「LOOPER/ルーパー」


新年開けてからずっと風邪が治りません!今年はちゃんと書くと言いながらすっかりこのザマでございます。
今年も何卒宜しくお願いいたします。


2013年、映画館で一番最初に観た映画は「LOOPER」...を観に行った際に強制的に観せられた「わたしをバルトに連れて行って」でした。

まず何から突っ込んで良いのやら。色々と不穏な要素を抱えている作品でしたね。この感想は置いといて「LOOPER」の感想を書きます。




【あらすじ】※シネマトゥデイより引用

未来からタイムマシンで送られてきた標的を消す、“ルーパー”と呼ばれる殺し屋のジョー(ジョセフ・ゴードン=レヴィット)。ある日、ジョーのもとへ送られてきたのは、何と30年後の自分(ブルース・ウィリス)だった。ジョーは、未来の自分の殺害をためらい逃がしてしまうが、その後未来の自分から、やって来た理由を明かされ……。

【予告編】

以下、ゴリゴリのネタバレ感想です。
つか、書きたいところはむしろそこなんで...。
未見の方はご覧頂いてから読む事を絶対オススメします。







去年自分が挙げたワースト映画の傾向でわかった事ですが、ワタシ、自分勝手な奴が主人公の話って大嫌いなんですよ。で、この作品も結局のところ、ほぼ全篇「てめえのエゴ」のみで進むストーリーですからねえ...。今ひとつ乗れず。あと「SF」ってのもそんなに好きな分野では無いのです。ドラえもん星新一くらいでギリ。SFに関しては中学生レベルの理解度しかありません。状況の把握とか辻褄とか色々と考え過ぎちゃうせいで、考えている時間の分だけ「止まっちゃう」というか、話についていけなくなってしまうからで。
要は、今作を観てる間はあんまり好きではありませんでしたって事です。しかしラスト、主人公の若いジョーが選んだ行動一つでこの映画に対するワタシの評価が綺麗に裏返りました。いや、なかなか面白かったですよ!


明らかに治安悪そう&貧乏人多そうな街が舞台のこの話。この街は良く出来てましたね。カッチリと「ザ・未来!」なんて細部まで作り込まないという事が、かえって「成長しきった未来の地方都市」という雰囲気を効果的に出していたと思います。ディストピアまでいかない、程良く「くたびれた街」。また、この街を脱出する方法がだいたい決まって「列車」ってのも良いですねえ!より「地方感」を感じさせてくれました。何となく山梨県〜長野県辺りの中央本線沿線の街を思い描いちゃいましたもの。


出演者の皆さんも素晴らしかったと思います。ジョセフ・ゴードン=レヴィットって人はなんでもできる器用な俳優さんですね。それに後半の重要キャラクターとなるシド。よくもまあ、あんな子を見つけてきましたわ。可愛いような...不細工なような...。彼がロボットだって訳じゃないけど、ちょうど不気味の谷」の縁にいるようなお顔立ちの子でした。あとイヤにポール・ダノ面してる奴がいると思ったらホントにポール・ダノでしたね。役柄も相変わらずポール・ダノ役。ルビー・スパークス」は未見なんですが、観たら彼のイメージも変わるもんなんですかね、ポール・ダノ


役者の評価の流れと併せて、懸念されていた「SF苦手」問題ですが、画期的な解決策を見せて頂きましたよ。前述した通り「SF」ってストーリーを理解するまでにワタシ自身が色々と考えちゃって、その間、話の流れが止まっちゃう。そんなワタシの悩みをはっきりと解決してくれるキャスティング、そう!ブルース・ウィリス!!
ブルース・ウィリス演じるおっさんのジョーが若いジョーと対峙するダイナーのシーン。(このシーン自体も主人公である本人同士がお互いをまるで鏡を見るようにシンメトリーになっている、という素晴らしいシーンですが)おっさんのジョーがうんざり顔でハッキリと「タイムトラベルの話はしたくない」って言っちゃってる!そればかりか若いジョー(っていうか、もはやワタシ)がしつこく聴いたら「いんだよ 細けえ事は!」と「マーダーライセンス牙&ブラックエンジェルズ」の松田を彷彿させる一喝!斬新!!
そりゃブルース・ウィリスからそんな事言われちゃったらもう、この辺りの話はどうでも良いですよ。SFファンの方々だったらたぶんもっと詳しくこの話がどういう事かわかるでしょうが、ワタシはこれ以上良いですわ。まるで客の粗捜しを黙らせる為にブルース・ウィリスがこの役に選ばれたんじゃないだろか?と勘ぐりたくなる程、絶妙なキャスティングでしたよ、少なくともワタシには。


なにより一番グッときたのが、これまた前述の「クライマックスに於ける若いジョーの選択」ですよ。

若いジョーもおっさんのジョーも基本的にはクズなんですよね。ここでいう「クズ」ってのいうのは「てめえの事しか考えていない奴=エゴイスト」っていう意味で。「死にたくないから(未来の)自分を殺す」っていう若いジョーもエゴイストであれば、「愛する女を救う為、子供を殺す」っていうおっさんのジョーも実はすごいエゴイスト。
ただ、若いジョーの方はサラとシドの親子と合う事でちょっとずつ気付き始めます。やったらやり返される、暴力の連鎖。終わりの無い円環構造。そして、若いジョーがぼんやりと気付き始めた事が、まさにクライマックスでハッキリと彼自身に見えちゃったんですよ。巨大な「人間の業のリング」が。


このリングを断ち切れば世界は変わる。

しかしその選択は「正しさ」か?「生存」か?という極限的な状況に置かれた者、即ち「ヒーロー」の倫理。


後はご覧になった通り、果たして若いジョーは「クズ」から「ヒーロー」となるのでした。
この部分が全くブレずにこの映画のこの一点に全て集約されている、というのが大変素晴らしい脚本だと思いました。ブサイクな映画なんて「クライマックス」と「ヒーローになる瞬間」と「オチ」が、ここまで綺麗に重ならないもんね。


今年一発目に観るにはちょうど良い面白い作品でございました。全体的にざらっとした質感の雰囲気も良かったです。有り体の言葉で言えばハードボイルドタッチと申しましょうか。恐らく映画ファンならば「このシーンはあの映画のアレ!」とか、わかるんでしょうがワタシにはわかりません。そんなの知らなくても充分に楽しめます。お時間が合えば是非!



【おまけ】
シンメトリー!鏡!と言えばこのコント。


「The PEN story」
60,000枚の写真で綴る「人の一生」のお話。


タイムスリップものとして。

「1910年から見た2000年の世界」


仮に30年くらいタイムスリップしたら東京、原宿はこんな感じ。
「1980年の東京の若者たち」


20年くらいでもこんな感じ。うわー...。
「Tokyo-1990 / 20年前の東京 (2010 Exhibition Video) 」



※本文から漏れた感想

  • テレキネティック(=TK)っていう超能力が、チンピラが使う分には居酒屋でおしぼり使ってチンコ作ったりするレベルの芸にまで堕ちぶれてるのがいい感じの未来感ですね。
  • 淡々と仕事をこなす日々のシーンがリズミカルで良い、かと思いきや若いジョーがバイクに乗ってるシーンがちょっとダサいとかけっこういびつな映画ではある。
  • いくらなんでもジョセフ・ゴードン=レヴィットからブルース・ウィリスに年月が経つシーンは無いだろ!モーフィング下手か!何個かコマが足りない感じだぞ!
  • 「うにょうにょした雲」について書く気力は無い...。

2012年の映画について

今年最後のブログは毎年恒例、その年に観た映画の全ランキングと雑感です。毎年「いやあ、今年は映画観なかったなあ!」とか良いつつ、数えてみたら去年より10本くらい多いんですよね。しかも2回観に行った映画とかもあるし。なんだかんだで映画館に通っているようです。


2012年に映画館で観た新作映画全64本のランキング。「幕末太陽傳」「仁義なき戦い 第一部」「仁義なき戦い 広島死闘篇」「ピラニア3D」「スターウォーズ エピソード1 3D」「異人たちとの夏」「カリフォルニアドールズ」は、映画館で観ましたが旧作の為、除外してあります。



1.加地等がいた ぼくの歌を聴いとくれ
2.苦役列車
3.巨神兵東京に現わる
4.アベンジャーズ
5.隣る人
6.エクスペンダブルズ2
7.愛のゆくえ(仮)
8.スカイフォール
9.アウトレイジビヨンド
10.この空の花


11.エルサント(パイロット版)
12.わたしの釜ヶ崎
13.桐島、部活やめるってよ
14. 3.11明日
15.サニー
16.ザ・レイド
17.高地戦
18.アルゴ
19.ザ・マペッツ
20.クレイジーホース・パリ


21.バトルシップ
22.アーティスト
23.僕は人を殺しました
24.その夜の侍
25.SR サイタマノラッパー3
26.Beyond the ONEDAY
27.コーマン帝国
28.月光ノ仮面
29.グレート・ラビット
30.ももへの手紙


31.ダークナイトライジン
32.ディクテーター
33.サンタクロースをつかまえて
34.テルマエ・ロマエ
35.悪の教典
36.今日、恋をはじめます
37.のぼうの城
38.わたしたちの宣戦布告
39.あなたへ
40.ドラゴン・タトゥーの女


41.DOCUMENTARY OF AKB48
42.ヱヴァンゲリオン新劇場版Q
43.黄金を抱いて飛べ
44.聴こえてる、ふりをしただけ
45.サイドバイサイド
46.フェイシング・アリ
47.ゾンビ・アス
48.The GREY 凍える太陽
49.裏切りのサーカス
50.星の旅人たち

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51.美が私たちの決断をいっそう強めたのだろう/足立正生
52.CUT
53.先生を流産させる会
54.それでも、愛してる(ビーバー)
55.へんげ
56.アナザー
57.おおかみこどもの雨と雪
58.アメイジングスパイダーマン
59.サマーセール
60.私を生きる


61.ヘルタースケルター
62.ヒミズ
63.ドライヴ
64.レンタネコ


例年同様、点線より上の作品は「楽しめた」とか「嫌いじゃない」っていう作品で、それより下の作品は「つまらない」もしくは「嫌い」という作品です。今年は点線の位置が低いので「ハズレ」の作品にあまり出会ってないみたいですわ。こうして見ると、だいたい「自分勝手な奴が主人公」の映画ってのがランクが低いですね。自分の好みがようやくわかったような。あと、今年のランキングの特徴としては、なぜか「評判の良い映画を観て爆死!」が多かったです。毎年、他の皆さんの映画ランキングとそんなにズレないんですけどねえ...。こういう場合、自分の審美眼の方を疑うんでたぶん世の中の評価の方が正しいと思います。


さて、2012年はあの震災から1年経った年だった訳ですが、公開された邦画(つか、観た作品)を通してみると、去年の今頃のブログにも書いた通り、やっぱり震災の影響を大なり小なり受けた作品が数多く作られましたねえ。「この空の花」「ヒミズ」「3.11明日」「サンタクロースをつかまえて」「あなたへ」等々。「ヱヴァQ」なんかもそうなのかな?「震災」を正面から取り扱ったり、ニュアンスを感じさせたりした作品。震災のおかげで公開や製作が遅れちゃったってのもありました。「アウトレイジビヨンド」とか「のぼうの城」とか。
まあ、ここまでは予想できましたが、そういった邦画がいったい何をテーマにしたかったのか、何を観客に伝えたかったのかまではこうやって振り返るまでわかりませんでしたよ。今年の邦画って主に「普通の生活を望む」っていう事を取り扱った映画が多かったんですね。「ヒミズ」「サンタクロースをつかまえて」はモロにそうだし、「愛のゆくえ(仮)」「その夜の侍」なんかも「普通の生活を望む」作品。ああいった巨大なアクシデントを体験した後、「普通である」っていう事がいかに難しくて尊い事なのか、って事を思い知らされた一年でした。


映画館の話をすると、今年もボコボコと閉館してしまった事が残念でなりません。したコメでお世話になった上野東急。ピンク映画の新宿国際名画座、新宿国際劇場。ある意味「ホーム」と言っても過言ではないシアターN渋谷。フィルム上映の王子シネマ。浅草に至っては浅草名画座、浅草新劇場、浅草中映劇場、浅草世界館、浅草シネマの5館が全滅という哀しい事態に。来年もまたドンドンと閉館してしまうみたいだし、一概に「シネコンが悪い!」って訳でも無さそうだし、困ったもんです。とりあえず今年は浅草の名画座で「仁義なき戦い 第一部」と「異人たちとの夏」を観る、という一生の思い出を作りました。ボクはどちらかというと映画よりも映画館の方が好きなんですよ!この閉館ラッシュの中、新宿に新しい映画館シネマカリテがオープンした事だし、この嫌な流れをなんとか食い止めたいところ。



2012年の映画をもうちょっと振り返ると「俳優や他業種の人が監督する映画」って多かったっすね。「アウトレイジビヨンド(北野武)」「アルゴ(ベン・アフレック)」「その夜の侍(劇団「THE SHAMPOO HAT」の赤堀雅秋)」「月光ノ仮面板尾創路)」「わたしたちの宣戦布告(ヴァレリー・ドンゼッリ)」「星の旅人たち(エミリオ・エステベス)」「それでも、愛してる(ジョディ・フォスター)」など。毎年多いのかもしれないけど、今年は「アルゴ」や「アウトレイジビヨンド」など出来の良い作品が多いため、特に目立ってた気がします。
目立ってたと言えば、今年も色々な映画に出てる俳優さんがいっぱいいましたよ。田口トモロウ、浅野忠信光石研西田敏行など。何回光石研の顔を見かけた事か!そういや、市村正親は「テルマエロマエ」と「のぼうの城」で、ほぼ同じような役を演じてましたね。どっちも風呂に入るし。あと、山田孝之も「その夜の侍」と「悪の教典」でほぼ同じような役を演じてました。ある意味、俳優被り問題。


数年前から映画ファンの中で猛威を振るっていた「テレビ局製作の映画云々」って問題はすっかり落ち着いたような気がします。ボクはテレビ局製作の映画に関しては「観たきゃ観るし、嫌なら観ない」としているので、テレビ局が映画を作るって事には腹を立てた覚えがないんですよ。映画館に人が集まるのでむしろもっとやれ!と。特に今年は「桐島、部活やめるってよ」がありますもんね。「桐島、〜」が数多くの映画ファンの心を掴んだおかげで、テレビ局製作の映画が批判される事が一気に減ったのかもしれませんなあ。


毎年、定点観測している「twitterにおける映画宣伝」に関しては、はっきりと「フォロワー5000人まで増やします!」と宣言していたエクスペンダブルズ2アカウントとか頑張ってましたね。あと「僕は人を殺しました」アカウントが手を変え品を変え、アカウントを続々変えて宣伝活動をしていたのが印象的でした。映画館では「浅草世界館」アカウントのオネエサンや、「新橋文化劇場」のアカウントがかなり個性的なツイートをしてました。ただ、宣伝するだけでもダメだね。ツイートの先にキャラクターというか、「その人自身」が見えると親近感がわきますね。ちなみにボクは映画アカウントから直接リプライで「観てください!」って言われた映画は観るようにしてます。で、だいたいそういう映画って面白かったです。


こんな感じで、2012年も終わり。今年は個人的に「映画」の仕事に携わるようになってしまったのでブログが全く書けなくなってしまいました。来年は積極的に書こうと思った次第。ブログ書いてた方が「映画」の仕事をするよりも役に立ってるような気がヒシヒシと感じてしまったんですよね。先陣で戦うよりも後方支援の方が向いている。と、いう事で、来年のテーマは「ガンダムよりもガンタンク」という事で頑張っていきたいと思いますです、はい。



【おまけ】
来年は、まずこれが楽しみである。


去年の全ランキングはコチラ。
2011年の映画について

2012年個人的映画ランキングベスト10

今年もいろんな映画が公開されましたねえ。
2012年に観た映画の中で面白かった映画は下記の通りです。


【第10位】「この空の花」

上映中は完全に亜空間に引きずり込まれたような感覚に陥りました。御大でありながらフレッシュ。他のどの監督の作品よりも一番若々しい作風だったのも印象的でした。


【第9位】「アウトレイジビヨンド」

ヤクザ映画の新しい秩序と申しましょうか、まさか2000年代も10年以上経っていながらこんなリズムの良い任侠ものを見られるとは思いませんでした。


【第8位】「スカイフォール

全篇に渡ってダレる部分が無かったです。本寸法のエンターテイメント。あと、やっぱり悪役は主人公よりも魅力的の方が良い映画になりますね。


【第7位】「愛のゆくえ(仮)」

映画観てちょっと経ちましたが、今でも「あの2人」の事を不意に思い出したりします。何とも言えないモヤモヤが、こう言っちゃなんだけど「心地良い」。


【第6位】「エクスペンダブルズ2

子供の頃に(ボク自身の情操教育で)お世話になった、ある意味「わが師たち」が一同に会した訳ですから当然ランクインしますよ。アヴァンタイトルからガン上がり。スタローン、シュワ、ブルース・ウィリス3人のジェットストリームアタックa.k.a.魁道中)に大興奮。あと、チャックノリス御大にマキシマムリスペクト。


【第5位】「隣る人」

2012年時点に於ける、日本のドキュメンタリー映画の極北。残酷な環境と、大人達の優しさと。あと、「むっちゃん」のパーソナリティと。


【第4位】「アベンジャーズ

うん、たしかに「これが映画」だったよ。アクの強い主人公キャラ達を、よくもまああそこまで存分に魅力を引き出してくれましたよ。あと、ロキもまた魅力的だったからこそここまで面白くなったんだと思います。

  
【第3位】「巨神兵東京に現わる

震災後に敢えて「破壊」をテーマに映画を撮ったっていう心意気が良かったです。その上、「伝統の継承」もド真ん中のテーマとして存在している。2つが見事に結晶となった作品だったと思います。やっぱり特撮って良いねえ。


【第2位】「苦役列車

生きるのに不器用な人にシンパシーを感じてしまうのです。そういった点でこの映画は素晴らしかった。あと、公開初日に満員のバルト9で観たんですが、上映後にカップルが虚を突かれたような顔をしてたのが印象的でした。ポップな作風に見える宣伝してたもんねえ。


【第1位】「加地等がいた 僕の歌を聴いとくれ」

色々と熟慮した結果、今年観た映画の中で一番良かったのは今作です。「かぢひとし」という人間を知るのが遅過ぎました。既にこの世にいないんだもの。でも彼の歌によって新たな出会いがあった、そんな作品です。


と、いう事で今年の結果はこんな感じ。

第1位:「加地等がいた 僕の歌を聴いとくれ」
第2位:「苦役列車
第3位:「巨神兵東京に現わる
第4位:「アベンジャーズ
第5位:「隣る人」
第6位:「エクスペンダブルズ2
第7位:「愛のゆくえ(仮)」
第8位:「スカイフォール
第9位:「アウトレイジビヨンド」
第10位:「この空の花」

普段は洋画、邦画と分けて考えませんが、今年に関していえば洋画には徹底したエンターテイメント、大きな世界観を。邦画には人間の心理というミニマムな世界観を求めていたのかもしれません。


ちなみに今年のワーストは「レンタネコ」でした。
ひょっとしたら今まで観た映画の中でも最悪の主人公だったかも。でもまあ、ボクの肌が合わなかっただけで、この映画が好きって人がいるかもしれませんから、まあこれ以上は。
実はワーストはこの映画か「ヒミズ」か「ドライヴ」の3作品のどれかでスゴい迷ったんだけどね。今年は世間の評判の良い映画を観に行って爆死するっていう事が多かった、ってのも一つの思い出。




【おまけ】
映画「加地等がいた 僕の歌をきいとくれ」の冒頭にも使用された映像。

「君は加地等を知っているかい?」


去年のベスト10はコチラ。
2011年個人的映画ランキングベスト

2012年 個人的映画ランキング各賞【後編】

昨日に引き続きまして映画ランキング各賞の発表です。

【音楽賞】
1位:「加地等がいた 僕の歌を聴いとくれ」より「これで終わりにしたい」

2位:「愛のゆくえ(仮)」より「グッド・バイ・マイ・ラブ

3位:「サニー 永遠の仲間たち」より「sunny」

4位:「スカイフォール」より「Skyfall」

5位:「BEYOND THE ONEDAY」より「ONE DAY」

1位の映画は他にも名曲揃いなんだけど、特にボクのようなクズには身につまされるような曲で、つい泣けてしまいます。2位はワンアイデアの脚本にこの曲を見出す事ができたという時点で大成功でしょう。アレンジも素晴らしかったです。3位はイントロ聴いただけであのシーンが蘇るというインパクトから。4位は老舗ならではの味、って感じでした。もう、ほぼ演歌ですね。もちろん大好きです。5位は、韓流の曲って全くなじみが無いんだけどこの曲はスゴく良かったです。ワクワク感がありました。次点では「桐島〜」の「ローエングリン』の一曲「エルザの大聖堂への行列」、「悪の教典」の「マック・ザ・ナイフ」なんか印象に残りました。



美術賞

1位:「クレイジーホース・パリ」
2位:「苦役列車
3位:「サニー 永遠の仲間たち」
4位:「月光ノ仮面
5位:「この空の花」

1位はセクシーで綺麗で見とれる程の神々しさがありました。実際に行ってみたいと思った点もプラス。2位〜4位は、如何に当時の世界を再現できるかという点に於いて素晴らしい出来だったと思います。奇しくも2位と3位って同時期の話なんだよね。2位では「コブラ」観に行こうとしてるし、3位では「ロッキー4」の看板がモロに出るし。5位は唯一無二の世界観。次点は「テルマエロマエ」と「のぼうの城」。スゴく良かったですよ。



脚本賞

1位:「苦役列車
2位:「高地戦」
3位:「アルゴ」
4位:「愛のゆくえ(仮)」
5位:「その夜の侍」

1位は原作に無いキャラと映画的着地点を違和感無く取り入れられている点が素晴らしかったです。2位、3位は「ええ!!!も〜!!!」っていう感嘆符の連続でした。4位、5位は余韻が良かったです。あの後いったいどうするんだろう...と、観客に観賞後の余白をまるまる預けているのも信頼できる作りでした。次点は「聴こえてる、ふりをしただけ」と「この空の花」。



【監督賞】

1位:刀川和也「隣る人」
2位:大林宣彦「この空の花」
3位:田中要次 (BoBA) 「3.11 明日」より「蝶蜻蛉は虹の夢を見る」
4位:ベン・アフレック「アルゴ」
5位:板尾創路月光ノ仮面

とにかく根気と手間が尋常じゃなかったであろう作品を作り上げた刀川和也監督が1位。8年も通ったってんだからスゴい。2位は唯一無二。なんか次元が違う人のような感じがします。今回の映画を観てよりそう思いました。3位は、あの震災についてボクが思ってた後ろ向きな考えと同じ事をよく言ってくれた!!っていう感動から。ネタバレになるので言えませんが、機会があれば是非観て頂きたい!4位はおかず特盛のサービス精神の良さから。5位は、正直この作品のオチの方が「悪の教典」よりも面白かったので。次点は
「BEYOND THE ONEDAY」の大道省一監督です。ボクが観たかった「概念としての『アイドル映画』」を直球で見せてもらいました。AKB48のドキュメンタリーを観てる人にも是非観てもらいたい作品です。



【ベスト・オブ・オープニング賞】

1位:「スカイフォール
2位:「フェイシング・アリ
3位:「ドラゴン・タトゥーの女
4位:「ヱヴァンゲリヲン新劇場版:Q
5位:「サニー 永遠の仲間たち」

オープニングのテンションがエンディングまで下がらないっていう希有な作品を1位にしました。2位はとにかくカッコ良かった。アリと戦ったリビングレジェンド達がジャズに載せてシャドー!カッコいいのは3位も同じくらいでしたね。4位は最初の6分間は面白かったです。5位は、なんかスゴく良い映画が始まりそう...と予感させるオープニングでした。次点は「巨神兵東京に現わる」のジブリのロゴと「アルゴ」の1980年代のワーナーロゴ。



【ベスト・オブ・エンドロール賞】

近くに美味えシャワルマ屋があるっていうじゃねえか。

1位:「アベンジャーズ
2位:「アルゴ」
3位:「隣る人」
4位:「この空の花」
5位:「ヱヴァンゲリヲン新劇場版:Q

この賞で一番大事なのは「お土産」感。一通り楽しんだ上で更にお土産を持たせてくれる心配り溢れる作品を選びました。1位はダントツで「アベンジャーズ」。観た人ならわかる。2位も良かったです。役者さんってホントそっくりな人を選んだのね。3位はオープニングとループになっているという仕掛けが良かったです。4位、あんまり監督が前に出過ぎた結果、最終的に監督本人がナレーションしちゃうという3D感が素晴らしい。5位は曲がスゴく良かったです。ヱヴァってオープニングとエンディングは好きなんですけどね...。次点は「サニー 永遠の仲間たち」。



【最優秀「悪役」賞】

1位:ハビエル・バルデムスカイフォール
2位:ヤヤン・ルヒアン「ザ・レイド
3位:山田孝之「その夜の侍」
4位:ジャン・クロード・ヴァンダム「エクスペンダブルズ2
5位:トム・ヒドルストンアベンジャーズ

とにかくこの人には敵わないんじゃないだろうか...って思わせてくれた最強の敵。それが1位から3位です。今年は本当に強い敵が多かった。4位、5位はオールスターキャストのヒーローと真っ向勝負していい勝負を見せてくれたキャラクターがランクイン。惜しくも次点は「悪の教典」の伊藤英明。上位5人が強過ぎたから漏れちゃった。



【最優秀「アクション」賞」

1位:「アベンジャーズアベンジャーズvsロキ軍団の対決1カット
2位:「SRサイタマノラッパー ロードサイドの逃亡者」審査員(ゴロツキ)vs征夷大将軍
3位:「ザ・レイド」主人公vsその他大勢の戦い
4位:「月光ノ仮面」最後の高座シーン
5位:「ももへの手紙」ケーブルカーでイノシシを追いかけるシーン

多数vs多数のバトルで良かったシーン。1位の1カットはもしあったら良いなあ...と思ってたらホントにやってたのでビックリしました。2位は「新たにチームが生まれる」という高揚感が曲とピッタリあっていて心地良かったです。3位はもう全シーンと言っても過言ではない感じ。4位は笑ってしまいました。5位は田舎の農家が使ってる個人用のケーブルカーでアクションをしてたので新鮮でした。次点は「のぼうの城」より、石田軍 長束正家隊vs成田軍 正木利英 騎馬鉄砲隊。手に汗握る合戦シーンだったと思います。



【最優秀「ファイト」賞】

1位:「アウトレイジビヨンド」西田敏行塩見三省vsビートたけし(with中野英雄
2位:「エクスペンダブルズ2」スタローンvsヴァンダム
3位:「エルサント(仮)」玉井英棋vs先輩レスラーのスパーリング
4位:「アベンジャーズ」各ヒーロー同士のタイマン
5位:「その夜の侍」堺雅人vs山田孝之

毎年「1vs1」の戦いを挙げてますが今年はちょっと変則的かもしれません。1位は、このシーンを観たいが為に2回観に行ってしまいました。2位はボクが子供の頃だったらひっくり返ってるであろう戦い。3位は純粋に胸が熱くなるような良いシーンでした。4位、ちゃんとヒーロー同士もまんべんなく戦わせてるってスゴいと思います。5位は今年観た中でも一番だらしない戦い。だからこそ良かった。次点は「The GREY 凍える太陽」よりリーアム・ニーソンvsでけえオオカミ。



【頑張れ!新垣結衣!!賞】
なにかの弾みで無惨な目に合っている女優さんに送っております。これまでの受賞者は

ですが、今年はこちらの方に。

加藤あい「アナザー」

いや、別に悪かないんだけどさ!なんか「加藤あい」の印象が「無」だったもんで...。頑張れ!超頑張れ!!



【目が死んでるぜ賞 a.k.a.バイトでやってます賞】
去年のハリソン・フォード(「カウボーイvsエイリアン」)を超える人なんて出るんですかねえ、と思ってたら。

1位:竹内力テルマエロマエ
2位:メル・ギブソン「それでも、愛してる」
3位:菅原文太おおかみこどもの雨と雪
4位:寺島しのぶヘルタースケルター

1位、「竹内力の無駄遣いだろ!」って思いました。2位はうつ病?だかの役作りの上で目が死んでた訳では無い気がする...。3位、4位は、まあ言わば「職人」なんでなんとも思ってない感じがビンビンと伝わってきました。



【個人的流行語賞】
今年から作りました。印象に残った台詞とかコピーとか。さっき思いついたばかりなのであまり覚えてないや。来年からちゃんとメモしておこう。

1位:この雨痛いな!「この空の花」
2位:おまた〜!「桐島、部活やめるってよ。」
3位:なめてねえよバカヤロウ!「アウトレイジビヨンド」
4位:日本よ、これが映画だ。アベンジャーズ」コピー
5位:見たいものを見せてあげる「ヘルタースケルター」コピー


画像が無いからこれで代用。よし。

長くなりました。次回は今年のベストテン。




参考までに去年の映画ランキング各賞【後編】はコチラ
2011個人的映画ランキング各賞【後編】

2012年 個人的映画ランキング各賞【前編】

随分とご無沙汰してしまいました。感想はすっかり書けなくなりましたが映画はそれなりに観ておりまして、年末のこの個人的イベントに関してはちゃんとやっておこうと。
という事で、例年通り「2012年に劇場で観た新作映画」を横並びで観直して、良かった人たちを個人的にランキング!



【新人賞】
1位:猪俣南 「この空の花」

2位:イコ・ウワイス 「ザ・レイド

3位:ベレニス・ベジョ 「アーティスト」

4位:野中はな 「聴こえてる、ふりをしただけ」

5位:武井咲 「今日、恋をはじめます


次点:柳 光石 「苦役列車


基準は今年スクリーンで初めて観た役者さんでキラリと光るモノがあった方々。
4位の武井咲さんなんか、下手したらワーストになる可能性もあったのにも関わらず素晴らしい演技(&声)だったと思います。
次点の柳 光石 a.k.a.花岡じったさんに関しては超ベテランで「新人賞」に入れるのもどうかと思いますが、スクリーンで観れたという感動からランクインさせて頂きました。


助演女優賞
1位:チョン・ウヒ 「サニー 永遠の仲間たち」

2位:護あさな 「ゾンビ・アス」

3位:桃井かおり 「ヘルター・スケルター

4位:松岡茉優 「桐島、部活やめるってよ

5位:優香 「ももへの手紙」


次点:ミス・ピギー 「ザ・マペッツ」

次点:安藤サクラ 「その夜の侍」

次点:宮村優子式波・アスカ・ラングレー) 「新劇場版ヱヴァンゲリヲンQ」


助演女優賞は作品に於いて最も重要、且つ印象に残る女性陣をランク付けしました。1位の彼女は、この子が素晴らし過ぎて「サニー」自体の全体ランキングを下げるという珍事が起きる始末。やっぱりこの子良いよ!で、可哀想だよ!2位は観ている人が少ないかもしれませんが、ものスゴい事してました。そのガッツに何か賞を挙げざるを得ない、という感じ。3位は、この人がいなかったら最後まで観るのがしんどかったかも...という点から。4位は「桐島〜」の中で、ある意味唯一の「悪役」を引き受けてる心意気から。5位は、あー優香ちゃんもついに「お母さん」役やるんだあ...っていう驚きと、それ以上にちゃんと「お母さん」してたという事でランクイン。



助演男優賞
1位:大滝秀治 「あなたへ」

2位:マキタスポーツ 「苦役列車

3位:新井浩文 「その夜の侍」

4位:マーク・ラファロ(ハルク) 「アベンジャーズ

5位:チャック・ノリス 「エクスペンダブルズ2


次点:前野朋哉 「桐島、部活やめるってよ

次点:上地雄輔 「のぼうの城

次点:駒木根隆介&水澤紳吾(IKKU&TOM) 「SRサイタマノラッパー ロードサイドの逃亡者」

次点:J.Y.Park 「BEYOND THE ONEDAY」

次点:アギー 「アーティスト」


2012年のベスト脇役としてはっきり「大滝秀治」と言える映画があって良かった。焼酎のワンカップを片手に高倉健を睨みつけるその演技に圧倒されました。2位は、まんまと泣かされてしまったので。3位は主役(堺雅人)と悪役(山田孝之)が自由に演技している中、話を展開させるという重要な役を丁寧に演じていたのが印象的でした。4位、5位はもう映ってるだけで素晴らしかった!その点のみ。次点もみんな素晴らしかったです。



【主演女優賞】
1位:前川麻子 「愛のゆくえ(仮)」

2位:シム・ウンギョン 「サニー 永遠の仲間たち」

3位:中村有沙 「ゾンビアス

4位:前田敦子 「苦役列車」「DOCUMENTARY OF AKB48 Show must go on少女たちは傷つきながら、夢を見る」

5位:ルーニー・マーラ 「ドラゴン・タトゥーの女


次点:松雪泰子 「この空の花」

次点:上戸彩 「テルマエロマエ


物語をグイグイと牽引するパワーを持った女性陣。1位は文句無し、つか男女2人しか出てない映画だったもんね。非常に哀しい映画でした。2位はキュートな顔立ちとそれを超える「岡田あーみん」的白目に。3位はねえ...とにかくスゴいもんを観た気がしましたよ。全くの予想外。「ゾンビアス」を未見の方は観た方が良いよ。たぶん腹立つ人の方が多いと思うけど。4位は2本の合わせ技でランクイン。ぼくがやっているランキングで、しょーもない作品の中で健気に頑張っているアイドルにあげる賞「頑張れ!新垣結衣!賞」ってのがあるんだけど、この賞を取った人は翌年必ず良い作品に恵まれるというジンクスが生まれてきたような気がします。あっちゃんて、去年「もしドラ」でこの賞をくれてやったもの。5位〜次点は「なんとなくエロい」という点からの評価です。いや、当然良かったんスよ!


【主演男優賞】
1位:加地等 「加地等がいた 僕の歌を聴いとくれ」

2位:森山未來 「苦役列車

3位:寺十吾 「愛のゆくえ(仮)」

4位:玉井英棋 「エルサント(パイロット版)」

5位:奥野瑛太(マイティ) 「SRサイタマノラッパー ロードサイドの逃亡者」


次点:伊藤英明 「悪の教典

次点:シン・ハギュン 「高地戦」

次点:高倉健 「あなたへ」

次点:ダニエル・クレイグ 「スカイフォール


今年の映画でカッコ良かった人たち。1位の加地等さんは、知った時にはもうこの世にいないっていう...。残念でなりません。森山未來さんはたぶん毎年ランクインしてしまうんじゃないだろうか...っていう上手さがありますね。3位はクライマックスの新宿駅のシーンが素晴らしかった。4位は小柄でありながら「プロレスラー」の体格を完璧に作り上げてきたという役者魂に感動。5位のマイティはワンカットの気迫が伝わってきました。



以上、長くなったので各賞はまた明日に。なんか今年は日本人は多いね。

ちなみに去年の各賞はコチラ↓
2011個人的映画ランキング各賞【前編】

「桐島、部活やめるってよ」

「ザ・マペッツ」を観たお台場でこの映画のチラシ見て知ったんですけど、公開されるや否や「映画好きの好事家」から「最近見た映画『BECK』以来」みたいな方まで幅広く好評なこの映画、とりあえず観て参りました。本来なら前売りを買ってる「おおかみこども〜」から観ないといけないんだろうけど、その前売券がどっかいっちゃってる以上しょうがない。

【あらすじ】※シネマトゥデイより引用

とある田舎町の県立高校映画部に所属する前田涼也(神木隆之介)は、クラスの中では地味で目立たないものの、映画に対する情熱が人一倍強い人物だった。そんな彼の学校の生徒たちは、金曜日の放課後、いつもと変わらず部活に励み、一方暇を持て余す帰宅部がバスケに興じるなど、それぞれの日常を過ごしていた。ある日、学校で一番人気があるバレー部のキャプテン桐島が退部。それをきっかけに、各部やクラスの人間関係に動揺が広がり始めていく。

【予告編】


以下、壮絶にネタバレしながら感想。原作は未読です。






あー、マジで学校ってめんどくさいトコだな!!
率直な感想を言えばこんな感じです。この辺りは後述しますが、面白かったと思いますよ。何度と無く繰り返される「金曜日」には、ボクが苦手な「テクニックだけを見せる映画」かと思い、しゃらくせえなあ...とも感じながら観てました。しかし、物語の空気を問答無用で変え、観客を一気に味方に付けるキャラクター「映画部のあいつ(リッキー・ホイ似)」の登場にまんまと乗ってしまいました。神木君の同級生、「映画部のあいつ」の台詞一つ一つには一切の間違いが無いので一気に惹き込まれます。こうやって映画部の面々がチャーミングに見えてくると、不思議なものでクラスメートや他の部活の人間もキャラクターの分別がはっきりと出てくるんですよね。あの辺りものスゴく丁寧に作られていて素晴らしいです。


同じ出来事を違う視点で描くという手法のストーリーは、ボクがわかる限りで安野モヨコ作「ラブ・マスターX」くらいしか知らないですけど、そんなテクニックはともかく非常に丁寧な映画だったと思います。おちゃらけていないからかもしれません。例えば天才的なデザインセンスを持っている高校生とか、喧嘩最強の高校生が出てくるような、高校の設定に誇張が過ぎる映画ばっかりの中、久々にリアリティ溢れる高校生活を描いている作品なんじゃないでしょうか。童夢」以前の、初期の大友克洋作品にありそうなお話でした。何も無い。あるのは関係性のみ、みたいな。恐らくボクの人生で観た映画の中でもトップクラスに「何も起こらない映画」です。それでいて一瞬も飽きる事無く観れたと言う事は、それだけ高校生活の「あの空気」を再現できていたからだと思います。


この映画の最大のキモは「視線」だと思うんですよ。
それは「見る」でも「観る」でも「覗く」でも当てはまるんですが、とにかく主役から脇役まで、登場人物たちの「他者に対する視線」がこの物語の全てです。映画部の先生の言葉をちょっとお借りするのであれば「自分の半径1メートルの世界」と「その外の世界」の話。「青春」なんてものは「自分とその他の世界とのズレに気付く季節」で、仲間と始終つるんでいたって常に「ここではないどこか」の安住の地を探している。
「誰かを覗いてしまう」という事は、自分が「その外の世界」から閉め出されているという事であり、決してその世界に参加できないという事。
この映画の素晴らしい点は、誰もが感じたであろう高校生活の「あの空気(映画でも個人の体験でも良いんですが、)」は、全て「視線」が生み出している。と指し示している点にあると思います。彼らの視線がそのまま映画の強度として現れているこの作品は、紛う事無き青春映画の決定版です。
あー、マジで学校めんどくさいわ。
学校なんていう特に狭い世界では、目は口ほどにモノを言いますね。「空気読め!」なんて風潮も、まず他者の視線があってからこそでしょうし。この映画の登場人物達は皆さん演技力が素晴らしくて、あらゆる視線をグサグサと観客に突き刺してくるので観了後ぐったりしますよ。「おまたー!」なんてなんの考えもなしに軽く言った言葉があらぬ方向に届いちゃうシーンとかね。即死レベルの有毒性ですよ!目だけで素晴らしいんですから「台詞っていったいなんなんだろうね...」とも思っちゃいました。


惜しむらくはテンションがガン上がりするシーン以降にもうちょい話が進んじゃうとこで、割とグッときた後で極々当たり前の説教みたいな内容のシーンを見せられてしまうので、こっちも「お、おう...!」となってしまいます。それまで丁寧に面白く見せてきたのにラスト、急にモタモタしてしまったのは原作との兼ね合いがあるかどうかちょっとワカリマセンが、とにかく冷水はぶっかけられましたよ。あと、全編に渡ってただの学生生活「あるあるネタでしか無く、自分が学生生活のどのポジションに所属していても共感できる内容となっているのでそういう意味では卑怯な話でもあると思います。


しかしながら、これがみんな大嫌いでお馴染みの「テレビ局映画」で、シネコンをメインに展開されているというのが痛快じゃないですか。有名俳優(子役除く)無し、音楽無し、大規模ロケ無しのアイデア一発勝負。そんな無謀な企画にメジャー会社とテレビ局がお金出して作り、面白い映画を作ったって事に快哉を叫ばざるを得ません。極めて地味ですがオススメ。こういう映画はすぐ終わっちゃいますからね。なるべく早めに観に行った方が良いですよ!






【おまけ】
高校生活と言えば「日常」

中学の時の合唱部の「時にはっ!なぜかっ!」って歌い方、マジで苦手だったー!キラキラしちゃってさあ!







※本文から漏れた感想

  • この映画スゲえ!って聴いちゃってたから「マグノリア」くらいすんのかと思ったけど、その辺りは肩すかし感あった。
  • 実在の名称を使うのは映画として「誠実」だと思う。映画内で「映画秘宝」が出たのは初めて観た。
  • 野球部辞めた彼は昭和のスターみたいな顔だったね。
  • 屋上のクライマックスよりも、野球部のキャプテンのラストの下りの方が実はグッときて泣いてた。
  • 大後さんは最高だ。
  • 悪い奴すら出てこないってのは高校生活の描き方を徹底してると思う。ヒロキの彼女は悪い子っていうよりもああいう子、という感じ。
  • 感想書きながら、自分の高校生活の話でも出てくるかなあと思ってたんだけど最後まで出なかった。つまりはそれくらい何も無い高校生活を送っていたのだろう。

「ダークナイト ライジング」

日々twitterなぞやっていると、映画のネタバレとなるようなツイートを散見しますなあ。ボクはあまりネタバレを気にしないのですが(とは言え「アーティスト」の「あるギミック」を普通に呟いてる人を見かけてギョッとしたことありますが)、これは公開前から異様な熱気をTL上から感じていたのでなるべく早い段階で観といた方が良いだろうと思い、初日に観てまいりました。今回はこの「ダークナイト ライジング」の感想です。

【あらすじ】※シネマトゥデイより引用

ジョーカーがゴッサム・シティーを襲撃するものの、ダークナイトが死闘を繰り広げ彼を撃破してから8年後。再びゴッサム・シティの破壊をもくろむベイン(トム・ハーディ)が現われ……。

あらすじも普段と比べて明らかに短いのう...。

【予告編】


以下、壮絶にネタバレしながら感想です。





IMAX最高!
まあ、とりあえずコレに尽きますよ。この映画自体がそもそもIMAXで上映されるのを考慮して作られているからでしょうか、冒頭のド迫力シーンはケレン味たっぷりで素晴らしいです。いきなり登場するベインの「声」に惚れ惚れしつつ怒濤の如く展開されるアクションは、いよいよ「映画」が始まる...!という興奮をかき立ててくれます。
なにより全編に渡ってみんなカッコ良いですなあ!バットマンが登場した時、心の中で「待ってました!」と快哉を叫んでしまいましたし、彼が扱うマシンはどれも観客の脳みそを直撃するような機能美に溢れていました。ベインもキャットウーマンも素晴らしかったですよ。カッコ良さに関しては観客の誰にも有無を言わせない!くらいの気概を感じました。自分が子供の時これ観たら、この夏休みの間はずっとバットマンごっこしてるだろうなあ、と思ったり。
俳優陣も気合いが入っていたようで、クリスチャン・ベイルの演技はやっぱり良いんですよねえ。去年の「ファイター」で観て以来の作品だったもんで、あのクズお兄ちゃんもこんなに変わるんだなあ...と感慨深い気持ちで観てました。バットマン関係ないけど。たまにTumblrでこの画像が流れてきますけど、これ観る度ビックリしますよ。

バットマンを挟んで毎回変わり過ぎ!
中でも一番良かったのは、アルフレッドを演じるマイケル・ケインの好々爺っぷりですよ。アルフレッドが出る度泣けますよ。後半はもうアルフレッド目線で観ちゃいましたし。ぶっちゃけ、この映画の30%くらいはアルフレッドで持っていると思います。


IMAXでドカンと格別のカッコ良さ(&アルフレッド)を味わえたので、観終わって劇場出るともう満足感しか残らないんですよね。「やっぱり映画ってのは、これくらいやってくれないと!」なんつってね。「この夏観るならコレしか無いよ!」ってなくらい。しかしながらホントこの映画って不思議なもんで、このライジング最高!」っていう気持ちって12時間くらいしか持たないんですよ。色々と反芻しちゃいますから。映画の粗が段々とわかってきちゃう。というか、振り返ってみれば「粗」しか無いんじゃないか!?とも思えてきちゃうのです。


この感想は既に多くの方々の「ダークナイト ライジング」評や感想の後塵を拝していますし、何より「粗」を挙げ始めたら下手すりゃ「ヘルタースケルター」と同じくらい出てくる恐れもあるので、特に酷いと思った部分を2点だけ。


ベイン率いる「悪いやつら」が徒党を組んでゴッサムシティを孤島化するんですけど、孤島化すると必然的にゴッサムシティの「外」の世界(=アメリカ合衆国)が出てくるじゃないですか。バットマンの話で「外」の世界を描いて良かったんですかねえ...。ゴッサムシティの中だけで物語が展開されるからこそ「バットマン」て成立してたと思うんですよ。アメリカ軍が普通に出てきたら流石にアメリカ軍の方が強いでしょう。つか、こんなのどう考えたってアメリカ軍が楽に鎮圧できるレベルの小さい話ですよ。ただのチンピラの暴動じゃないですか。アメリカ軍なんて宇宙人と戦ったって勝ちますよ(映画の話です)。いくらなんでもバットマンの持ってるマシンくらいの兵器はアメリカ軍だって流石に持ってるでしょう!この辺りがどうしても頭の中で都合良く変換されなかった部分なんですよ。
話変わりますけど、映画の「ドラえもん」って宇宙から「鉄人兵団」が攻めてこようがアフリカに「犬の国」が発見されようが、絶対に「一般社会」が介入しないようプロットに工夫がされてるんですよね。箱庭の中の日常に非日常(ドラえもんひみつ道具)が乱入するから面白い。どんなにスゴい事が起こっても「一般社会」に一切影響を及ぼさない。バットマンゴッサムシティという「街」を守るヒーローだから光る。箱庭の中だからこそバットマンみたいな非日常な存在が活躍できる。でもその箱庭を出て「一般社会」を介入させると、じゃあそのバットマンの守りたかった「街」ってなんなのよ?つかバットマンってなんなんだよ?ってなると思うんですが...。


もう一点。やっぱりどうしても「核」の取り扱いの粗さは酷過ると言わざるを得ません。既に21世紀に入って10年以上も経っているというのに「核」に対して「でかい爆弾」以上の表現が出来ない監督なんてタダのバカだと思います。海の彼方に核爆弾ボカンと爆発させて終わりってねえ......そこから物語が始まるんだよバカヤロウ!!ゴッサムシティが無事なら他は良いのかい!なまじ前述の「外の世界」を描いちゃってるから余計に気になる。キノコ雲を「全てが無事片付いた象徴」として描けちゃう能天気っぷりを見せつけながら、片方で「正義とは?悪とは?」とか、悪い冗談にしか聴こえません。うすうす気付いてはいたけどノーラン、おまえもか!!!
クリストファー・ノーラン監督って「奇才」なんて言われてたりしますけど、ボクの中では普通の監督でして。広げる風呂敷はいつもデカいけど畳み方を知らない、みたいな。そこが魅力だと思ってますけどね。彼の作品ってケレン味だけがいつも素晴らしくて、ホントは哲学的な部分なんて突っつきゃボロがすぐ出るほど脆いのに、この脆さを一切認めない雰囲気がありますよね。なんかソコは絶対いじっちゃいけない雰囲気と言うか。この「拙さ」が「可愛げ」に変えられないのがいつも残念に思うところ。どうやら「マイケル・ベイ」とか「ポール・バーホーべン」みたいになれるような性格じゃなさそうなのは確かで、彼がこの先「スピルバーグ」になるか、「リュック・ベッソン」とか「M・ナイト・シャマラン」とか「ウォシャウスキー兄弟」とかになるか、は次回作にかかってそうな雰囲気だと感じましたよ。


バットマンの再実写化」という企画は、ノーラン監督を常に逆境に立たせていたと思います。ティム・バートンなんていうキチガイ天才が生み出したあの世界観を再構築しなければならない。前作「ダークナイト」は、逆境にたった監督の熱意を全て詰めた結果、世界中のバットマニアたちに快哉を叫ばせる名シーンを生みました。
「ジョーカーが全ての計画を成功させ、パトカーで脱出し、窓から犬のように首を出して風を楽しんでいる」という「勝利」のシーン。
果たして「ダークナイト」は映画史に残る傑作となりました。そして常に巨大な幻影と戦い続けなければならないノーラン監督が、最後に戦わざるを得なくなってしまったのが、皮肉な事に前作のあの名シーンだったと思うんですよ。前作が「正義と悪の二面性」という哲学的なテーマを中心に扱ったのに対し、今回は「ノーラン版バットマンサーガを終結させる」という事に終始してしまった結果、風呂敷の畳み方がヘタクソなノーラン故にハッキリとスケールダウンしたと思います。
しかしながら今作は「なんとかしてあのシーンを超えるような部分を一つでも残したい!」というノーラン監督の気迫を感じました。その気迫が映画全体の勢いとして昇華されていたからこそ、話の辻褄が合わなくても少しも飽きずに観る事が出来たんだと思います。


観賞後、12時間も超えてくるとだいたい悪口しか浮かびませんが、たぶん観直したらまた12時間くらいは「最高!」っていう映画だと思います。それはまるで12時間ごとにマスクから薬を投与しないと死んじゃうベインみたいなもんで。間違いなく観た方が良いのは確か!観ている時間はとにかく楽しいんですから!





【おまけ】
ここまで書いといてなんですが、ボクが好きなのはもっとバカバカしいバットマンなんですよ。パンチしたら「POW!!」とか字幕で出ちゃうやつ。ボクが「バットマン」を一番最初に観たのは小6の時。冬休みにティム・バートン監督が撮った「バットマン」なる映画が公開されるってんで、レンタルビデオで借りた「バットマンのすべて」っていう作品から。竹中直人がナレーションやってて、言ってる事がほぼ全部デタラメっていう。バットマンってこういう「コント」みたいなヒーローだと思ったのが一番最初です。ニコニコ動画に当時のビデオがあったよ。ノーラン版しか知らない人はビックリするでしょう。
D
これ観てから、バートン版の「バットマン」観たのだ。あまりのカッコ良さにひっくり返ったよ。当時はとんねるずのみなさんのおかげですバットマンの1シーンとプリンスのバットダンス(下の動画参照)を完コピしたコントも放送されたりで恵まれてました。

これを完コピしてたんだから当時はやっぱり金があった&とんねるずも若かったんだなあ。


【おまけ その2】
レゴでタンブラー作ってみた。


これを実際に作った人はレゴで本当に商品化してもらいたいらしいです。
web上で公開していて、一万人の署名が集まればレゴの商品化の会議に上がるそうな。
あの「はやぶさ」もこれで商品になった事だし、欲しい方は投票してみると良いかも!
【LEGO CUUSOO - Motorized Tumbler 】  


【おまけ その3】
トム・ハーディがチンコ出してるTVドラマも貼ろうかと思いましたが自粛します。




※本文から漏れた感想

  • ノーラン監督が原作を大事にしているという事はよくわかりました。
  • 真面目なんだかふざけてんのかよくわからんのですよ。ウェインの背骨の治し方とか。
  • あんなに物語を引っ張ってきたベインもアレで終わり?っていう。
  • アン・ハサウェイのケツが良いよ!って事だったけど、ボク自身この映画の前に「クレイジーホース・パリ」でケツばっかり観ちゃってたのでなんとも。
  • 警官と暴徒が対峙するシーン。ガン上がりしたんだけど直後の乱闘シーンでずっこけてしもうた。なんなんですかあのわちゃわちゃしたモブシーンの撮り方は!30年以上前に戻ったような感じですよ。こんなじゃん!















以上、「ダークナイト ライジング」の感想でした。