と悪の二面性」という哲学的なテーマを中心に扱ったのに対し、今回は「ノーラン版バットマンサーガを終結させる」という事に終始してしまった結果、風呂敷の畳み方がヘタクソなノーラン故にハッキリとスケールダウンしたと思います。
しかしながら今作は「なんとかしてあのシーンを超えるような部分を一つでも残したい!」というノーラン監督の気迫を感じました。その気迫が映画全体の勢いとして昇華されていたからこそ、話の辻褄が合わなくても少しも飽きずに観る事が出来たんだと思います。


観賞後、12時間も超えてくるとだいたい悪口しか浮かびませんが、たぶん観直したらまた12時間くらいは「最高!」っていう映画だと思います。それはまるで12時間ごとにマスクから薬を投与しないと死んじゃうベインみたいなもんで。間違いなく観た方が良いのは確か!観ている時間はとにかく楽しいんですから!





【おまけ】
ここまで書いといてなんですが、ボクが好きなのはもっとバカバカしいバットマンなんですよ。パンチしたら「POW!!」とか字幕で出ちゃうやつ。ボクが「バットマン」を一番最初に観たのは小6の時。冬休みにティム・バートン監督が撮った「バットマン」なる映画が公開されるってんで、レンタルビデオで借りた「バットマンのすべて」っていう作品から。竹中直人がナレーションやってて、言ってる事がほぼ全部デタラメっていう。バットマンってこういう「コント」みたいなヒーローだと思ったのが一番最初です。ニコニコ動画に当時のビデオがあったよ。ノーラン版しか知らない人はビックリするでしょう。
D
これ観てから、バートン版の「バットマン」観たのだ。あまりのカッコ良さにひっくり返ったよ。当時はとんねるずのみなさんのおかげですバットマンの1シーンとプリンスのバットダンス(下の動画参照)を完コピしたコントも放送されたりで恵まれてました。

これを完コピしてたんだから当時はやっぱり金があった&とんねるずも若かったんだなあ。


【おまけ その2】
レゴでタンブラー作ってみた。


これを実際に作った人はレゴで本当に商品化してもらいたいらしいです。
web上で公開していて、一万人の署名が集まればレゴの商品化の会議に上がるそうな。
あの「はやぶさ」もこれで商品になった事だし、欲しい方は投票してみると良いかも!
【LEGO CUUSOO - Motorized Tumbler 】  


【おまけ その3】
トム・ハーディがチンコ出してるTVドラマも貼ろうかと思いましたが自粛します。




※本文から漏れた感想

  • ノーラン監督が原作を大事にしているという事はよくわかりました。
  • 真面目なんだかふざけてんのかよくわからんのですよ。ウェインの背骨の治し方とか。
  • あんなに物語を引っ張ってきたベインもアレで終わり?っていう。
  • アン・ハサウェイのケツが良いよ!って事だったけど、ボク自身この映画の前に「クレイジーホース・パリ」でケツばっかり観ちゃってたのでなんとも。
  • 警官と暴徒が対峙するシーン。ガン上がりしたんだけど直後の乱闘シーンでずっこけてしもうた。なんなんですかあのわちゃわちゃしたモブシーンの撮り方は!30年以上前に戻ったような感じですよ。こんなじゃん!















以上、「ダークナイト ライジング」の感想でした。