「ドライヴ」

こいつは非常に困った映画ですよ。ぼかあ基本的にどんな映画でも楽しめるし、ここ最近はアンダーグラウンドな映画(え?コレ映画なの?事故なの?みたいなモノ)ばっかり観てたので「映画」そのものに対するハードルもムチャクチャ下がってたんですよ。つか、一カ所でも「!」と思えば褒めテンションですよ。この「ドライヴ」だって安心のクオリティだろう!と思って観に行ったんですけどねえ...。


【あらすじ】※シネマトゥデイより引用

天才的なドライブテクを武器に、昼は映画のカースタント、夜は強盗逃し専門の運転手をしているドライバー(ライアン・ゴズリング)。ドライバーはアイリーン(キャリー・マリガン)にひそかに思いを寄せていたが、彼女には服役中の夫スタンダード(オスカー・アイザック)がいた。ある日、服役から戻ってきたスタンダードがガレージで血まみれで倒れている姿をドライバーが目撃し……。

【予告編】


何が困ったってこの映画、すごぶる評判が良い。ファンが多い映画なんですよ。で、今から書く事なんてぶっちゃけこの映画が大好きな皆さんには不快にさせるような事しか無いんです。ですので「ドライヴ最高!」っていう方、この先読む事をお薦めしません。もしこの先を読んじゃったら不快にさせちゃって申し訳ありません。内容は変えないけど。「結果、何が言いたいんだよ!」くらいの興味を持って頂けたら一気に下の行まで飛ばしてもらえれば幸いです。ただ、みんな褒めてるし、カンヌも褒めてるしで、ボクみたいな何でも無い人間がごにょごにょ書いたところで世間のこの映画に対する「素晴らしい!」という評価は変わりませんよ!あ、ロン・パールマンの顔面は良かったですよ!


と言う事で、以下ネタバレ全開で感想。











びっくりするほどつまらなかったス。
つまらん...というか1シーンも「面白い!」と思ったシーンが無かったんですよ。
とにかくダサい。
「80年代の映画っぽい」なんて評判を耳にしましたが、観た限りだと丁度10年前、2000年代が始まった前後に「おしゃれ〜!」とか「斬新な映像!」と言われていたような映画の雰囲気でした。今観ると「絶妙に古臭くて恥ずかしくなる」感じ。それが良い味とかじゃなくて、ただ古臭いっていう。
ロン・パールマンが乗ってる車を罠にハメて突き落とそうと、追い込んだ先がピタッと崖の上!】みたいなシーン見せといて「スタイリッシュでござい」と言われましてもね。「いやいや充分ベタですよ。このあと車ごと突き落とすんでしょ?」としか思えないのです。


話そのものは「シェーン」とか「遥かなる山の呼び声」のような昔からある内容なのでつまらないはずが無いんですけどねえ。はっきり伝わったテーマみたいなのは「バカは罪だ」くらいの話ですよ。あの主人公、一人で全部かき回してんだよね。アイツは何で物事を悪い方悪い方に進めようとするんだろう?惚れた女とその旦那の為に銀行強盗をするとか、話を複雑にしてばっかりなんですよ。で、アイツに関わった人たちが全員ヒドい目に遭うっていう。なんかみんな知り合いだったし、話し合いで「手打ち」って事が成立しそうな程度の話なんですけどね。アイツ「自分では手を汚さない」って言う割りに真っ先に人を殺したりしてて、なんかこの人「頭良さそうな雰囲気」なだけで、しゃべってない時間はホントになんも考えてない短絡的な男のように見えました。無口だっていう設定だったけど、一番言っちゃいけないバッドタイミングで嫁さんにダンナとの銀行強盗ばらしたりしてたしね。やっぱバカは罪ですよ。いっぱい人死んじゃったもの。


細かな設定もムチャクチャでした。覆面被ってロン・パールマンを殺しにいくけど、アレって覆面をかぶる意味が無いよね。覆面被るなら洋服も替えるべきじゃないの。つか、あのシーンはむしろ覆面被ってちゃいけない気がしたんですけど。復讐のシーンなんだし。海に突き落とすだけじゃなくてつまようじで眼を刺すとかどうです?......って、つまようじドコ行ったんだよ!?あの設定使わないのかよ!?とかね。いや、そもそもおやっさんとアイツの関係性も弱いぞ。昔から世話になってる感も無いしなあ...。あと奥さんとの恋愛の描き方もなあ...「見つめる」という行為が果たしてアレだけで効果的だったかどうか妖しいもんです。銀行強盗なんかしないでアイツが自分の「好きだ」という気持ちを抑えて、奥さんと子ども、旦那さんもろとも自慢のドライビングテクニックで逃がしてやった方がよっぽど哀しい「失恋映画」としてグッとくるってもんですよ。アイツと奥さん、お互いしゃべらなくてね。逃げてる最中バックミラー越しに目と目が合うとかね。


と、こんなもんはまだ「気になった」レベルの話なんですよ。
「あ、この映画ダメだ」と観ながらにして思っちゃったのは、全てがどっかで観た事あるような映像だったんですよ。
で、一番残念だったのはこの「どっかで観た事あるような映像」ってのが、どっかで観た事ある映像の元ネタよりもクオリティが低かった事です。


例えば冒頭の客を逃がすシーンだったらゲームのGTAの方がもっとハラハラするし、ハンマーを使って復讐をするのであればオールドボーイの前歯バキバキシーン以上の拷問を観たかったんですけどね。カーチェイスも今放送してるリメイクのナイトライダーの方がすげえ事してましたよ。愛するものへの「献身」って事だったら小説の容疑者Xの献身とかトッド・ブラウニング「知られぬ人」の方が面白いし。オシャレ感を言ったらtumblrから流れてくる画像や映像の方が綺麗ですよ。なによりこのストーリーだったら素直に「シェーン」とか「遥かなる山の呼び声」の方が良いと思いました。


こういう「〜の方が良かった。」なんて文は感想としてダメって事はわかってますよ。でもこの映画はどう見てもサンプリング映画なんですもの。どうしたって元ネタとか似たような映画と比べてしまいますよ。後出しなのに元ネタや似たような映画よりも面白くないってどういう事なんですかね。ボクはサンプリング映画を否定するつもりはサラサラ無くて、むしろあらゆる映像表現をやりつくされた現代は サンプリングにこそ表現での活路があると思ってるんですがこの映画はそのセンスがなかったのか、単に技術が無かったのか、若しくはボクと了見が違ったのかとにかく酷かった。悪いサンプリングの映画だと思います。

悪いサンプリング、元ネタよりもクオリティが低いのに、あたかも「斬新!」とか「観た事無い表現だ!」みたいな評価を受けてるこの映画が、昔のアニメ等をパクって使って「新しいアートだよ!」みたいな作品を作り続ける某現代美術家の姿勢とダブってしまい反吐が出ました。「細かいツッコミはあるんだけど本質のココが良い!」の「本質のココ」の部分が今回は見つけられませんでしたよ。車にこだわりがあるでも無し、アクションにこだわりがあるでも無し。この監督、なにを「カッコいい!」と思って撮ってたんだろう...そんな思いでいっぱいです。
「そういう事をしないのがこの監督の演出」とか「みんなが突っ込むところは敢えて描かないんですよ〜」「わざとオフビートで作ってますから」とか言われるのであれば、そういうセンスは嫌いなので、「あ、じゃあクソですね。」としか言えません。この映画をカッコいいと言っている方がいて、一方ボクはカッコ悪い!と思ってしまったので、この映画に関してはもはやこれ以上相容れないと思う。でも一番不思議だなあと思ったのは、みんなだって他にもいっぱいいろんな映画観てるだろうに何でこの映画を「カッコいい!」って言ってるのかがわからんのです。ホントにカッコよかったスかね?コレ。


この映画観終わってぼんやりと「フルメタル・ジャケット」のハートマン軍曹の言葉を思い出しました。
「まるで現代アートのような醜さだ!!」








【おまけ】
Grand Theft Auto IV - Amazing Taxi Driver

Oldboy Tooth Torture Scene

Best of KNIGHT RIDER